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すぐにわかったことだが、ヒックス子爵令息は嫡男ですでに13位のメアリー伯爵令嬢と婚約していた。残念
本命のローリング侯爵令息は、なんと2人兄弟の次男だった。水色の髪に琥珀色の瞳の恐ろしく美形な人だった。
これは確実に競争率が高いと思ったのだが、不思議なことに男子も女子も彼のまわりには誰もいなかった。
いつ見ても1人なので、話しかけるチャンスはいくらでもあるが、ディアナはこう言うことに慣れておらず、どう話しかければいいのか悶々と悩んでいた。
見かねたサブリナにすすめられて、図書室で恋愛小説なるものを借りに行くことにした。
みんなで行かないか聞いてみたが、次のテストでは打倒ディアナの為に勉強するからと断られてしまい、1人寂しく図書室に行くと思ったよりもたくさんの本があって、どれから読もうかとワクワクした。
案内図を見てとりあえず恋愛コーナーに行ってみたが、こっぱずかしいタイトルばかりで、とてもじゃないが手に取ることが出来なかった……
仕方が無いのでうろうろしていると、外国語コーナーがあった。アトウッド伯爵領は北の端で、隣のノリス王国と隣接してる。
その為、ノリス語は祖母に叩き込まれていたのでなんなく読むことが出来る。ついでとばかりに周辺諸国の主要な言語は習ったので、ディアナは14歳にして5ヶ国語が話せ、3ヶ国語は読み書きも出来るのだった。
ノリス語の本だったらぱっと見恋愛小説だとばれないだろうと思い、近くに誰もいないことを確認して1冊の本を手に取った。
どうやら騎士と王女の身分違いの恋の話のようだ……いけないと思えば思うほど2人の恋は燃え上がり……う~ん、難しい。
また別の本を取ると、今度は王子がお忍びで街を散策中に出会った平民の少女と恋に落ちて……と言うものらしい。
また別の本では恋した相手が父親の後妻でって……いったい誰が仕入れているんだ!?こんな本、学生に読ませていいとは思えないのだが……
“とりあえず禁断の恋ってのが燃えるのかしら?でもジークフリード様と私じゃ禁断でも何でも無いわよね……もっと参考になるような普通の恋愛の本は無いのかしら?“
ディアナは知らなかったが、普通の恋愛よりも禁断の恋の方が民衆受けがいいのだ。なので必然的に禁断の恋の物語が多くなってしまうのだった。
ちなみに、恋愛小説の仕入れ担当は王妃様だった。完全に趣味で選別していたりする……
次に手に取った本は反発し合う男女だが、気付けばお互い恋に落ちていて……すったもんだありながら最後はハッピーエンドと言うものだった。
「ますます解らないわ……なんで嫌いな人を好きになるのかしら?はぁ……恋愛って訳がわからないものなのね……」