カラスなぜ来るの
夜はモニタの前で交代して見張った。学校側に悟られないように、生徒会室の窓は日が暮れてから遠隔で開ける。スタジオで夜食のカレーを食べていると、夕闇の中に、白い塊がふわふわと南の空からやってきた。あわてて、皆を起こす。
「鳥だ。」
「飛行機だ。」
「いや、スーパーのレジ袋だ。」
マリの解説によると、どうやら、風に舞い上がって飛ばされてきたらしい。人騒がせなやつだ。
今度は、西から真っ黒な塊が変形しながらやってきた。
「UFOだ。」
「侵略ロボットだ。」
いやはや中二病が過ぎるぞ。
「カラスだ。」
学校の木々に次々とカラスたちは降り始めた。やがて、一羽が窓から生徒会室に飛び込んで天井のカメラにぶつかった。街灯の明かりで、ぼんやりだが室内の様子もわかる。やつらは部屋を物色していた。
小型ドローンでやつらの足取りを追う。上空からは、校舎に巨大な丸い明かりが見える。屋上のヘリポート。しかし、円の中にはHの文字ではなく星型が浮かび上がっていた。誰がカラスを呼んでいるのか。そこでみた光景が全てを物語っていた。
「もう寝よう。」
エレンは部屋に帰っていった。マリは編集作業を続けていた。僕はというと安心したとたん、その場でテーブルにふせて寝てしまった。
朝起きると、目の前に見慣れない顔がある。マリが横で寝ている。僕たちには毛布がかけられていた。エレンの家の誰かがかけてくれたようだ。しばらくボーと、化粧っ気の無い、彼女の寝顔を見つめる。ここから動きたくない。やがて、僕が目覚めた気配を感じてか、彼女も目を開けた。
「はっ。」
二人は勢いよく頭を上げた。
「ゴツン。」
寝起きで体が動かない。当然のごとく頭をぶつける。
「変なことしてないよな。」
マリはすぐにフードで顔を隠した。
「し、してない。」
僕は首を横に大きく振った。
「そうか、してないか・・・。」
なんだか意味深なものいいだったが、パニックの僕にはそれを感じる余裕はなかった。
そして、僕ら3人は金曜日の朝、生徒会室に乗り込んだ。