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満腹になってご機嫌で午後の授業を受け、放課後またジークフリードに会えないかな~と図書室へ向かうことにした。
「あ、お前さっきめちゃくちゃ食ってたやつじゃねーか?」
「……?私ですか?普通だと思いますよ?」
「あっはは、あれで普通って、俺より食ってたぞ?」
「はぁ……それで何かご用ですか?」
「ん?いや別に。ただ面白いやつがいるなーと思って。普段からあんなに食うのか?」
「そうですね~、実家にいる頃はあのくらいが普通でしたね。ここの食事はおしゃれ過ぎて量も味付けも物足りなくて。
あ、そうだ!王都でガッツリ系の食堂をご存知じゃありませんか?探しに行きたいんですけど、友人に危ないからダメだって言われて……出来れば安全で女1人でも行けるようなお店がいいんですけど……」
「あ~、あるにはあるけど女1人ではちょっとやめた方がいいかもしれねーなー。次の休みにでも連れてってやろうか?」
「う~ん……ありがたいんですけど、やめておきます。知らない人について行くと友人達に怒られますので」
「いや、同級生だろ!知らない人じゃ無いだろ!ああ、自己紹介がまだだったな。
俺はアラン=コリンズだ。ディアナ=アトウッド伯爵令嬢だろ?よろしくな。ディアナって呼んでいいか?俺の事はアランと呼んでくれ。これでもう友達だな」
あれ~?いつの間にか友達になったらしい。でも、この人あれだよね……昨日ジークフリード様が言ってた赤い髪の子爵家次男だよね?こんな偶然もあるんだな~。
とりあえずドリー達に報告しなきゃ。遅くなっちゃったし、今日は図書室は諦めようかな……チラリと図書室を見上げると、見知った水色が見えた気がした。
やっぱり少しだけでも行こうと思い、図書室へ急いだ。階段で運良く図書室から出てきたジークフリードに会ったので嬉しくて笑顔で声をかける。
「ジークフリード様!ちょうど会いに行こうとしてたんで、お会いできてよかったです」
「何かご用ですか?」
「いえ、ジークフリード様に会いたかっただけです!」
ぐはっ!っとむせて?ジークフリードは壁に寄りかかり、右手で顔を覆ってしまった。
具合でも悪くなったのかな?心配になって思わずかけより、1段下から顔をのぞきこんだ。顔が赤いみたいだけど、熱でもあるのかな?
確認しようと手の上からなんとかおでこを触ってみた。
「大丈夫ですか?熱があるんじゃないですか?」
触られてビックリしたのか、勢いよく右手が外され、琥珀色の綺麗な瞳と目が合った。昨日よりもさらに至近距離で見ると、琥珀の中に少しシルバーが混じったような不思議な色彩だった。
それにしても顔が赤い……振り払われないのをいいことに、おでこから頬っぺた、首筋に手を這わせて熱を確認した。うん、やっぱり熱があるみたいだ。
「ジークフリード様、熱があるみたいです。悪化したら大変なので、保健室に行きましょう!」
熱のせいなのか固まったまま動かないので、ジークフリードの手を握り、誘導するように少し引いてみた。