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今後の人生で、これだけは譲れないこと

 翌日、王城へ出向いた。

 ルナシー王女殿下からの手紙を受け取り、メリッサ・ワイズの家への案内人に合流。その足でメリッサ・ワイズの家へ向かう。

 本人に会ってみると、ルナシー王女殿下が言っていたとおり、非常に小柄な女性だった。140cmないかもしれない。瞳と頭髪は翡翠色で、短めの髪をポニーテールにしている。

 メリッサは、ルナシー王女殿下からの手紙を受け取ると、その場で目を通し、それから俺に向き直った。


「それで、どのような事業計画でしょうか?」


 俺は運送業のビジョンを話した。

 今は商人がそれぞれで運んでいる荷物を、まとめて運ぶ。装甲車を展開している以上、街道周辺で活動する冒険者は次第に居なくなるだろうから、商人の護衛として雇われる冒険者も減るだろう。それに輸送にかかるコストも少なくて済む。

 それに旅客運送。人の移動が増えれば、経済はさらに活性化する。たとえば観光だ。風景だけ見て帰る観光客はいない。必ず食事なり土産なりアクティビティなりを楽しんでいくだろう。それに移動が簡単になれば、引っ越しも増えるはずだ。田舎の過疎化と都市部の過密化が進むことになるが、人口密度が高くなることは同時に技術の発展も促す。高層建築物やインフラ整備などは間違いなく発達するだろう。そして、それを作るための労働が必要になり、そこでも経済が回る。

 このようにして、人と物の輸送は、国全体を活発化させ、発展させるのだ。


「なるほど。具体的で、しかも壮大ですね。

 よくそこまで広い視野と遠い未来を見通せるものです。」


 そりゃそうだ。前世で本物を見ているのだから。

 しかし、その事は黙っておく。いかに剣と魔法のファンタジー世界といえども、前世で別の世界に生きていた記憶があるなんてのは、あまりに荒唐無稽だ。信じてくれないだけならいいが、一気に胡散臭い人物だと思われてしまう。


「見えるだけでは実現できません。実現するには、運営できるように組み立てる腕前が必要です。俺にはそれがない。でも、ルナシー王女殿下は、『あなたなら、その腕前がある』と。

 トラックもバスも出します。でも、経営はあなたに任せる。

 メリッサ・ワイズ。あなたを最高責任者として雇いたい。」

「……分かりました。」


 がっちり握手して、話はまとまった。

 メイドという仕事の領域を超えて危険なことを命じられたメリッサにとって、経営を任せるという話は魅力的に映っただろう。何しろ自分が命令を出す側だ。俺はメリッサを雇った形だが、運送業に関して何の命令権も持たない。メリッサを解雇する以外の権利は、俺にはないのだ。メリッサは誰からも命令されずに活動できる。

 辞めた理由を考えれば、そこがネックになるのは分かっていた。俺にとっては、面倒なことを押しつけて、必要になったら教えてもらってスキルを使い、あとは何もしなくても収入になるという、ほとんど不労所得に等しい状態だ。冒険者の片手間にやる事だから、このぐらいでちょうどいい。






 それから2週間ほどして、ルナシー王女殿下と聖女シーラ姫が連れ立ってやってきた。

 だが、仲良く一緒に来たというわけではなさそうだ。言い争う2人の話を聞いてみると、どうやら2人とも俺を勧誘しに来たらしい。つまり、ルナシー王女殿下は俺を直属の部下として近衛騎士か何かに取り立てようとしている。一方の聖女シーラ姫は、レッド王国の兵士を辞めたのならイーストン王国へ移っても問題ない、と引き抜きのような話を持ってきた。


「ありがたいお誘いですが、今は国に仕える気はありません。」


 俺は両方の話を断った。

 俺は両国の街道全部を網羅して、魔物を狩猟しまくっている。しかも装甲車。車輌召喚はグレード4のスキルだ。そしてグレード4は将軍レベルの実力である。どうあがいても、両国は俺のスキルを軍事力で上回ることができない。つまり、両国のパワーバランスは俺の手の中にある。

 こうなると、1つの国に荷担するのは危険だ。荷担した国が調子に乗っておかしな事をやり始めても困るし、荷担しなかった国が無闇に萎縮しても困る。どっちにしても割を食うのは国民だ。それは俺の望むところではない。

 中立を保ちつつ、公平に振る舞う。それが今の俺にとって重要なことだ。たぶん今後もずっと、俺の人生では、これだけは絶対に譲れないことになるだろう。


「そもそも、俺を求めるのは国家の安寧のためで、それはつまり国民の幸福のためではありませんか?

 俺が1つの国に荷担することは、それ以外の国にとって安寧にも幸福にもならない。自国だけが良ければそれで良いという態度では、国際関係が悪化して、結局は自国の首を絞める。

 まあ、こんな事は猿に木登りでしょう?」


 猿に木登りを教える。釈迦に説法の類語だ。つまり、その道に詳しい相手に教えようとする。試験の合格者に参考書を売ろうとするような、無駄なことであるという意味だ。王女に国家運営の理念を語るのも同じだろう。

 あなたたちの方が詳しいですよね? と、相手を持ち上げながら反論を封じるわけだ。2人は半分恥じたような、半分惜しむような、微妙な顔をして引き上げていった。

 納得しつつも諦めきれないといったところか。そういう感情は俺にも経験がある。自信満々に発言したことが否定されて、しかも反論できない。そんな場合に味わう感情だ。


「そういえば……。」


 俺は「伝意の鏡」を取り出した。

 聖女シーラ姫は、他国の王女だ。そんな人物がいる場所では話せない事だし、ちょうどよかったかもしれない。


「伝え忘れていましたが、アレキサンダー・レッドに監視を付けましたね?

 すでにバレていますよ。」

「何?」


 ルナシー王女殿下は露骨に驚いた。

 可能性は高いと思っていたが、どうやらあたりだ。


「屋敷に入ったら発動するように、呪詛スキルを仕掛けておくと話していました。」

「……それを、どうやって知ったのだ?」

「こちらにも独自の監視能力があるのです。」


 レーザー盗聴の原理を説明するのは面倒だ。そもそもレーザーとか振動とかの説明から始めないといけない。


「……了解した。

 それにしても『呪詛スキル』か……。」

「どんな効果があるのか知りませんが、名前からして関連がありそうな気がします。」

「どうしたものか……。」

「もしもの時は、最寄りの車輌に乗せて下さい。傷でも毒でも呪いでも治るはずです。

 死んでしまったら、蘇生はできませんが。」

「回復系のスキルまであるのか?」

「ええ、まあ。最近目覚めました。」

「もう何でもありだな……。」


 ルナシー王女殿下はため息をつく。


「……ともかく、世話にならずに済むように伝えておく。

 ところで、ジャックは1日にどれほどスキルの訓練をしているのだ?」

「スキルの……? 多いときで22万5000回ですが、昨日は1万8000回でやめておきました。」

「はあ!?

 なんだ、そのデタラメな回数は!?」

「オン・オフを繰り返すだけですから、1秒に5回ほど。」

「な……!? あ……! そ、その手があったか……!」


 すぐに「伝意の鏡」の通信が切られた。

 さっそく訓練を始めたのだろう。剣術スキルは1回剣を振ることで「1回使った」ことになる。つまり常時オンのスキルであり、オン・オフを繰り返すことはできない。なら、ルナシー王女殿下はグレード2のスキルに目覚めたのだろう。剣術スキルのグレード2は、たしか「身体強化」と「気配探知」だ。両方ともオン・オフができる。

 一方、俺もこの2週間、スキルの訓練は続けている。

 転移スキルがSLV10になって、新しく2つのスキルが目覚めた。


「世界地図」SLV1 グレード6 半径SLV×1000km

 頭の中に常に地図が表示される。正確かつ詳細な地図だ。これで広範囲の街や地形、その位置関係が分かる。まだ行った事がない場所にも転移できるし、飛行スキルや移動スキルで一直線に目的地まで飛べるというわけだ。大幅に便利になった。


「自動検知」SLV1 グレード6 半径SLV×1000km

 周辺の敵・味方・罠・アイテムなどを検知する。これは腹を刺される前に目覚めてほしかったな。すぐ治るといっても、刺されれば痛い。このスキルがあれば、近づいてくるのも待ち伏せているのも一目瞭然になる。よほど気が散っているときでもなければ、不意打ちを受けなくなるだろう。


 この2つのスキルを組み合わせると、所在不明の目標を討伐・採集するというような依頼を受けても、すぐに探し出せるはずだ。今度、実験をかねて薬草採取の依頼でも受けてみるか。


 ==ジャックのスキルまとめ==

 グレード1

 歩行 SLV1-10 SLV×10kmを疲れずに歩ける。


 グレード2

 走行 SLV1-10 移動速度がSLV×10倍になる。(隠し効果:認識速度も同様に加速される)

 荷車召喚 SLV1-10 SLV×10kgを積載できる人力荷車を召喚する。


 グレード3

 飛行 SLV1-10 移動速度SLV×10km/hで飛行できる。

 過積載 SLV1-10 積載量がSLV×10倍になる。

 補助動力 SLV1-10 牽引重量のSLV×10%を軽減するパワーアシストを受ける。


 グレード4

 移動 SLV1-10 移動速度SLV×100km/hで3次元移動できる。受けるべき影響を無視できる。(隠し効果:認識速度向上)

 無限収納 SLV- 無限に収納できる。収納物は時間停止の効果を受ける。生きている生物は収納不可。

 車輌召喚 SLV1-10 航続距離SLV×100km。最高速度100km/h均一。車種は任意指定。


 グレード5

 転移 SLV1-10 射程距離SLV×1000km。

 点検不要 SLV- 本人・車輌・積載物に対して、復元魔法をかける。

 自動運転 SLV- 召喚車輌に自動運転機能がつく。


 グレード6

 世界地図 SLV1-10 頭の中に常に地図が表示される。半径SLV×1000km

 車輌変造 SLV- 召喚車輌をカスタムできる。追加装備・内装変更など。

 自動検知 SLV1-10 周辺の敵・味方・罠・アイテムなどを検知する。検知範囲:半径SLV×1000km


 グレード7

 ?G7-1 SLV1-10 このスキルは、世界地図SLV10と自動検知SLV10が必要

 ?G7-2 SLV- このスキルは世界地図SLV10と自動検知SLV10が必要

 ?G7-3 SLV- このスキルは転移SLV10と自動検知SLV10が必要

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