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今更の登録テンプレ~嵐の前の静けさ~

 冒険者ギルドに登録しよう。

 実験を終えて、街へ向かう。まずは街の外にやってきた。


「車輌召喚。」


 トラックを召喚して乗り込み、そのまま運転して街へ向かう。

 途中で、自動運転スキルを使えばわざわざ運転する必要はなかったと気づいたが、前世の記憶があるせいか運転する行為がまるきり無意識に実行されていた。まあ、たまには手動運転もいいだろう。

 冒険者ギルドの前へ駐車して、大きな建物の中へ入る。図書館と倉庫が合体したような建物で、それぞれの部分に出入り口がある。倉庫のような部分は、魔物の死体を買い取ってくれる窓口だ。人力荷車で運んできた人が、そのまま窓口まで入れるようになっている。軽トラックでも十分に入れるスペースがあるが、大型だと無理だろう。

 冒険者ギルドに登録していない人からでも買い取りはしてくれるが、俺は先に登録するために、図書館のような部分に入った。こちらは事務処理をやっている部分で、登録・退会・受注・完了報告などを担っている。それ関係の書類が大量に保管されているはずだ。また、魔物の生態や特徴に関する資料とか、アイテム図鑑なども保管されていて、自由に閲覧できる。そういう意味ではまさに図書館だ。


「いらっしゃいませ。」


 と受付窓口(カウンター)で受付嬢が営業スマイルを浮かべていた。

 こういう所に配置される職員というのは、なぜだか美人が多い。来訪者に対するギルドの「顔」として美人が選ばれるのだろうか。そういえば前世でも市役所とか大企業とかの受付嬢には、美人が多かったような気がする。


「登録したいのですが。」

「かしこまりました。」


 答えて、受付嬢が紙を1枚取り出した。


「こちらに記入をお願いします。代筆も承っておりますが。」

「ああ、大丈夫です。」


 この世界の識字率について説明しよう。ハッキリ言って低い。

 まず、人口全体の40%が男、60%が女だ。少し女が多い。徴兵されて死亡する男がいるから、そうなる。で、男のうち50%(人口全体の20%)が長男なので、これは徴兵されない。残りは長男以外の男だが、そのうち半分が栄養不足や不衛生などの理由で不健康。これも徴兵されない。従って実際に徴兵されるのは、人口全体の10%に過ぎない。

 この10%は、徴兵されて兵士として訓練を受ける1年間のうちに、最低限の文字を学ぶ。指揮官が死んでも、すぐに代わりの者が命令書や報告書を読み書きできないと困るからだ。実際の識字率は、10%よりももう少し高い。この10%に加えて、貴族や商人あたりが入ってくるからだ。

 長男以外の男が少ないのは、徴兵対策だ。徴兵されて死ぬぐらいなら、最初から子供なんて作らないでおこうというのが親心である。都会ではそういう夫婦が多く、長男だけ、あるいは長男と姉妹、もしくは姉妹のみ、という構成がほとんどである。

 ところが田舎になると、娯楽が少ないので、他にやる事もなく、子供が増える。つまり俺もそういうわけで次男として生まれたわけだ。農家だから食うものには困らないというので、3~4人の兄弟姉妹というのが珍しくない。俺の両親は男が続けて2人生まれたから、あとは自制したようだ。

 閑話休題。

 書いた書類を提出すると、受付嬢は目を通して内容を確認した。


「……はい、結構です。これで仮登録ができました。Gランクの依頼に限って、受注できます。

 仮登録のままですと、ランクが上がりませんので、Gランク以外の依頼は受注できません。従って次に本登録が必要になります。

 本登録には、3つの方法がございます。

 1つめは、試験を受けて合格すること。内容は試験官との模擬戦になります。

 2つめは、金銭を納付すること。仮登録でGランクの依頼を受注できるのは、それで金銭の納付ができるなら、一定程度の実力はあると判断されるためです。罠を仕掛けたり弓矢で奇襲したりというような戦い方をする人は、面と向かって戦う模擬戦では勝てなくても、魔物は狩れるという事もございますよね。

 3つめは、冒険者ギルドに登録している有資格者からの推薦がある場合です。推薦状はお持ちですか?」

「いえ、持っていません。

 金銭の納付でお願いします。」

「かしこまりました。

 では、11万円になります。」


 異世界で、なんで通貨単位が「円」なのかって? いや、本当は金貨・銀貨・銅貨とかの通過があって、△貨××枚という単位で値段を表示するわけだが、それだと「どれぐらいの価値なの?」という疑問が出るから、勝手に変換させてもらった。親切だろ?

 しかし、手数料だけで11万円か。けっこうするものだ。たぶん複数の機関やら部署やらにまたがって情報がやりとりされるのだろう。日本でも猟銃を持とうと思ったら、免許を取るのに住民票やら講習代やら申請手数料やら色々と費用がかかる。

 まあ、兵士の給料でも払える金額だ。問題ない。


「……はい、11万円ちょうど、お預かりします。

 では、会員証を作りますので、少々お待ち下さい。」


 受付嬢は、書類と代金を持って奥の部屋へ引っ込んでいった。

 言われたとおりに待っていると、柄の悪い男たち3人組が近寄ってきた。


「すいませ~ん。ちょっといいですか~?」

「差し支えなければ、財布出してもらっていいですかね~?」

「差し支えあっても、出してくださ~い。」


 言葉は丁寧でも、人相が悪くて、やたらニヤニヤしている。

 俺が11万円を支払ったから、もっと持っていると思って喝上げに来たのか。


「財布か? ほら。」


 俺は大人しく財布を差し出した。

 ニヤニヤしたままの男たち。その中の1人が、俺から財布を受け取って、中を確認する。


「……はあ?」

「どうした?」

「空っぽじゃねえか。」


 渡す前に中身は無限収納スキルで回収済みだ。


「俺が金持ちに見えるかよ?」


 肩をすくめて尋ねてやった。

 改めて、男たちが俺を値踏みするように見る。

 俺は兵士を辞めてそのままの格好だ。支給品の剣や皮鎧は、王城を出る前にすでに返却している。その下に着ていた服が今の格好だが、これは実家の農家で着ていた服そのままである。機械化されていない農家の収入なんて多いわけがない。街ゆく人々のほうが、よほどいい服を着ている。


「ちっ……シケてやがんな。」


 男たちは俺に興味を失って立ち去った。

 武具を用意せずに冒険者になろうという者が、なけなしの金を登録料に支払う。普通なら武具を買う金を残すはずだ……とは考えなかったようだ。まあ、不自然とまでは言えない。受付嬢も言っていたが、罠とかで戦うなら武具は不要だし、試験より登録料を支払って登録する。

 罠を専門とする者を罠師というが、罠師は普段から罠を持ち歩いているわけではない。設置しに行くときだけ持っていけば、あとは放置しておけばいいのだから、普段から持ち歩くわけがないのだ。つまり他人からすると俺は罠師に見える。

 まあ、あながち間違っていない。車輌を召喚して、あとは自動運転スキルで放置しているだけだ。やっている事は罠師と変わらない。

 ただし、罠師の人数は少ない。派手に、豪快に冒険するのが、冒険者の醍醐味だといわれている。地味にコソコソするのが専門の罠師は、人気がないのだ。大物を仕留めたとしても、強さを自慢する要素はないから、周囲からはあまり認めて貰えない。自衛する能力が低いと思われがちで、実際その通りなので、仕留めた獲物を横取りされる事さえある。要するに貧乏人だ。喝上げしようというチンピラにとっては、罠師なんて狙っても旨味がない。

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