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初めての王都は圧倒された。人も多いし活気があって、お店もどこに入ったらいいのか分からないくらいたくさん並んでいた。
1人で来ていたら、きっと目的地にたどり着けなかっただろう……本当、3人に感謝だ。
「あの、一応この通りが貴族街になっていて、みなさんはこの辺りでオーダーされているんだと思います……」
「昨日も言った通り、とりあえず平民街でお願い。慣れた頃にでも覗いてみるわ。あと、そろそろ敬語もやめて欲しいな」
「ええ!でもディアナさんは伯爵令嬢ですし……ねぇ……」
ドリーは他の2人に助けを求めるように視線を動かした。悲しいことにアンナとサブリナもドリーに同意して頷いた……
「そう……うちは伯爵と言っても北の端にある田舎の領で、お母様も平民だからか貴族も平民も無かったんだよね……だからそんな風に敬語で話されると、ちょっと寂しくて……」
とディアナが寂しそうに笑うと、3人はあわてて前言撤回した。
「いえ、ディアナさんがいいなら私達は全然……ねえ?」
「う、うん、そうそう、敬語やめるよ!ディアナって呼んでいいの?」
「本当?嬉しい!3人ともありがとう!」
ディアナの太陽のような笑顔に、3人だけでなく通行人もみんなが見とれた。
だが、祖母の厳しい教育のお陰で滲み出る高貴なオーラに、平民街の人々は誰も話しかけることが出来なかった……
そうこうしているうちに、目的の店舗に到着した。普段着用のワンピース等を売っている可愛らしい外観のお店だった。
「ここ、平民の女子に大人気のお店なのよ。ディアナは美人だからなんでも似合っていいな~。あ、このピンクなんてどう?」
「こっちの水色も可愛いよ!」
「いや、それよりもこっちの白が似合いそう!」
女子3人のパワーは凄まじく、ディアナは圧倒された。こんなお店に入るのは初めてで、凄い数の色とりどりの洋服に何をどう選んでいいのか全くわからなかった。
とりあえず3人が持ってきてくれたワンピースを鏡の前で当ててみるが、ちょっと可愛すぎじゃなかろうか?恥ずかしい……けど、みんな着てるし……と勇気を出して水色のワンピースを試着することにした。
「きゃー、やっぱり似合う!」
「素敵素敵!」
「こっちはどう?」
試着室から出ると、何故か3人が持っている服が増えていた……引きつりつつも見せてもらったが、どれも明るい色で華やかな物ばかりだった。
「あの、もう少し地味なのがいいわ……紺とか茶とか……」
「え~、紺はいいけど茶はダメよ!それに美人なんだから明るい色が可愛いよ?」
「そうそう、せっかく美人なんだから可愛くしないと!」
結局3人に押し切られて、水色、ピンク、若草色、紺の4着と、普段使いに良さそうな靴を2足買った。