温泉同好会
下校時刻になったので、今日の調査はここまでで引き上げた。とりあえず、エレンの家に集合だ。もっともマリはエレンの家に下宿してるんだが。
「もしかして、フリークライムの連中に恨みがあるとか。」
「やつらが廃部になって喜ぶ連中かもな。」
「名簿がなくなってるのは、あと温泉同好会、救急同好会、電気自動車同好会だ。」
僕は候補になりそうな同好会を考えた。
「暗すぎて画像から犯人が特定でいない。」
マリは生徒会室のカメラ映像を見ながら言った。
「屋外からのものは街灯で若干見える。日曜の昼ごろ突然窓が開いた。おそらく風だな。鍵を閉め忘れたんだろう。その夜、何者かが侵入してかなり荒らしたようだ。しかも室内のカメラにはローションのようなものを塗った跡がある。」
それはおそらく、ヌル研からの脱走者のしわざだ。
「水中生物なんだろ?天井付近のカメラにまで登ってくるのか?」
共犯者でもいるということか。
翌日火曜日。僕は温泉同好会へ向かった。急な体験も考慮して、水着とタオルを持参した。のれんをくぐる。
「やあ、通称、温泉同好会、正式名称は逆さくらげ同好会へようこそ。」
また妙な歓迎だ。普通は逆なんじゃないか?
「水槽が一杯あるが、各地の名湯とかいうんじゃないよな?」
そう思ってよく見ていると、なにやら透明な物体がふよふよと漂っている。
「これって・・・。」
「これは水くらげ。われわれはくらげを研究している。いまどき温泉に入るだけの同好会なんて通用しない。僕たちの同好会のマークを見て、みんなが温泉同好会だと思っているだけだ。」
確かにシンボルマークは逆さくらげに良く似ている。
「逆さくらげではない。よく見てごらん、足が4本あるだろ。」
そこがこだわりポイントですか。
棚の上に、黒い物体がある。
「あれもくらげ?」
「ああ、きくらげ。」
ふうん、て、それキノコだろ。
「とりあえず、くらげとつくものは何でも集める。」
「われわれは、くらげ毒を研究している。毒を無効化できれば海水浴も怖くは無い。」
僕は、ヌル研のことを聞いて見た。
「やつらとは相容れないライバルだ。どちらが成果を挙げられるかで部への昇格が決まる。水生生物の部活は1つで十分といわれているからな。部になったら、部費を使ってゆっくり温泉旅行をするのが目標だ。」
やっぱり、温泉に入りたいだけじゃないか。