「どうしてもか?」「どうしてもです。」
「ところで、辞職する必要はないのではないか?」
ゲルハルト国王が蒸し返した。
借金を取り立てるために独立性の高い立場になる。そのために辞職する。そう伝えたから、ゲルハルト国王としては、支払い能力を疑われているようで不愉快なのかもしれない。あるいは、このところ活躍したから俺を引き留めたいのか。
いずれにせよ、俺としては辞職は決定事項だ。だから強気にいく。
「必要だから申し上げたのです。
先ほどは独立性の高い立場になるため、とだけ説明しましたが、他にも理由があります。
兵士として働くことができません。国境付近に単独で駐在しなければならないからです。」
魔物を討伐し、死体を回収して冒険者ギルドに売る。これは装甲車とトラックで自動化できるから、俺にとって不労収入だ。しかも在庫を補充できるから、俺は一生収入に困らない。だが、車輌を派遣できるのは半径1000kmという制限がある。国境付近に駐在しないと、両国を網羅できない。これが国境付近に駐在する理由だ。
そして、それが単独である必要がある。なぜなら、トラックの駐車スペースが必要だからだ。無限収納の存在は隠すと決めているから、魔物の死体は冷凍トラックで保存する。2つの国の全域から集めるわけだから、いくら過積載スキルで最大積載量を100倍にできるといっても、かなりの駐車スペースが必要になる。俺が駐在する地点の周辺に広大な土地が必要になるから、街の中なんかには居られない。
無限収納の存在を隠して、このあたりを説明した。
「従って集団行動を基本とする軍には在籍できず、出撃命令にも従えない可能性があります。
これでは兵士としてあまりに欠陥品ですので、辞職するしかありません。」
訓練していた移動スキルもSLV9になった。走行スキルとの組み合わせで、最高速度は9万km/h。今は装甲車しか使っていないが、戦車も出せる。自動操縦で100万台だって同時に動かせるし、移動スキルで飛行させて戦闘ヘリの代わりに使うことだってできる。つまり、国家の強制力も、もう俺には通用しない。遠くの国へ逃げてもいいし、戦闘車両で蹴散らしてもいい。
「ならば貴族に取り立て、国境付近を領地として与えよう。
そうすれば場所は確保できるし、自分が指揮官なのだから部隊の規模や行動をどうしようと自由だ。つまり集団行動でなくてもよい。出撃命令には、車輌だけ送ってくれればよい。国土全域で戦えるのだから、それで問題なかろう。」
ほら来た、と言わざるを得ない。
冒険者として活躍したい俺が、そのための時間を失うような地位にはつくわけがない。とはいえ、前世の記憶に根本を持つこの気持ちは、こっちの世界の記憶しかない人々には理解されないだろう。基本的に冒険者は、大半がその日暮らしのごろつきみたいな生活であり、一般にそういうふうに評価されている。
ろくに教育を受けていない者が、腕っ節だけで食い扶持を稼ごうとしてなるのが冒険者だ。教育が足りないので、理路整然と思考する能力が育たない。声が大きく、上手に怒りを演出して相手を怖がらせる者ほど、我を通しやすく、大きな態度ができるというので、そういう方向に走りやすい。
もちろん、中には穏やかな冒険者もいる。教育が足りていないと騙されやすくて損をするが、それでも善人としてなんとかやっていく冒険者だって存在するのだ。特に高ランクの冒険者には、そういう傾向が強い。周囲からたたえられ、頼られるので、わざわざチンピラみたいな真似をしなくても堂々と振る舞えるし、威嚇しなくても実際に強いのだから、やはりチンピラみたいな真似をしなくていいわけである。
「陛下。たしか、聖女殿下を運んだことへの褒美を頂けるという話でしたね。
褒美として、辞職させて下さい。」
そう言うと、ゲルハルト国王陛下はちょっと混乱した様子だった。
必要だから仕方なく辞める、という受け取り方をしていたのだろう。だが褒美として辞職させろというのでは、望んで辞職したがっているという事になる。実際それこそが俺の本心なのだが、安定した職業を捨てて、不安定な同業他社へ、というのは一般的には意味不明だろう。
だがゲルハルト国王陛下は、なかなか聡明な人物のようで、俺が望んで辞職したがっているという事をよく理解したようだ。
「……どうしても、か?」
「どうしてもです。
私には、冒険者になるという夢があります。兵士や貴族ではダメなのです。」
「なるほど。
なぜ冒険者なんかに……とは思うが、どうしても叶えたいという事だな。」
「はい。」
「余からの指名依頼には、応じてくれるのだろうな?」
「善処します。」
「よかろう。ご苦労だった。そなたの活躍に感謝する。」
こうして俺は辞職した。
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ジャックのスキルまとめ
グレード1
「歩行」疲れずに歩ける
グレード2
「走行」移動速度SLV×10倍
「荷車召喚」荷車を召喚する
グレード3
「飛行」空を飛べる
「過積載」積載量SLV×10倍
「補助動力」パワーアシスト。過積載の重量を帳消しにしている。
グレード4
「移動」SLV9 受けるべき影響を無視して3次元移動できる
「無限収納」異空間に無限に収納できる。生きている動物は不可。収納中アイテムは時間停止。
「車輌召喚」自動車を召喚できる
グレード5
「?G5-1」このスキルは「移動」SLV10が必要
「?G5-2」このスキルはグレード4のスキルを全て最大レベルにしなければならない
「自動運転」召喚車輌を自動で動かす。特殊車両の装備も自動で動く。
グレード6
「?G6-1」このスキルは「?G5-1」SLV10が必要
「?G6-2」このスキルは「?G5-2」「自動運転」が必要
「?G6-3」このスキルは「?G5-1」SLV10と「自動運転」が必要




