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1話 大切な人



はぁ、みんな準備があるとか言ってどっか連れてかれちゃったし、こんなデカい部屋に高校生一人の俺可哀想すぎる!


そう、俺はみんなに置いていかれたのである。


そんな俺を見ながらファーレン王は普通に話しかけてきた。


「さて、皆もいなくなったので話を始めるとするか。はじめに聞くがそなたはミカエラと言う名の女性を知っているかな?」


え? なんでその名前知ってんの? これヤバイな、一歩間違えるとタメ口で聞いちゃいそうだ。


あっ紳士スキル使おーっと。


紳士スキル発動!


「知っていますがなぜファーレン王はその名前をご存知で?」


「アレックスよ、これは公式の場ではないからそう堅くならんでもよい。私の事はイルジートさんと呼んでくれ」


「本当によろしいのですか? イルジート様」


「様はいらないがまあ今はよしとしよう。それより大事な話があるのだ」


「はい、分かりました」


「単刀直入に言うとミカエラが今回の召喚の儀式を行なったのだ」


「んっっっっっ?」


えっ? 今なんて言ったこの人。ミカエラが俺達を召喚した? どうやって? だってミカエラは三年前に事故で死んだはず、、、、、、


俺はあまりの衝撃に言葉が出なくなる。


「驚いてるようだな。この世界でミカエラは生きている。だがあまり良い話でも無い。ミカエラは今回の勇者召喚の儀式で使った魔道具の反動で現在は治療を受けている。今は意識も無い状態だ」


どういう事かまったく理解できない。この王様は何を言ってるんだ? ミカエラが生きてる? それにミカエラは俺が召喚されるのを知ってた? それとも狙ったのか?


彼女を失った当時の感情がまた戻ってくる…………


俺の心は何者かに強く握りつぶされたかのような感覚に襲われる。


あまりの衝撃な情報の数々に頭が痛くなる。どうにかして平静を保たなければ。


『紳士スキルがLevel 2になりました』


その声が聞こえた後、なんとか取り乱さずに平静を保つことができた。

よし、しっかり王様の話、いや、イルジートさんの話を聞こう。


「イルジートさん、どういう事か詳しく説明していただけないでしょうか?」


様からさんに変えた事に少し嬉しそうな表情をするイルジートさん。


しかしイルジートさんは色々な感情で苦しそうな顔をしてた俺を心配そうに覗き込みながら、


「うん、そうしよう。だがその前に部屋を変えて、飲み物でも飲みながらゆっくりと話さないか?まだミカエラの意識が戻るまで時間がかかるだろうから」


「そ、そうですね。気遣いありがとうございます」


俺は立ち上がってイルジートさんのあとをついて行こうとしたが、自分の体は想像以上に衝撃の事実に耐えられていないようだった。


フラフラと倒れそうになりながら情けなく歩く俺に対して鎧を付けた女の人が


「アレックスさん、大丈夫ですか?」


と言いながら肩を貸してくれた。


ああ、今の俺って最高に情けない気がする。


なんで異世界でもこんな思いしなきゃいけないんだ。



〜〜〜〜〜



あーなんか豪華な部屋にきた。これが今の俺にできる最大のリアクションだ。


あっこのお菓子美味しい。チョコレートだ。この世界にもあるんだ。


自分でも無理して平常心を装っているのが分かる。


それに気づいたのかイルジートさんが優しく話してくる。


「そうだ、紹介し忘れていたが今君の後ろに立っている美人な騎士はミカエラの仲間のヴァルキリー隊の隊長エリザイラだ」


「ヴァルキリー隊、隊長エリザイラです。エリザと呼んでください」


「へーヴァルキリー隊ってなんかペガサスに乗ってるイメージだよね」


頭がミカエラの事でいっぱいになっている俺はそんなアホなリアクションをした。


「残念ながらそれは神話の中でだけです」


「あっそうなんですね〜」


なんか残念だな。ペガサスいないのか。


そんな俺の意味のない会話を聞いていたイルジートさんが咳払いをして話題を戻した。


「さてと、ではミカエラの事を話そうか。ミカエラは今から六年前にこのファーレン王国に勇者として召喚された。その時は彼女だけの召喚だった。当時彼女は魔王軍相手ではなくウェスター王国との戦争で我がファーレン王国を勝利に導くために召喚された」


え? 六年前? と俺は疑問に思ったが後で聞こうと思った。


イルジートさんの話は続く。


「彼女のおかげでウェスター王国との戦争には勝利することができた。その後ウェスター王国とは条約を結び仲良くやっていた。しかし二年前ある事件が起こった。その後、ウェスター王国は魔王軍に占領された。彼女はいつも第一線で活躍していた。でも最近になって彼女一人だと敵わない魔物が増えてきた」


「だから俺達が召喚されたって事ですか」


「そうだ。理解が早くて助かる」


「じゃあ俺達はミカエラと一緒に魔王軍と戦うんですね?」


思わず希望に満ちた目で質問してしまった。


「う、まあ、その、、」


ん?イルジートさんとエリザさんの反応が変な気がする。二人とも俺から少し目を逸らしてるのはなんでだろう。


「ところで、君とミカエラの関係を教えてはくれないだろうか?」


そんな事をイルジートさんが聞いてくる。


「えっと、僕とミカエラは小さい時からずっと一緒にいる幼馴染で大好きでした。それに三年前までは元の世界で付き合っていました。でも彼女は三年前に事故に遭い、死にました」


「そうだったのか…………」


悲しそうな顔をするイルジートさん。


「それは辛かったな」


優しく話しかけてくるエリザさん。


俺は何かに違和感を覚えながらミカエラについての話とこの六年間の出来事をイルジートさんから細かく説明を受けた。


〜〜〜〜〜


何時間たっただろうか。


窓の外は既に暗くなっている。


『紳士スキルがLevel 3になりました』


とどこからともなく声が聞こえた。


あれ? 長い時間正しい言葉遣いをしただけでレベル上がるのか。


イルジートさんの六年分の話が終わり、大体この六年間に何があったか理解することができた。また、この世界と地球での時間の進み方に差があるのも分かった。


こっちの世界で一年間過ごしたとしても地球では半年しか経っていないらしい。


それに自分の中でのミカエラに関する感情も整理することができた。


今回俺達を召喚できたのはミカエラの力と魔道具の力があったからだそうだ。


しかもミカエラは俺がいる場所を狙って召喚したらしい。そんなことどうやったらできるんだと思ったが、まあ勇者なんだしできるだろうと俺は勝手に解釈した。


次に魔物関係で大きな変化があったのは大体三年前の事のようだ。


どうも魔王よりも強力な存在が力を貸しているのではないかとの見方が強いとも言われた。


でも魔王より強い存在って何?大魔王?魔神?まあ正直俺は戦えるスキル自爆しかないから関係ないんだけどね。


そんな考え事をしていると勢い良く部屋の扉がノックされた。


「何事だ?」


今までのラフな感じと打って変わってイルジートさんが王の威厳を出しつつ扉の向こうの人物に向かって聞く。


「ミカエラ様の意識が戻られました!」


と扉の向こうから声が聞こえ、俺はありえない速度で反応して席をたった。


流石にこの行動にはヴァルキリー隊の隊長エリザさんもビックリしたようだった。


少し沈黙が流れた後に


「さあ、アレックスさんミカエラに会いに行きましょうか!」


と元気な声でエリザさんが言うので俺も


「はい!」


と元気な声で答えてみた。ん?俺どうしたんだろう。なんかこれ深夜テンションな気がするな、、、、


ミカエラのいる部屋にエリザさんと一緒に向かいながら、外の景色を見てふと今何時なんだろう?と俺は冷静になって考えるのであった。



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