第十一話.王の意見
第十一話.王の意見
せっかく神様になったのだから、覇権を取りたい。神様としての格を上げるには、信者を増やす必要がある。信者を増やすには土地と人間、そしてそれを維持するだけの食べ物が必要である。
欲しいものがあれば、あるところから奪うか自力で作り出すかだ。
「あんまり手荒なことはしたくないなぁ」
ぼそりとつぶやいた。
神様パワーで食べ物が手のひらから溢れてきたりしないかやってみたが、さすがにそれは無理だった。信仰心ポイントが高くなると、できることが増えるらしいからひょっとしたら格が上がれば手のひらからパンが生み出せるのかもしれない。
とりあえず現状では国の発展のためにヘテプフェルでは何をしているのか、その方向性が知りたい。王を呼びつけてみた。
「お呼びでしょうか、レイ様」
「おう、王よ」
「はい」
王が、玉座の下でかしこまってひざまづいている。いつみても王様がこの状況になるのは珍しいと思う。さすが神様。
「お前らはヘテプフェルの発展のために、何をしているんだ」
「……はっはい」
王は下を向いたまま、だらだらと汗をかきはじめた。なにか怒ってるみたいにとられたのかもしれない。
「いや。詰問してるんじゃあなくて、信者を増やすのに国の人口を増やしたいわけよ。この国では、なんか侵略戦争とかやってるわけ?」
「はっ!それは、ヘテプフェルはごらんの通り荒野の真ん中に位置しております。広大な乾燥地帯がそのまま天然の城壁となって国を守るには鉄壁でありますが……」
まぁ豊かなのはオアシスの周りだけで、あとは砂漠というか地獄のような環境だからな。
「逆もしかり。国を出て他の地を占拠するために遠征をするには、不利な地形でありますので、外部の地を侵略するのは滅多な事では行いませぬ」
「へぇ。でもこの間、豚頭族が侵略に来たみたいだけど?」
「それは、彼奴等にとってもこの地は聖地だからです」
「聖地とはなんだ?」
謎の単語が出てきたので、とりあえず聞いてみる。
「はい。あの魔物らの信仰する悪魔(豊穣の神)の生まれの地ともされているのが、このヘテプフェルなのです」
「へぇー」
「なので、信仰上の問題であり、どちらかが地上から消えるまで彼奴等と我々の戦いが終わることはないのです。もちろん消えるのは魔物の方ですが」
「ふん」
座ったまま足を組み直す。豊穣の神とやらに交渉してなんとか力を貸して貰おうと思ったが、神レベルでも民レベルでも先方とは仲が悪いらしい。
「なぁ王よ。俺は作物の実りを良くして民を増やしたいわけだ」
「はい、我が望みでもあります」
「お前はどうすれば良いと思う?」
「はっ……それは」
王は乾いた唇を濡らしてから口を開いた。
「豚人族の国を滅ぼし、肥沃な土地を我らのものとするのが良かろうかと」
「ふぅーむ」
腕を組んで目を閉じる。やっぱり力で奪うという方向性になるのか。なんだかそれはしたくないんだよな。脳筋っぽくて。
「そうか、わかった。もう下がっていいぞ」
「ハイ」
緊張したおももちのまま、王はどこかに消えていった。やけに表情が怖かった。
ん?まさか俺が侵略を望んでいると曲解していないだろうな。