6.集団対少数
無謀にもクリストフの先制攻撃を皮切りに、ゴブリンの群れとその統率者であるオーガの戦闘が開始された。
ゴブリンは少数ならばただの雑魚ではあるが、集団ともなると厄介この上ない。
戦っているうちから、仲間をよんでくるし、その呼びかけに答えるのは、ゴブリンだけとも限らない。
ゴブリンを主食にしている、飛竜などの大型の魔物に見つかると、食べようとして寄ってくる。
大型の魔物は、1体でも危険だ。
弓で射ったところで、堅い皮膚を貫通するかもわからないし、少し動いただけで人間なんて軽くふく飛ばされてしまう。見かけたら逃げるに限る。
その為、なるべく時間を掛けずに討伐する必要があるが、俺達チームは4人で相手は多数。
普通の思考回路をもった冒険者ならば、一目散に逃げる状況だ。
「ウゥゥォオオオオ!!!」
ガッツが雄たけびを上げ、魔物の注目を集める。
そして、その意図どおりゴブリンの群れが殺到する。
半歩右足を引き、大斧を握りなおすと、そのまま力の限り横なぎに振り切る。
切れ味よりも、重さと粉砕することを目的とした武器の為、それに触れたゴブリンは、骨を砕かれながら、吹き飛ばされていく。
4体のゴブリンを巻き込み、絶命したか最低でも戦闘不能に陥った。
ロイは、ガッツの近くにいて、討ち漏らしが無いように確実に首を突いている。
「クリストフ!」
「了解!」
ロイの合図でクリストフが持っている矢をすべて、真上近くに射っていく。
放物線を描き、地面に向かって数十本の矢が落ちていく、物理法則にしたがい加速された矢が、集団を形成しているゴブリンを襲うと、何体かは頭に当たり絶命した。
矢がなくなったクリストフは、ダガーを出し、近くのゴブリンを弓で殴打しつつ、ダガーで致命の一撃を与えていく。
「数を減らしてくる・・・」
俺がロイにそう告げ、前に出る。
「ジェフ!これももってけ!」
そういったロイが、腰につけていた剣を鞘ごと投げて渡してきた。
それを受け取り、雑に引き抜いて鞘は捨てる。
そしてロイから受け取った剣を左手でもち、自分の剣を右手で腰から引き抜いた。
二刀流、諸手に片手武器をそれぞれ持ち、戦う方法。
現代日本にいる頃は、あこがれた戦闘スタイルではあるが、並みの筋力では、剣などまともに振れない。
ロイの剣も、俺の剣と同じ鋼の剣で手入れはしっかりされている。
少し前に立ち寄った町の鍛冶屋で、一緒に買った物で、そこそこの業物ではあるが、俺達の財布で買える武器などたかがしれている。
俺は二本の剣を構えつつ、ゴブリンの群れに突っ込んだ。
右で刺し、左で切り抜く。
人型に近い魔物は、大抵臓器の配置も変わらない為、急所も人間とほぼ同じ位置にある。
その為、完全に切れなくても、重要な部分を深く傷つければいい。
俺は周りに何十体もいるゴブリンを、瞬時の判断で次々に切り伏せていく。
後方からは、ガッツとロイがゴブリンどもを蹴散らしながら、こちらの方向に進んでくる。
囲まれてはいるものの、後ろ側は二人のおかげで手薄になっており、大体3方向に気を張ればいい状態になってきた。
「ウゥゥォオオオオ!!!」
ガッツが再び雄たけびを上げた。どうやらロイと二人で俺に追いついたらしい。
それと同時にクリストフは、気配を消しながら森の方向へ回りこんでいった。
後方で村人らしきものを担いでいたゴブリンを狙いに行ったのだろう。
「このままこちらに注意を引き付ける!」
「派手に行くのである!」
ロイが手短に方針を宣言し、ガッツが同意する。
このあたりのコンビネーションは流石に慣れている。
「ジェフ!アレはやれるか?」
「わかった。少し離れるぞ!」
「任せる!」
アレとはもちろんオーガの事だ。完全に指揮官の様子で、何やら叫びゴブリンに指示をだしている様子だ。
俺達の周囲にいるゴブリンたちは、ガッツの雄たけびの効果もあり、すっかり怯えてしまっている。
あとはゴブリンどもを指揮しているヤツを倒せれば、逃げていくだろうという判断だ。
俺は、ゴブリンの群れの中心にいるオーガに向かって突っ込んでいき、そのまま右手の剣で一撃する。
ガキッン!という金属音と共に、火花が少し出た。
・・・このオーガ人間と戦いなれてやがる。
俺の放った一撃を、オーガは持っていた大剣で綺麗に受け止めていた。
それを見て、素早く距離をとり、ゴブリンの集団から抜け出し徐々に離れていく。
進路の邪魔になるゴブリンを左手の剣で切りつけ、絶命させた。
「これじゃぁ、二刀流じゃなくて、二本の剣を使ってるだけだな・・・」
爺さんとの訓練で、少しだけならった事もあり、久々にやってみた二刀流だがその動きはぎこちない。
右手の剣を見ると先ほどの打ち合いで刃がかけてしまっていた。
ゴブリンがいないところまで来たので、右手の剣を逆手に持ち直し、振り返るとそのままオーガに向かって投擲した。
不意を突かれたのか俺の狙い通りに、オーガの左肩に突き刺さり、怒った様子でこちらに突進してきた。
左手の剣を両手で持ち直し、いつも通り少し斜めに構えなおす。
オーガは、その右手に掴んだ大剣を力任せに振り回してきた。
剣術とまでは言わないが、確実に急所を狙っている。剣で受けても、折られてしまう危険があるため、ひたすら回避していた。
縦、横、縦と思ったよりも規則ただしいリズムで振り回してくる。
俺は、そこから次の攻撃を予測し、前方に向かって沈み込みながら進んだ。
俺の後頭部すれすれを大剣がかすめていく。
オーガの懐に潜り込み、その大きな腹を壁に見立てて一気に蹴りあがった。
そのままジャンプし、オーガの真上を飛び越え、背後に着地した。
オーガに振り向くと、向こうもこちらに向き直った。
その瞬間、オーガの首から上がぼとりと落ち、その大柄な体は地面に正面から突っ伏した。
「やったぞ!!」
剣と共に、右手を突き上げる。
「オッシャーーー」
ガッツが叫びながら大斧を横なぎにし、ゴブリンを吹き飛ばす。
徐々に、状況を理解したゴブリン達が四方八方へ逃げていく。
「・・・なんとか・・・生き残ったな・・・」
「やはり、ジェフは強いのである。」
「もう1体いれば、俺も戦えたのに・・・」
ロイが少し不満そうだった。ならなぜ俺に任せた・・・。
「そういいつつ、ロイも限界が近いのである。」
「おーーい!」
クリストフの入っていった森の方向へも何体かゴブリンがいってしまったので、少し心配したが彼は、どうやら満足した様子で出てきた。彼の目的の人はどうやら生きていたらしい。
「そろそろ座ってもいいよな?」
「まぁ、大丈夫だろう。」
俺の言葉にロイが同意してくれたので、その場で座り込む。
「こちらも、限界であるが・・・無事な人がいてよかったのである。」
ガッツもきつそうだ。方で息をしながら、座り込んでしまった。
「やったぜーー!!」
クリストフ一人が元気そうで、こちらに駆け寄ってくる。
彼が浮かべる満面の笑みがうざかった。