どうしても叶えられないこと
男「こんばんは〜」
青年「なんの用だよっ…」
男「妹様のこと…ご愁傷様でした…」
青年「っ…」
男「今晩お邪魔させていただいたのは妹様の遺言を預かっているからです」
青年「は…?」
男「これを…それでは、わたしはそろそろ失礼させていただきますね?」
カサ
お兄ちゃんへ
手紙を書くなんて何だか気恥ずかしいような気がするなぁ…
あんまりなかったよね、こんなこと…
でも、そろそろ私も限界みたい…
病気が体の奥にまであるんだって…
治療には膨大な資金がかかるし…
だから手紙を残します。
ねぇ、お兄ちゃん、お兄ちゃんはあの昔ばなしのこと、覚えてるかな…?
◇◇◇
彼らはレルナーンを善の組織へと変えることに成功した…
けれど彼らには死が迫っていた…
レルナーンの改変の時に借りた神の力に肉体が耐えられなかったのだ…
ゼナ「…ねぇ、ルーン…これでもう、終わりみたいだね…」
ルーン「ええ、そうみたいね…」
ゼナ「さようなら…だね」
ルーン「さようなら…になるわね…」
彼らは滅びゆく肉体を見つめつつも笑い合い、その運命を受け入れた…
はずだった…
どんな因果なのか、これが神の力だとでも言うのだろうか…
彼らは転生し、別の世界で今も生きている。
それは優しい家族に囲まれて…
事情を知る者たちは、彼らの両親となり、祖父母となり、兄妹となっていた…
けれど彼らはいつ思い出すのだろうか…
◇◇◇
…私達はいつも待っていたんだよ…
君たちが思い出してくれるのを…
でも、もう待てないや…
それじゃあまたね、ゼナくん…
ゼナ?「…え?」
そうか…このどこかで聞いたことがあるような既視感は…俺が…僕が…ゼナだったから…?
それじゃあ…ルーンは…?
どこだ…?どこに…ぁ…そういえば一度だけ…
花の匂いとともに覚えている…幼い頃、一度だけあったことがあった…
ルーンは覚えているのだろうか…?
覚えていなくても構わない…少しでも、そばにいることができるなら…
でも、妹も、救えることなら救いたかった…
ずっとそばにいて、励ましていてくれた妹…
妹を…助けたかった…
◇◇☆
妹は救えないんだ…そういう運命だからね…




