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「ユリア様、やっと見つけました……そちらの美しいご令嬢はどなたですか?ウィリアム殿下の婚約者でしょうか?」
「ル、ルーカス殿下、ごきげんよう……こちらはディアナ=アトウッド伯爵令嬢ですわ。ディアナ様、こちらはロドリゲス王国第3王子のルーカス=ロドリゲス殿下よ」
「お初にお目にかかります、ディアナ=アトウッドでございます。この様な見苦しい服装で申し訳ありません」
なんと、隣国の王子様ですか……こんな泥だらけの服で挨拶してよかったのかな?まぁもう会うこともないだろうしいいか。
「いやいや、美しい女性が男装で泥だらけと言うのも……中々そそられていいですよ。ふふふ、来週から高等学園に留学するために来ました。よろしくお願いします」
ぞ、ぞぞぞぞぞー!一気に鳥肌が立ってしまった!ウィルが庇うように前に出てくれて、視界から変態王子を消してくれたのでほっとした。
「おやおや、お熱いことで……では、私はユリア殿下に庭園でも案内して貰いましょうか。ユリア殿下、よろしいですか?」
「え、ええ、喜んで……」
かなり引きつった表情でユリア様はルーカス殿下と去っていった……ユリア様……大丈夫かな?
「ちっ!いいか、あいつには絶対近付くなよ。ロドリゲス王国は聖女の力が欲しいらしくてな、娘である姉上を狙っているんだ。
だが、タイミング良く聖女の力が使えると言う平民が見つかったんだ。まぁ母上と比べたら微々たる物だったがな……
その平民も来週から入学することになっている。俺ともディアナとも違うクラスだが、1年だ。
この前会ったが……平民にしても常識が無さ過ぎるうるさい女だった。危うく世話係にされそうになったが、全力で断った。
上手く2人がくっつけばいいんだがな……はぁ、とにかくあいつにだけは気を付けろよ?」
「わかった……と言うか全力でお近づきになりたくないわ。ユリア様大丈夫かな?さっきは隠してくれてありがとう」
「あ、姉上はいつも以上に護衛を増やしているから大丈夫だ!」
ちょっと怖くて潤んでしまった瞳で見上げながらウィルにお礼を言うと、何やら真っ赤になってしまった。
「とにかくあいつがまた来る前に部屋に戻るぞ!泥だらけだし、風呂に入ってから寮に帰ろう」
確かに……こんな泥だらけであの綺麗な馬車に乗るのもな……でもお城でお風呂に入らせてもらってもいいんだろうか?
悩んだところで結果は同じで、客間のお風呂の用意がしてあった。お世話しようとするメイドさん達を丁寧に断り、やっと1人になれてほっと一息ついた……
でも、長々入っているのも申し訳無いので急いで洗って脱衣室に行くと、何故か用意していた制服が無くなっていた。
どうしようかと、とりあえずタオルを巻いてドアを少し開けて部屋を覗いて激しく後悔した……
「きゃ~、ディアナちゃん早かったのね!さあさあ、早く出てきて出てきて!」