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おそらく食事は美味しかったんだと思う。だが終始王妃様があの調子で、とてもじゃないが食べた気がしなかった。
「すまない、母はいつもあの調子で……さすがに晩餐会や夜会では大人しくしているのだが、身内だけだとどうしてもな……
それにしても、ディアナ嬢は恐ろしく母に気に入られたようだな」
「そうなんですか?……何がそんなに気に入ったのでしょうね……ちょっと、休憩してもいいですか?」
勉強した部屋に戻り、ついついソファでぐったりしてしまった。ウィリアムも疲れたのか隣に腰掛けた。
「なんて言うか……ディアナ嬢は母の好みのど真ん中なんだよな……美しく聡明で、完璧な淑女なのに男装をして強いと言う……まるで物語の主人公だろう?
ちなみにあの紺色集団の様な女性が1番嫌いらしい」
「それいったい誰の事ですか?美化され過ぎてて怖いです」
「そうでもないと思うけどな……くっく」
はあ……もう疲れた……帰りたいよ~
「ディアナ嬢……今さらだがディアナと呼んでいいか?俺の事はウィルと呼んでくれ」
「え?ウィルですか?……そんな事したら私、殺されてしまいますし……」
「ではこうして2人だけの時ならいいだろう?毎週勉強会で会うんだ、いつまでもウィリアム殿下じゃちょっと寂しいしな。敬語もお互い止めよう」
確かに……まぁ2人の時だけならいいのかな?
「わかりま……わかったわ、ウィル。さあ、そろそろ落ち着いたから手合わせに行きましょう」
「あ、敬語」
「い、行こう?も~、いきなりだと難しい」
「あっはっは、ごめんごめん、さあ行こうか」
そう言って手を差し出され、訓練場までまたエスコートされ連れて行って貰った。訓練場では騎士達が訓練していたが、話を通していたらしく、端の方を使わせて貰うことになった。
各々準備運動をして、騎士の1人が審判をしてくれることになった。
結果は……やはりきちんとした剣の訓練を受けているウィルに1度も勝てなかった。力でも押し負けてしまい、ディアナは悔しくて仕方が無かった。
次は弓の勝負だ!と、無理矢理得意の弓の勝負を吹っ掛け、無事勝つことが出来た。
今度はウィルが物凄く悔しがり、それが面白くて2人で大笑いして、その日の勝負は終了となった。
騎士達にまた来てくださいと見送られ、訓練場を後にした。
「あ~、それにしてもあんなに弓が上手いとはな!剣だけでも勝ててよかったよ」
「本当、悔しい!来週から騎士部に入って剣を習おうかしら……」
「いや、まじこれ以上強くならなくていいから!剣まで負けたら立ち直れねーし。
それより今度、約束してた狩りに行こうぜ!」
「あ、それいいね!ちっとも狩りに行ってないから腕が鈍っちゃって……シンディもキャシーも美味しいお肉が食べたいってうるさいのよね。ふふふ」
「はは、馬やウサギの言葉までわかんのかよ?」
「ええ、契約してるからわかるわよ?」
「……え?」