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……はっ!? え……? 正気に戻った。

 王城奪還作戦は、王城の正面から開始する事になった。

 すでに城内は魔物だらけ。奪還するには、魔物になった者を人間に戻す作業が必要だ。それには人海戦術が必要になり、人員確保が必要である。そのために正面から開始する。


「荷車召喚。そして荷車アタック。」


 まず門番だったとおぼしき魔物を、荷車で殴る。

 このとき荷台で殴るのがコツだ。車輪が地面から離れているとはいえ、荷台に触れているものは「荷車に載せている」と言える。車輪が地面から離れても、荷台に荷物が載っていれば、載せたまま横転するのと同じだからだ。

 確かに、荷台で殴るのを「荷台に載せた」と言い張るのはちょっと苦しいが、それでも点検不要スキルは問題なく発動し、魔物は門番に戻った。


「……はっ!? ……え? あれ? ジャック?」


 姿が戻ると同時に、正気に戻る。

 治した門番に状況を説明し、荷車を召喚して与える。


「頼んだぞ。」

「任せろ。」


 荷車で殴れば治るのだから、殴る役は俺でなくてもいい。治して荷車を与えて、殴らせる。ネズミ算式に魔物が人間に戻っていき、人海戦術が始まる。

 俺のスキルだけでは再び変異する危険があるが、ここでルナシー王女殿下のスキルが活躍した。グレード5「鼓舞」は変異の進行を遅らせる。正気を保っている間に荷車に乗れば、即座に治る。

 こうして、王城は制圧されたときとほぼ同じペースで奪還していった。

 俺たちは謁見の間に突入する。


「アレキサンダー・レッド。お前の野望はここまでだ。」

「ふん。まだ変異していない奴がいたか。

 いいだろう。この私が直々に――」


 アレキサンダー・レッドは、玉座から立ち上がって、床に手をつく。


「変異!」

「……!? ……?」

「…………。」

「…………??」

「…………? あれ……?」

「…………????」


 何も起きなかった。


「バカな! 変異! 負傷! 病気! 昏倒!」

「…………。」


 何も起きない。

 どうやら何かスキルを使っているようだが、相手に向けるのではなく床に向かって使うとは、変わったスキルがあったものだ。


「……あ。そうか。」


 ようやく俺は思い当たった。

 何かのスキルで攻撃されているようだが、俺は点検不要スキルのおかげであらゆるダメージやバッドステータスから即座に回復する。見た目にはスキルが不発に終わっているようでも、実際にはしっかり食らってから治っているのだ。痛みを伴わないスキルを受けても、チクリとも感じないからまったく気づかない。


「いや、そもそも王城にはスキル封じが施してあるから、城内で新たにスキルを使うことはできないぞ。外で使って、そのまま持ち込んだものは別だが。」

「へぇ……。」

「あっ……。」


 初めて知った。さすがに王城の防御は鉄壁だ。

 しかし――


「何だよ、『あっ……』って。」


 忘れてました、みたいな反応だな。

 王族宗家のくせに、そんなバカなことがあるのか?


「う、うるさい! 屋敷と勝手が違うからうっかりしただけだ!」


 しらねーよ……。何この残念な感じ。王城制圧のボスキャラじゃないのかよ。

 隣に立ってる黒いやつが、「やれやれ……」みたいな仕草で首を振っている。お前誰だよって感じだが、味方にまで呆れられるアレキサンダー・レッドの残念さ加減は、ちょっとどうなんだ。


「とりあえず、荷車アタック。」

「ぐへあっ!? ……はっ!? え……? あれ? 何が起きた……?」

「おや……洗脳が解けてしまいましたね。」


 黒い奴が初めて喋った。


「その声は、じい!? なんだ、その格好は!?」


 アレキサンダー・レッドが驚く。

 じいと呼ぶぐらいなら近しい家臣なのだろう。それが見た事もない格好をしていると。

 しかし、どういう状況かな?


「洗脳が解けたって、あんた、主人の筋にあたる奴を洗脳していたのか?」

「ふっ……私が人間ごときを主人の筋にするとでも?

 バカな……そんなバカな。そんなものはただの偽装、単なる隠れ蓑ですよ。」

「何だと……? どういう事だ、じい!」

「鈍い人ですねぇ。だからこそ操りやすかったのですが……。

 ……ともあれ、城内の魔物はすっかり片付いてしまったようですね。

 ならばこの場はいささか多勢に無勢。撤退する事に致しましょう。」


 じいと呼ばれた黒い奴は、床の中へ――いや、影の中へ沈んで消えた。


「何だったんだ……?」

「アレキサンダー・レッド! 知っている事を洗いざらい吐いてもらうぞ!」


 ルナシー王女殿下が、怒れる獅子のような剣幕でアレキサンダー・レッドに詰め寄る。

 そのまま情報を引き出してみたところ、どうやら確かにアレキサンダー・レッドは操られていたらしい。しかも操られている事を自覚できないで、すべて自分の意思だと思い込んでいた。そういう洗脳系のスキルを持っていると考えていいだろう。

 黒いじいは意識がハッキリしていたし、普通に会話ができた。魔物に変異した連中とは違う。あの姿も魔物に変異するスキルの効果ではなく、それとは別の方法だと考えていいだろう。

 要するに、あのじいが真の黒幕というわけだ。いったい何のために、こんな事をしたのだろう? ここまで派手に事件を起こしておいて、今更逃げてどうするつもりなのだろうか? 追い詰められたり焦ったりした様子はなかった。まだ巻き返す方法があるという余裕だろうか?


「いずれにせよ、追った方がよさそうですね。」

「うむ。

 アレキサンダー・レッド。あの黒い奴の行き先は?」

「おそらく研究所だ。

 じいは、私の『変異』のスキルに興味を持っていた。どういう人物がどんな魔物になるのか、その法則を解き明かし、より強い魔物を生み出そうとしていたようだ。研究所には、そのための実験台として集められた犯罪者や浮浪者が収容されている。」


 世界地図と自動検知のスキルで、黒い奴(じい)を探す。

 アレキサンダー・レッドの話と照らし合わせた地点に反応あり。どうやら地下に居るようだ。

新作はじめました。

「追放された第3王子は、新政権を樹立する」

下のほうにリンクがあります。

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