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無刀の剣聖  作者: ところてん
43/72

43.魔眼使いの剣術

「ヒュー!カッコイイー!!物語の英雄みたいだぁ!」


ニールは俺の行動を見て、そう囃し立てた。

それを無視して、首だけで振り返ると、連れて来たエルフに聞く。


「アーネット、そいつの治療できるか?」

「ええ?!・・・できない事は無いけど、苦手なのよね。」

「・・・死ななければいい・・・頼む。」

「わかったわ・・・。」


俺の声から焦りを感じたのか、探していた人物である事が分かった為か、アーネットは、座り込んでしまっているチェシーを抱えるようにして、魔法での治療を始めてくれた。


「英雄気どりか?・・・魔族にも人間にも成れない半端者が!」


突き飛ばされていたウィルは、体制を立て直すと罵声を浴びせて来た。


「・・・遅くなったようだな・・急ぎはしたが。」

「ええ・・そうね、でも十分よ。」


完全に無視された、3人は怒り始めた。


「ちょっと!こっち見もしないって・・舐めてるの?!」

「おいおいおい!新人君は、先輩に冷たくしちゃ駄目だよ?」

「・・・どうやら、半端者には状況が理解できていないらしいな!」


なにやら喚いているが、あっちよりもこっちの方が重要だ。


「動けそうなら、少し離れててくれ。」

「・・・ええ、わかったわ。」

「私が観とくから!」


俺の頼みというか、注意にチェシーとアーネットは素直に従ってくれた。


「おいおい、完全に無視か?!先輩、怒っちゃうよ?」

「君は、カッコいいから囲ってあげようかと思ったけど・・・いらないわね。」

「・・・私の前に立ったんだ・・覚悟はしてもらう!」


ニールとジェニスは、口調の割には、動かない様子だった。

口だけだして、ここはウィルに任せる事にでもしているのだろうか。


ウィルは、戦意を増し力強く魔法剣の柄を握ると、中段に構えた。

怒りは、あっても油断はしていない。


「お前らが、どうしてこうしたのかなんて、興味ないが・・・」


俺は、3人に向けるつもりで向き直って宣言する。


「・・・俺を敵にして生き残れると思わないことだ。」

「ヒャハハハ!この新人!やっぱ面白っ!」

「君が、ウィルに勝てるはずないわよ!」


俺の言葉に、奥で見ている2人が笑っている。


「・・・冗談でも、面白くは無いな・・・魔眼も満足に使えないお前に、いったい何ができる?」


ウィルは、構えた姿勢を崩さずに、俺に問いかけた。


ガキィィィイイイイン!!!


金色の刀身と、碧い刀身が再び衝突し、金属音を響かせる。


「・・・くっ、卑怯者がっ!」


ウィルは、不意を突かれた為か、金色の一閃をただ受けるしかできなかった。


「・・・。」


ウィルの言葉には答えず、隙だらけの構えを視て、警戒していないであろう角度から、斬りかかる。

金色の刀身は、その攻撃の速さを示すように、空中に光の線を描いていた。

連撃となった金色の線は、周囲の者には、漂い消える、芸術にも見えた。


金色の刀身が、ウィルに迫る度、碧い刀身が間に出現し、その進行を阻む。

連撃すべてを、ウィルは適切な角度で受けている。


・・・おかしい・・・隙だらけなのにあたらない。


ここまで連続して急所を狙い、生きている魔物以外の生物は始めてだった。

これ以上繰り出しても同じかと思い、バックステップして距離を取った。


「はぁっ・・はぁっ・・・」


ウィルは肩で息をしていた。

どうやら今の連撃で、少し消耗したらしい。


・・・剣が特別上手いとも思えないこいつが、なんで防げる?・・・魔法か?。


「ずいぶん、便利な魔法が使えるんだな・・・。」

「・・・くっ・・魔眼も使えない半端者と思っていたが・・・やるようだ。」

「・・・冗談なら寒いぞ?」


ウィルにとっては、太々しくも見えるその態度は、彼の怒りをさらに買ったようだ。


「口の減らない小僧がっ!!」

「歳は、そんなに変わらないだろっ・・・」


再度、光を放つ魔法剣は、互いをぶつけ合った。

衝突する度、互いに光が増していき、火花が散っていく。


しかし、先程は俺が一方的に攻めていたが、今回はウィルも果敢に攻めてくる。

金と碧の光線は、せめぎあい、相手を翻弄するかのように広がっていく。


・・・隙だらけだし・・・首が良いか。


ウィルが、上段に掲げた碧い剣が振り下ろされる。

その一撃を狙い、カウンターを狙った金の一閃は、確かにウィルの首を捕らえていた。


確かにとらえていた剣筋に、彼の首は無く、耳を掠める程度となった。

俺は、何が起こったのか一瞬理解できずにいた。


その間に、迫った碧い切っ先が、俺の空いた胴目掛けて飛んできた。


ザシュッウ!


音を立てながら、左肩口から防具を容赦なく切り裂いていく。


「くっ!!・・・。」


幸い切っ先だけが皮を切り裂いたようで、何とか胴体は繋がっていた。

危険を察知し、すぐに距離を取ったが、着地の際に足が縺れ、膝をつく。


・・・何が起こった??・・・確かに首を落としたはずだ。


「ヒュー!さっすがウィルだぜ!」

「・・・いいわぁ、ゾクゾクする・・・。」


ニールとジェニスが、俺が斬られた事を見て、盛り上がっていた。


・・・一瞬だけやたらと早いのか?


「どうだ?小僧!!・・・これが魔眼の力の差だ!!」


今度は構えを解き、俺を見下ろしながら、勝ち誇ったようにウィルが吠えた。


「お前程度!俺の敵ではない!!」

「・・・相性の問題だけでは?」


続けて吠えるウィルに、木々の茂っている場所から、聞き覚えのある声がした。

その落ち着いた声の主は、すぐに姿を現した。


肉厚な身体、白髪にナイスミドルという形容が良く似合う。

その目は深紅に染まり、怪しい光を放っていた。


「・・・まさか、こんなものに私が騙されるとは・・・不覚です。」


ベールが手に持っていた、何かを俺とウィルの間に放り投げた。

ドサリと音を立てて転がったそれは、ウィルによく似た人間の頭部のようだった。


「ニール君の作品ですね・・・よくできている。」


少しすると、人間の頭部の形をしたそれは、サラサラと崩れていく。


「ヒャハハッ!今回のは傑作だったと自負してるぜ?!」


ニールは、崩れたそれとベールの方向を見ながら、立ち上がった。

同時にジェニスも身構えている。


「さて・・・ウィル君、君の天敵である私がここに居るわけだが・・・まだやるかね?」

「・・・くっ・・・。」


よほどウィルとベールの相性が悪いのか、勝ち誇っていた表情は一転し、苦虫を噛みつぶしたような顔になった。


「いいでしょう・・・ここは引きます・・・ベール殿を相手にするには、ここではもったいない。」


言いながら、ウィルは剣をしまった。

その瞬間を狙い、動こうとした俺だったが、足が言う事を聞かない。

しかも、目の前にベールの手の平が出て来た。


敵対した3人が集まると、足元に黒い水のような、粘り気のある液体が広がっていく。


「では・・・決着は、次の機会にしましょう。」


ウィルはそう言い残し、地面に広がるその黒い水の中に足からゆっくりと沈んでいく。

少しすると、頭まですっぽりと入ってしまった。

残りの2人も彼の後に続き、同じように沈んでいった。


目の前の敵がいなくなり、警戒が解けてしまった為か、俺の目の前は、急に暗転した。


倒れそうになったところを、近くにいたベールが支える。


「ジェフ殿!・・・いかん・・・傷が深いようだ。」


ベールの言葉を聞いたからか、治療を受けていたチェシーがエルフに言う。


「私は、もう大丈夫そうだから・・・彼をお願い。」

「・・・わかったわ。」


アーネットは、頷くとチェシーの身体から離れ、ジェフの身体に駆け寄った。

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