救急同好会
水曜日は放課後の部活がない。代わりに昼休みに活動するところもある。
「救急って保険委員会みたいなものかな?」
なにやらあやしい雰囲気の部屋があった。この学校には、コンピュータ室がある。そこで彼等は活動しているようだ。
「我々は現代の陰陽師を目指す集団。陰陽師の本質は医者だ。薬草や呪術によって病を治した記録が多々ある。彼等の呪文、急急如律令にかけてつけた名前だ。」
結局は、医者を目指す集団ということらしい。
「単なる医者じゃない。安倍様を奉り、式神をあやつる。そして皆を心の病から救うのが目的。」
式神って、これ、パソコンだよね。
「現代の式神はネット上にいる。われわれは安倍様のために、言霊を巧みに扱い、人々を悪夢から救おうと活動しておるのだ。」
「やつらの正体はネトサポだ。ネットサポータ。政権に都合のいいことを書き込み、都合の悪い書き込みは徹底的に叩く。闇バイトじゃないかな。」
マリの話では、とりまとめがいて金が出るらしい。彼女は自宅でネット活動の収入を得てはいるが、やつらは学校の設備を使って金儲けをしている可能性があるというのだ。
「実態がわからないだけに、かかわらないほうがいい。やつらの中には、カルト集団もいるし、反社会的勢力もいるらしい。かつて反社会的勢力という言葉の定義が政府によって消されてしまったからな。」
やつらは学園祭で、勧誘を行なうつもりだったらしい。生徒会に却下されて、怨んでいることだろう。
「本当の陰陽師なら、カラスとか扱えるよな。」
僕の真剣な問いに、マリは笑った。
「無理。ネトサポにはそんな能力無いって。やっぱりお前は面白いな。」
放課後、生徒達のいない校舎と校庭を丹念に調べた。
「あったぞ。」
エレンが一枚の紙を茂みの中から見つけた。
「フットサルの名簿だな。どうやら、開いた窓から飛ばされたらしい。」
校舎の中を調べていた僕は、体育館の用具室の隅で茶色の干からびている物体を見つけた。
「まわりに何か巻きついているな。」
それは、ヌル研を脱走したやつの成れの果ての姿だった。
「ミイラでも作るつもりだったのかな。」
丁寧に巻きついたものをはがすと、同好会の名簿だった。それも二枚。ヌル研と温泉。
「残りは2枚だ。あと二日しかない。何か対策を考えよう。」
僕ら3人は、エレンの家で遅くまで議論した。