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4話 一週間のタイムリミット 中編


一週間なんて直ぐ過ぎていく。だから辛い思いなんてしない。



私はそう思っていた。


でも実際はそんな事は無かった。


アレックスといるととても楽しい。話せば話すほど地球で一緒にいた頃の幸せな記憶が蘇ってくる。


私が死んだ後のアレックス達の話を聞いたり、私のこの世界での出来事を話していると時間を忘れてしまう。


気づいた時には一日が経っている。


かつて愛した人との再会は私の気持ちを大きく変えてしまった。


愛する人と別れたのは六年も昔の事。当時の気持ちなんてもう残っていないと思っていた。


いや、召喚の儀式で彼を呼ぼうとした時点で私はまだ彼への気持ちが残っていたのかもしれない。


そんなの今の私にはもう分からない。だって今の私はまた彼の事を愛してしまったのだから。


もっと彼と一緒にいたい。もっと時間があればいいのに。




せめてアレックスにもう一度愛してると言いたい。それさえ言えればもう死んでもいいと思えるのに。



ーーーーーーーーー



俺が学校に通っていた頃一週間なんて時間が経つのが遅くてめっちゃダルかった。


だから一週間なんてタイムリミットは長くて直ぐには来ないと思っていた。


でも楽しい事の時間の経過は速いらしい。


もう四日も経ってしまった。毎日ミカエラと朝から晩まで一緒にいる。


お互い会えなかった時間が長いから話したい事が沢山あって会話が途切れる事は一回もなかった。


そういえば一回だけお城の廊下でケインに会った。


他のみんなは毎日夜遅くまで訓練場で訓練をしているらしい。勇者の五人は他のみんなと比べて成長速度が早く、もうかなり強くなっているらしい。


ずるいなぁ俺も強くなりたい。


でも基本的な戦闘スキルも無いし訓練したところで強くなれるのか? よく分からないな。


まあ後でミカエラに教えてもらおう。


時間は今日を入れてもう三日しかない。


今日はこの世界についてのいろいろな情報をミカエラから教えてもらう予定だ。


よし準備もできたしミカエラの部屋に行くとするか。




コン、コン、コン。


「ミカエラ? 入ってもいい?」


「いいよー入って」


「おはよう。今日も元気そうだね。本当にあと三日しか生きられないの?」


と純粋な疑問をぶつけてみる。


「死にそうには見えないかもね。でもあと三日しか生きられないのは事実だよ。私の体調は私が一番わかってるから」


「そっか…………」


それを聞いて俺は気分が暗くなる。


「うん……あっそうだ! この前言ってた魔法使いの服用意したからあげるよ!」


「おーそうなんだ。どんなのか見せてよ」


「ちょっと待っててね」


そう言ってミカエラは何も無い空間から服を引っ張り出した。


え? 凄いなあのスキル。


「あっこのスキル空間収納ってやつだよ〜良いでしょ〜」


「はいはい。流石勇者様ですね〜で、服見せてよ」


どうせそんなに期待してないけど


「あっそうだったね。これだよこれ」


そう言って見せてきたミカエラの服を見て俺は絶句するのだった。


うわー! 違う意味で嫌な予感が当たっちゃったよ! この服は絶対ダメだろう。そもそもなんでこんなのがダンジョンの最下層にあるんだよ! しっかりマントもあるし。


俺の目の前にある服は某人気アメコミヒーローのド○ター・ス○レ○ジが着ていた衣装と全く同じデザインだった。


そういえば、俺今年のハロウィンのコスプレの衣装これにしようとしてたんだったな。


でも流石にこれはダメな気がする。


俺は彼みたいに強く無いし魔術も使えない。彼の大ファンだった俺からすると戦えもしないのにこれを着ることはできない。


あと多分権利関係的にも。


ん? なんで異世界きて権利関係? そんなの無い気がするけどこれを常時着るのはとにかくアウトな気がする。


「あ、ありがとう。でも当分の間はこのスーツで良いかな」


「そうなの? なら気が向いた時に着て」


そう言って某ヒーローの衣装を渡してくる。


「あっあと着る時気をつけてね。そのマント自我持ってるから」


いやいやそこも本家と同じ設定かい。それなら尚更着れなくなったな。


「ところで、アレックス今日も散歩する?」


「そうだね。行こっか」


そう言って彼女をエスコートしながら部屋を出て一緒に歩く。


これくらいは紳士スキルなんて使わなくてもできるからな。


「そういえば午後はどうするの?」


「あっそうだ午後はエリザと一緒に私のスキルの話をする」


「おーそうなんだそれって俺も出席?」


「もちろん!」



ーーーーその日の午後ーーーー



「エリザさん遅いよ〜」


「アレックス、あなたには言われたくありません。いつもご飯の時間に遅れて来るのは誰ですか?」


エリザさんは少し笑いながらこっちを見て来る。


「あっすいません。調子に乗りました」


ヤバイ、あの笑顔やっぱり怖い。てかこの人やっぱりご飯大好きだよな。


「二人ともそろそろ良いかな?」


「「あっごめん(すいません)」」


「まあ良いけど。じゃあ早速私のスキルの話をするね。エリザは覚えてるよね?」


「はい」


「じゃあアレックス聞いてね。私はこの世界に召喚される前に地球で死んだでしょ? だから私は召喚されたとき最初はこの世界の女神様に会ったの。その時に三年戻りっていう一回しか使えない特殊なスキルを貰ったんだけど結局今まで使わなくてさ」


「えっ何その反則スキル」


「でしょ。私も最初はそう思ったんだ。でも使うタイミングが見つからなくて結局使わないままになっちゃったの。だからこのスキルをアレックスに譲渡したいの。それに今更私が使ったところで過去でできる事は限られてる。当時はずっと前線で戦ってたから」


「そっか。譲渡なんて事もできるんだ。良いよ、ミカエラの頼み事なら喜んで聞くよ」


「そう! そう言ってくれて嬉しい。じゃあ明日一緒にデートしよ! その時に譲渡もするからさ」


「オッケー了解。デート楽しみしとくよ。ところでなんでエリザさんも呼んだの?」


「それは私が死んだあとエリザにあなたの教育係を頼みたいからよ。エリザはどう思う?」


「えっアレックスの教育係を私が? 勘弁してください」


えっそんな事言わないで? 俺泣くよ? またぼっちなの?


「そんなこと言わないでお願いよエリザ」


ミカエラが泣きそうになりながら再度頼み込む。


「はあ、分かりましたから。そんな顔しないでください。なんか凄い罪悪感が湧いてきます」


「やった!」


いやミカエラよ。その立ち直りの速さだとさっきのが演技だってエリザさんにバレるぞ。


「じゃあ時間も良いしお茶でもしましょうか?」


そのミカエラの言葉を聞いてエリザさんは直ぐ反応した。


はあこの人が俺の教育係になるのか。先が思いやられるな。


そんな事をのんびりと考える俺はタイムリミットが近づいている事を思い出し、心に締め付けられる様な痛みに襲われるのであった。




タイムリミットまで残り三日



今回も読んでいただきありがとうございます!次回の投稿は明日の18時を予定しています〜

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