ヤタガラス
放課後、僕ら三人はさっそく活動を開始した。
「メアリは監視カメラの映像解析。ヘレナと僕は現場検証だ。」
「こら、猿が仕切るな。」
エレンのお嬢様気質はここでもいかんなく発揮された。
「先週末まとめた名簿をうっかり机の上に置き忘れた。」
ハブが状況を説明し始めた。
「今朝急いできてみると、室内に名簿が散乱していた。机の後ろの窓はあいていた。ドアには鍵がかかっていたので、犯人はおそらくそこから侵入したのだろう。紛失した名簿は5枚。いづれも同好会のものだ。」
同好会の用紙には銀色の丸いシールが張られていた。
「正式な部には黒の丸いシールが貼ってある。色は何でもよかったんだが、たまたま余っていたからな。」
「ゴミ箱の中の黒いものはなんだ?」
エレンがなにかを見つけた。
「鳥の羽だ。今朝部屋の中に散らばっていた。犯人がばら撒いたものかもしれん。」
それは、カラスの羽と思われた。
「カラスに関係した名前の生徒とか。」
僕は精一杯の推理をした。
「いないな。ああ、ヤタガラスというフットサル同好会があったな。消えた名簿の一枚だ。2年にキャプテンのヤタがいる。おそらくまだ校庭にいるだろう。」
僕は一人で急ぎ彼を探しに言った。エレンのやつは連れて行くと話がこじれかねない。
「フットサル同好会はここでいいのかな?」
「入りたいなら、テストしてやるぞ。」
大柄な、がたいのいい青年が足を止めて話してきた。
「君がヤタ君かい?」
「そうだ。」
かれはそういって腕につけたキャプテンマークを見せた。
「生徒会に教えてもらったんだが、学園祭での君達の出し物に興味があってさ。」
内容の知らない僕は、探りをいれてみた。
「うちにはサッカー部があるからな。サッカーじゃ目立てない。だからダンスにしたんだ。」
「ダンス部もあるだろ。どうしてわざわざ。」
「君は生徒会長選挙に出ていたレイ君だな。君を信じてここだけの秘密だが、女装して女性ユニットのダンス。歌は、CDを流す。ボール回しなどの技を入れるから期待してくれよ。」
何とも爽やかな青年だ。彼が盗みなどするだろか?いやいや、人を見かけで判断していけない。見かけのいいやつほど、何かをたくらんでいるものだ。