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コメディ短編

婚約破棄されたので魔王を倒しにお出かけします。あれ? 魔王って思ってたのと違う。


「わたしはソミアとの婚約を解消し、ここにいるシロノハールと婚約することをここに宣言する!」

 

 

 盛大な舞踏会で、私の婚約者である第17王子のコメーダは大声でそう宣言した。

  

 まあ、そんな予感はしてたな、うん。

  

「ソミア! お前はここにいるシロノハールをずいぶんと虐めていたそうではないか!」

  

 私の婚約者コメーダの横でニヤリと笑うシロノハール。

 名前からして甘ったるいけど、丸っこい顔にたっぷりとクリームをかけたような可愛い笑顔が評判の天然女だ。

 まったく世の中の男ってのは、こういう甘ったるい女のどこがいいのかしら? 胸焼けするに決まってるのに。

 

「挨拶されても無視したり、買ったばかりのドレスに水をぶちまけたり、筆箱の中に死んだネズミの死骸を入れたことは覚えていますが……階段から突き落としたりはしていません!」


「それを虐めていると言うんだよ!」

  

 結局、私の言い分はまったく聞いてくれず、私の婚約者はシロノハールとともに舞踏会を後にした。

 

 というか、シロノハールに聞きたい。第17だぞ! 17! 王位を継ぐ可能性なんて鳥取砂丘から一粒のタピオカを見つけるより低いんだぞ! というかない! 鳥取砂丘にタピオカは落ちてない!

 

「珍しく取り乱してるじゃないか? 鳥取砂丘なんて言葉は久しぶりに聞いたぞ」


 そう言って私の横にやってきたのは、王国騎士団の団長であり、『王国の薔薇』と呼ばれるほどの美貌を誇るナリアだった。

 ナリアは私とほぼ同じ頃にこの世界に転生してきた日本人の女だ。私と出身地が近かったこともあってすぐに意気投合して、今では大切な悪友になっている。

 

「あら傷ついた? 島根には鳥取砂丘みたいなビッグスポットが無いものね」


「島根も鳥取も変わらないだろ。それより、婚約解消で傷ついたとか言うんじゃないだろうな?」


「まさか。あんな男、熨斗つけてくれてやるわ。陛下の顔を立てて婚約してやってたけど、どうせ半年も持たなかったでしょう」

 

「まあいいさ。そんなことより、邪魔な婚約者もいなくなったことだし、わたしと一緒に遊ばないか?」


 そう言ってナリアは私の前に剣を差し出す。

 

「なによこれ?」


「知らないのか? 聖剣だ。魔王を倒す必需品だぞ」


「聖剣は分かってるわよ! そうじゃなくて、なぜその聖剣を私に渡すのよ!」

  

 私の言葉を聞いてないのか、ナリアは聖剣を抜き、その刃身を私の眼の前にさらす。「綺麗だろ?」 そう言うナリアは陶酔した表情で舌を出し聖剣を舐め始める。

 

「あ、あんたねえ、どう見ても危ない女にしか見えないわよ。薔薇が聞いてあきれるわ」


「わたしは剣と刀さえあればいいんだよ。転生前からな。それより、この聖剣をやるから魔王を倒しにいかないか?」


「魔王?」


「ああ、魔王だ。わたしたちと同じように召喚された日本人の勇者が何人も魔王に挑んだんだがな、そろいもそろって返り討ちにあったそうだ。陛下も呆れ果てて、もう日本人は召喚しないとか言っている。まあ、役に立たない勇者なんかどうでもいいが、あまり日本人の評判が下がるのもよろしくないと思ってな」


 異世界ものの定番で、この世界でも日本人は大人気だった。

 あまりの日本人の数に、どこかの国では日本人街ができていて、そこに行けば牛丼や餃子も食べられると聞いたことがある。

 

 わたしもこの世界に来た時は、マヨネーズや、たらこパスタで一旗揚げて酒池肉林を想像したものだけど。一旗どころか、この世界には納豆からどら焼きまで揃ってて街道沿いには立ち食いソバまである始末。

 

「まったく日本人にも困ったものね。どこに行っても商売するんだから」


「でもそのおかげで、わたしは毎日、米の飯が食べられる」


「あんたは米の飯と梅干さえあれば他に何もいらないタイプだもんね。さすがは島根出身だわ」


「島根は関係ないだろう!」



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇

  


「婚約解消は全然構わないのよ。私のプライドが許さないだけ」


 王宮を後にして、私とナリアは街の大通りを歩いている。

 

「メリー・アントワネットが言っていた」


「メリー・アントワネット?」


「ああ。この国を代表する悪役令嬢だ。彼女が執筆した『本当の愛の見つけ方』は大ベストセラーになっている。その本の中で彼女はこう言っていた。天然の可愛い女には気をつけろと。あのタイプの女は、一匹見つけたら三十匹はいると思えと」


「ゴキブリかよ!」


「そうだ、そういう存在なんだよ。あいつらは人の物を欲しがる人種なんだ。というか、人が持っている物が良く見える人種なんだよ。アンが言う通り、見つけたら殺すのが一番だ」


「ゴキブリかよ! というか、アン? アンってなによ?」


「アントワネットのことだ。彼女のことはアンと呼ぶのが礼儀だ。わたしたちアンラーのあいだでは常識だぞ?」


「知らんわそんな常識! ていうかアンラーてなによ!」


「アンの生き方に憧れている女たちのことだ。わたしもその一人だがな」


 そう言って口元にハンカチをやり、いかにもプライドの高そうな女を演じるナリア。それ何か意味あるの?

 

 

 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇

 

 

 ナリアに案内されて着いたのは、うす汚れたアパートの前だった。【こわれ荘】というベタな名前のアパートになんの用があるの?

 

「魔王を倒すのはわたしたち二人でも大丈夫なんだが、魔王を倒したあとが困る」


「なぜ?」


「魔王を倒すと、色々と名誉や金が手に入って、人生を狂わす勇者が後を絶たない」


「宝くじか!」


「だから、魔王を倒した栄誉は他の奴に押し付けようかと思ってな」


 そう言いながらミシミシと音を立てアパートの二階に上がっていくナリア。こう見えても、ナリアと並ぶ美女としてその名を轟かしている私。その美女二人にはまったく相応しくないボロアパートだわ。あらいやだ、これじゃあまるで悪役令嬢じゃない。

 

「誰が住んでるの?」


「勇者だ」


「勇者!!」


「ああ、もっとも、ここに住んでいる勇者は、召喚されてから部屋に閉じこもったままだから、みんなから【ニート勇者】と呼ばれてるんだ。もちろん日本人だぞ」


 なにその日本人の面汚しは。でも、よく考えたらこの世界で活躍してるのは日本人の女ばかりなのよね。

 

 日本人の男ときたら、【ざまぁ】が好きなのかなんなのか、召喚されてすぐは全く活躍してくれない。たまに最初からフルに力を発揮してくれる勇者もいるんだけど、そういう勇者はかなりの高確率でクズなのよ。

 

「女がいないと魔王を倒せない」


「幼馴染を寝取ってやるのが俺の夢なんだよ!」


「猫耳の奴隷を買いに行きたいんですけど?」


 こんな勇者ばかりを見てきたので、日本の男の勇者にはまったく期待も何もしていない。

 この世界で、商会や領主として成功している日本人は女ばかりだ。

 もしかして、日本の女の子ってめちゃくちゃ優秀じゃない?

 

 

 ナリアに教えてもらった部屋の扉をノックする。

 

 トントン。

 

 返答がない。

 

 トントン。トントン。

 

 なんの音もしない。静かだ。

 

 ドンドンドン!ドンドンドン!

 

「な、誰ですか?」

 

 ようやく中から返事が聞こえた。いるならさっさと出てきてよ。

 

「警察だ。開けろ」

 

「な、な、拙者はなにもしてないですぞ!」

 

「なにもしてないのが問題なんでしょ!」

 

 ようやく少しだけ開いた扉のすき間に靴の先をこじ入れ、強引に扉を開ける。刑事ドラマを見ておいてよかった。

 

「非常識ですぞ! いくら警察とはいえ」

 

「悪いわね。警察じゃないの」

 

「誰?」

 

 勝手に部屋に入っていくと、中には背が高いひょろ長い勇者が立っていた。

 

「一体何の用ですぞ?」

 

「なんの用って、勇者に用なんてひとつしかないでしょ? 魔王を倒しに行くのよ」

 

「魔王討伐?」

 

「そうよ」

 

「嫌ですぞ」

 

「何言ってんだこらああああ!!」

 

「い、嫌なものは嫌ですぞ。脅したって無駄でござる。拙者はこの部屋でナリアと仲良く暮らすんですぞ」

 

 ナリア? ちょっと何言ってるか分からない。ナリアならここにいるわよ?

 

「ナリアこそ拙者の嫁!」

 

 そう言ってニート勇者が指さした先には、ナリアの抱き枕があった。どこで買ったこんなもん。

 

「この先の勇者通りにある聖女ショップですぞ」

 

 なによその聖女ショップてのは?

 

「聖女様のオフィシャルショップですぞ。そこでは聖女様だけではなく、神に仕えるシスターとか孤高の美人エルフとかくっころ美人騎士とかのグッズがたくさん売っているのですぞ。ナリアはそこでは売り上げNo.1なのですぞ」


「あれ? 私は?」


「誰おまえ?」


「殺すぞこらあああ!!」

 

 この国なんだか終わってる気がしてきた。

 

「この抱き枕はナリアのイベントで手に入れた貴重なお宝ですぞ」

 

 イベント? ナリアのイベントなんてあったのかよ! いつの間に一体……

 

「ナリアの握手券を手に入れるために、拙者はナリアのブロマイドを100枚も積みましたぞ!」

 

 握手券て。というかナリア。あんた阿漕な商売してるわね。私も混ぜてくれたっていいじゃない。

 生暖かい私の眼に気づいたのか、ニート勇者が力説する。

 

「ナリアこそ至高。ナリアこそ正義。ナリアのためなら拙者はこの命惜しくはないですぞ!」

 

「だったら魔王討伐に行けばいいじゃない! というか、なんで抱き枕なの? 同じ抱きしめるなら本物のナリアの方がいいでしょう?」

 

「拙者など本物のナリアが相手にしてくれるなんてことあるわけがないですぞ」

 

 ボロボロのTシャツを着る勇気はあるくせにそっちの勇気はないわけね。いやいや、あんた勇者でしょ? 魔王さえ倒せば女なんてよりどりみどりよ。ナリアだってイチコロよ、たぶん。

 

「そんなわけないですぞ」

 

「そんなことないって。だったらナリアに聞いてみなさいよ」

 

 私は横にいたナリアに聞いてみる。

 

「さあ、ナリア。こいつに言ってあげて。魔王さえ倒せばこいつとの交際も「悪いむりだ」」


 早! 早過ぎでしょ! せめてもうちょっと希望を持たせてやんなさいよ! 気持ちは分かるけど、考えるふりくらいしなさいよ!

 

「だって部屋中にわたしの絵が貼ってあるし、そもそも抱き枕なんて気持ち悪いじゃないか……」

 

 いや、それ、あんたが売ったんでしょ? 自分で売っといてそのセリフはだめでしょうが!

 こいつが握手券を手に入れるためにいくら積んだと思ってるのよ。

 

「わたしが積んでと頼んだわけではない」 おいおい。


「それに……握手会の時のこいつの手が気持ち悪いのだ。汗でべったりしてて……」


「それは汗じゃあないですぞ」


 その瞬間、ナリアの体から恐ろしいほどの闘気が湧きあがった。

 

「なんだと貴様ああああああああ!!!」


 殴りかかるナリアの右ストレートを両手で受けるニート勇者。空いたボディに膝を叩き込むナリア。

 こんなボロアパートで見せるのは勿体ないくらいの戦いを繰り広げる二人。

 

「それみろおおおお!! 拙者がせっかく現実逃避してたのに、無理やり現実に引き込みやがってええ!」

 

 ニート勇者の体からも、もの凄い闘志が沸き上がる。まるで空気が震えているようだ。

 やっぱり腐っても勇者は勇者。やればできるじゃない。

 

「ごめん! ほんとごめんね! でも、女はナリアだけじゃないから! 魔王さえ倒せばよりどりみどりは本当だから!」

 

「そうだぞ! ソミアが旅の途中で惚れてくれるかもしれん」


「この女は好みじゃないですぞ」


「殺すぞお前」



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇

 

 

 こうしてナリアと私、そしてニート勇者の三人でパーティーを組み、魔王を倒す旅に出ることになった。


「そういやあんた、どんなスキルを持ってるの?」

 

「たいしたスキルはないですぞ」

 

 そう言ってニート勇者はステータスを見せてくれた。

 

 全属性魔法にいまどき流行りの暗殺スキルも高レベル。剣術は伝説レベルで槍や弓のスキルまで持ってやがる。なんだこいつ。

 

「空間移動のスキルも持ってるですぞ」


「「 く、空間移動!!」」


 空間移動と言えば、瞬時に空間を移動できる伝説スキル。数十年前に存在した大賢者しか持っていなかったと言われる超希少価値のスキルだ。

 

「聖女ショップに行くときは、いつも空間移動のスキルを使ってるですぞ」


「「 使い方!!」」



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 そんなわけで、私たちは魔王の城の前に立っている。

 

「早すぎてソミア殿が拙者に惚れる時間もなかったですぞ」


「黙れおまえ」


 しかし、目の前にあったのは、魔王が住んでいるとは思えない粗末な小屋だった。

 

 そんな小屋の扉をニート勇者がいきなり開けようとする。

 

「い、いや、ちょっと待ってよ。いきなり開けちゃうの?」


「そうだぞ。相手は魔王だ。いくら騎士団長のわたしが一緒にいるといっても」


 そんな私たちの言葉など関係ないとばかりに、ニート勇者は小屋の扉を開け大声で叫んだ。

 

「マオーちゃあん! いる?」


「は? あんた魔王の知り合いなの?」


「そうですぞ。召喚されてすぐに空間移動で魔王のところに来たんですぞ。でも、すっかり仲良くなって、今では拙者の大事な友達ですぞ」


 そんなアホな。はっ? もしかして、勇者たちを返り討ちにしていたのは……

 

「拙者ですぞ」


「あ、あんた何考えてるのよ! なに魔王の味方してんのよ! 自分が何をやったのか分かってるの!」


「そんな話を聞いたら生かしておくわけにはいかないな。魔王と一緒に切り刻んでくれる」


 ニート勇者にじりじりと寄っていく私とナリア。

 

 その時、ニート勇者の後ろから、この世のものとは思えない可愛い声が聞こえてきた。

 

 

「あ、ニートさんのお友達ですか? わあ、嬉しいな。狭いですけど、どうぞ入ってください!」

 

「えっ? あ、すいません。お邪魔します」

 

 男の子に言われるまま小屋の中に入る。きちんと整頓された部屋は住人の性格が出ていて好感が持てる。

 

「一応、毎日掃除はしているので、その辺りに座っていただいても大丈夫です」

 

 そう言ってお茶を入れてくれる魔王。伏し目がちな表情から優しい性格が伺える。とても魔王とは思えない。

 というか、可愛い! 可愛いぞ魔王!

 

「どうぞ。お口に合えばいいですけど…」

 

 魔王の入れてくれたお茶をいただくと、これがまた美味しい。もうなんと言ったらいいか分からない。ナリアもどうしていいか分からないようだ。というか、魔王を見て顔を赤らめている。私もナリアも魔王を見て顔がにやける。こりゃだめだ。とても魔王を倒せる雰囲気じゃない。これが魔王の作戦なら私たちの完敗だ。

 

「それで、あの…僕を倒しにきたんですよね?」

 

 魔王じゃなければ本当に普通の可愛い男の子だ。その子から「僕を殺すの?」みたいなことを言われて心が痛む。というか頼まれてきただけで、私は別に摩王を倒したいわけじゃない。ナリアに頼まれただけなんだ。

 

「えっ? い、いや、私だって魔王を倒したいなんて思ってないわよ全然。一緒に魔王を倒しに行こうってこいつがね…」

 

「言ってないぞ!! こんな可愛い子を倒すなんてどこのどいつが言った!!」

 

 

「「 お前だよ!!」」

 

 

 突然やってきた魔王討伐パーティーの内輪もめを見ながら魔王の男の子は台所でご飯の用意をしていた。

 

「ふだんはひとりでご飯を食べているのでみんなでご飯なんて嬉しくて…」

 

 男の子はそう言って甲斐甲斐しく食器を並べていく。

 

「ひとりだと寂しくてやらないんですけど、今日はお鍋にしちゃいました!」

 

 なにこの可愛い子。嫁にしたい。連れて帰りたい。24時間愛でていたい!

 

「「 ねえ!名前はなんて言うの?」」

 

 ナリアと私が声を揃えて聞く。

 

「一応魔王って名乗ってますけど、本当はホロって名前なんです。魔王って言っても力もないし、勇者が来たら殺される役目なんですよ僕」

 

 ホロ君の話を聞いてナリアが叫ぶ。

 

「ちょっと待て、なんだその可哀想な役目は。こんな可愛い男の子を殺すなんてどうかしてるぞ!」

 

「それって生贄みたいじゃない!! なんて酷い! こんな可愛い子を殺そうとしている連中の顔が見たいわ!!」

 

「だからそれお前たちですぞ!」

 

 

 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇

 

 

「お味どうですか?」

 

 ホロが私の顔をじっと見ながら聞いてくる。キラキラした瞳でまっすぐに見つめられるとドキッとする。

 

「美味しいよ、すごく美味しい。ホロは料理上手ね」

 

「えへへ。よかったです」

 

 …ええ子やなほんまに、思わず関西弁になるわ……

 

「最後にみなさんと美味しい鍋を囲めて、もう思い残すことなんてないです。食べ終わったら殺してもらっていいですよ!」

 

「「「 い、いや、殺すなんてことしないから絶対!!」」」

 

「で、でも、いいんですか? 僕を殺さないと帰れないんじゃ?」

 

「いいのよ! 魔王討伐なんて街おこしみたいなもんだから! そもそも魔王がいたからって、困った記憶なんてないんだから!」

 

「そうだぞ! 可愛い男の子は世界遺産みたいなもんだからな! 女のことしか頭にない勇者のことなんざどうでもいいわ!」

 

「「 勇者よりもホロの方が大事よ!!」」

 

 私たちはすっかりホロの味方になっていた。これ、もし他の勇者がホロを殺しにきたら返り討ちにするな間違いなく。

 

「勇者が来たら聖剣で殺してやるわ!」


「勇者なんてどうせクズだしな」

 

 そんな女性陣を見てホロがちょっと引いている。怖がられてるぞ、おい。

 

「僕が逃げると他の子が魔王にされちゃうし…」

 

 自分のことより他の子の心配なの? どこまで良い子なのよ。

 

「じゃあ、こうしましょう。ホロは魔王のままでいいわ。私がホロを守る。さしあたってホロと私が婚約するのはどうかしら?」


「「 何考えてんだお前は!! 」」


 

 結局、私たち三人は、王国に戻らずホロと一緒に暮らすことになった。

 たまにやってくる勇者はニートが返り討ちにしてくれる。しかも最近は、何だかニートとナリアの仲も怪しくなってきた。もしかしたら、ニートは近いうちに本物の抱き枕を抱けるかもしれない。

 

 そういう私と言えば、ホロが大きくなるその日まで、すこしでも若さを保つため日夜努力を続けている。

 今となっては婚約解消してくれた殿下には感謝しかない。

 

 

「ソミア、もうちょっと待っててね。すぐに追いつくから。同じ背になったら、お姫様抱っこして、プロポーズをするからね」

 

 

 


 

  

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ナリアはニートでいいんだ? [一言] 日本人無双! 面白かったです!
[良い点] ネーミングセンスにニヤリとしました。 そりゃコ◯ダなら味噌よりシロノ◯ールがお似合いでしょうw
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