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入学式から1ヶ月ちょっと経った5月半ば、今後毎月1回行われるダンスの第1回目の授業の日となった。
ダンスの授業は貴族だけで、平民の子達はテストの為の特別授業が行われるらしい。
過去の平民生徒達の強い希望によって、そうなったそうだ。
まぁ確かに貴族同士の婚姻が基本なら、平民生徒はいても意味が無いし“無駄な時間を過ごすくらいなら勉強したい!“ってなったんだろうな。
必然的にドリー達が一緒じゃないので、ディアナは心細かった。
ダンスの授業では、婚約者や恋人同士は2人で組んで、フリーの生徒達は毎回くじでパートナーが決まるそうだ。
過去に色々あったらしく、引いたその場で教師が数字を確認し、紙に書いていくので交換等は出来ないようになっていた。
どうしても人数が合わないので、足り無い分は先生達がパートナーをつとめる事になるらしい。所謂ハズレと言うやつだ。
ディアナはジークフリードが相手だといいなと思っていたが、いざその場に行ってみると予想以上にフリーの生徒が多く、確率が低いなとがっくりした。
レディファーストで女子が先にくじを引くらしい。引いたら順番に並び、男子がくじを引くのを待つようだ。
1人、また1人と男子生徒が並ぶ女子の隣に来ていた。ジークフリードの番になったので、じっと見ていると、別の子の所に行ってしまった……
残念に思いながらもつい観察していると、相手は大人しそうな女の子だったが、様子がどうもおかしい。顔色がどんどん悪くなり、フラついて後ろの女子に支えられていた。
教師がかけつけ、どうやら保健室に向かうようだ……ジークフリードはくじの引きなおしかな?と思ったが、どうやら見学に回るらしい……女子生徒の方が人数が多くて男性の教師が入るのにおかしくないか?
「あ~あ、ナタリー可哀想に。気持ち悪くて誰も踊りたくないんだし、はじめから参加しないで欲しいよね」
「本当、学園も辞めちゃえばいいのにね」
何やら信じられない会話が聞こえてきた……これはあれか?ジークフリードの事を言っているのか?そう言えば初めて会話したとき、気持ち悪く無いのかと聞かれた気がする……
もしかして、いつも1人だったのは、こう言う事だったんだろうか?凄く胸がモヤモヤしたが、どうすればいいのかディアナにはわからなかった……
ジークフリードは何も悪いことをしていないのに……だけど、いくらそう言う時代だったからと言って、親子間で子作りをしたと言うことに嫌悪感を抱く人達が一定数いると言うことは仕方無いのかもしれない……
でもだからってジークフリードがこんな扱いを受けることは理解出来なかった。
「くだらん陰口は止めろ!気分が悪い!」