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読み通り、微弱聖女は最初から伯爵子息狙いでベタベタしだした。知らなかったのだが、以前アランもかなりしつこくされて怒鳴り付けてしまったらしい。それ以来全く近付いてこなくなったのだとか……
ユリアの話では、伯爵子息はラブラブの婚約者がいるらしく、かなり迷惑そうだ……そう言えば取り巻き達はみんな婚約者や恋人はいなかったんだろうか?
「それなら大丈夫よ。ほら、女子はだいたいみんな最初はウィルで今はルーカス殿下について回ってるじゃない?だから今年は極端にカップルが少ないのよね」
な、なるほど~。確かに1年だとほとんどカップルが誕生していない気が……まだ1学期だしそんなものかと思ってた。
とりあえずディアナ、ウィル、オーガスト、サブリナに何故かアランの5人でユリアを囲むようにして歩いた。
微弱聖女は取り巻きがいなくてちやほやされずに不満そうだが、ウィルとアランに怒鳴られた経験からか、怖くて近付けないようだ。
「きゃあ、虫!こわ~い」
なんてやってる全てが嘘臭い。それに対してサブリナ姉さんが
「平民の癖に虫が怖いとかバカか」
「あんなわざとらしいのに引っ掛かるとか……貴族男子もバカばっかりね」
なんてぶつぶつ呟いてて黒いオーラが……ひい!
平民組は男女限らず彼女のせいで私達までバカだと思われると言って、微弱聖女の事を嫌っている。
微弱聖女への鬱憤を、何故か他の平民生徒に当たり散らして発散させる貴族子女まで出てきたそうだ。
同じ平民なんだからどうにかしなさいと言われても……正直あれはどうにもできないし、関わりたくないのが本音だろう。
一応そう言われたからと忠告したら、今度は取り巻き達に虐めるなと責められると言う理不尽……おかげで平民組はみんな図書室へ逃げて来るようになった。
夏休みが明けたら、少しはましになっているといいんだけど……
そんなこんなで目標の半分を過ぎた辺りでそれは突然現れた!
“ぐおおおおおおおおおおー”
「きゃー!魔獣め!聖なる力で浄化してや「待って!待って待って!魔獣じゃないわ!単なるヤッホーベアーよ!」」
先頭を歩いていた微弱聖女が、ヤッホーベアーに驚いて攻撃しようとしたので、ディアナは慌てて止めに入った!
「は?ちょっと何処からどう見ても魔獣でしょ!そこをどきなさいよ!」
「ヤッホーベアー、落ち着いて……あら、あなた赤ちゃんのお母さんじゃない?赤ちゃんどうしたの?」
怒り狂っていたヤッホーベアーはディアナの臭いを嗅いで少し冷静になったようだ。今朝もふりたおしたシンディとキャシーの臭いがついていたのだろう。
“がう、がるるるる、がうがうがう”
「ちょ、ちょっと待ってね?頭を触ってもいいかしら?……ありがとう」
そう言ってディアナはヤッホーベアーのおでこと自分のおでこをくっつけた。