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無刀の剣聖  作者: ところてん
40/72

40.エルフの協力者

「・・・お前になんの利が?」

「アーネットよ。」

「は?・・・」

「名前!・・・いつまでもお前とか言われるのは、ごめんだわ。」


どうやら、このエルフの名前らしい。


・・・そんな事に拘るか?・・・ここで。


「・・・はいはい。・・・で、アーネットには、何の利もない気がするが?」

「あるわよ?・・貴方は、どうやら竜種を倒せるくらい強いし・・・私には今武器がない。」


確かに、武器なして一人なら、魔素が薄いとはいえ、森を抜けて町に行くにも結構な距離があるだろう。


・・・よくその状態で追いかけて来たもんだ。


「・・・どっかの町にでも連れてけと?」

「そ!この際、君をギルドに連れてくのは諦めるわ。」

「・・・あの蛇に言えばよかったのでは?」

「いやよ!だって蛇よ?!・・・考えられない!!」

「・・・そうかよ。」

「それに貴方には、武器を買って貰わないと!」

「・・・何故?」

「貴方が蛇を使って壊させたんじゃない!」

「・・・それは、お前があんなところで武器を捨てるのが悪いと思うんだが。」

「アーネット!!!」


エルフの女は、少し怒った顔をしていた。


「貴方は、ジェフでいいわね。」

「・・・名のった覚えはないが。」

「指名依頼と私の探索の魔法のおかげね!」


エッヘンとでも言いたいのか、手を腰あたりに当てて自慢げな顔をしてきた。


・・・魔法の精度は優秀らしいな。


「・・・名前が分かれば、探索の魔法とやらは使えるのか?」

「ええ、人探しなら名前と、容姿が少しわかれば大丈夫ね。」


・・・しかし便利なもんだな。


チェシーの詳しい位置は、向こう側についたら通信で聞こうかと思っていたが、森の中では要領を得ないだろう。

探索の魔法で、探せるならそれに越したことはない。


・・・エルフと揉めてるっぽいんだがなぁ。

向こうで揉めてる相手がエルフでも、こいつの魔法は使える・・・。


「・・・わかった・・・探しているのは、チェシーという紫の髪の女だ。」

「まかせて。」


アーネットは、畳まれていた紙を広げた。

どうやら、略図のようで大陸の真ん中あたり、山脈に近いところに青い点と赤い点が、灯っていた。


・・・世界地図っぽいな。

もう一つ陸地があるとは聞いた事がないが・・・。


少し経つと、灯っていた点が消え、もう一度赤い点が灯る。

すぐに、青い点が灯った。

山脈の向こう側、共和国の近くだろうか。


「案内はしてあげるから、ジェフは魔物をよろしく!」

「・・・わかった・・・全力で移動しても?」

「エルフを舐めない事ね!」


どうやら、移動速度には自信があるらしい。


・・・まぁ、すぐに追いついて来た事を考えると、当然か。


「いいだろう・・・だが、町に行くのがだいぶ後になっても知らないからな。」

「私が生きてれば問題ないわ。」

「・・・まぁいい・・・急いでるからな、行くぞ。」


一応、声を掛けてからまた、山脈に向かい全力で移動を開始した。


・・・自分の為なら、魔族でも利用するか・・・。

武器を捨てる馬鹿だと思っていたが、柔軟な思考らしい・・・。





キィイイイイイン!


かん高い音を立てながら迫る、魔力の矢をウィルは、必死にしのいでいた。

隊長と呼ばれていた者だけが、魔弓を持っていれば良かったのだが、実際には複数人が所持していた為、長距離から狙われている。


躱せるモノは、躱しているが、2、3本が一斉に来ると、1本位は相殺しなければ逃げ場もない。

今は、拳に魔力を纏め、強化して振動の魔法と併用する事で、どうにか相殺できている。


「・・・くっ・・・わかってはいたが・・・。」


最初の数名は、うまく距離を詰められたので、なんとかなったが、それ以降は、様子を見ていたのか、向こうが距離を詰めさせてくれない。

人数比もありジリ貧だ。


王国をたった8人で攻め落としたとはいえ、相手は魔法の使えない人間が多く弱かった。

基本的に奇襲だったので相手に準備させていなかった事も大きい。


キィイイイイイン!


また音がした。


今度は4本の魔力の矢が、同時にウィルに襲い掛かる。

射線を微妙ズラしており、相殺しないと避ける場所もなかった。


一旦、右にあった木の陰に寄る。


・・・貫通する事は解っている。


右手に魔力を溜める。

グローブは、また一段蒼い光が強くなった。


「オラァァアアアアアア!!!」


気合と共に、全力で右拳を繰り出した。

同時に振動の魔法で前方に縦波を発生させる。


大量の魔力を放出した為か、蒼く光った空気の波は、迫ってくる魔力の矢に直撃する。


ガキィイイイン!


金属同士が衝突したような音がしが、魔力の矢は空気の波など物ともせずに、そのまま直進してくる。

そのまま、射線上にあったウィルの拳に命中した。


グギャンンンンン!


再度の金属音。


魔力の矢は、一度は動きを止めたものの、ウィルの拳の上を抉り、そのまま伸びた右腕を削っていく。

そのまま、ウィルの後方に着弾した。


「ぐぅ!・・・。」


魔力により蒼く光を放っていた右拳はその光を失い、だらだらと鮮血が滴っている。


「まさか、ここまで使いこなしているとは・・・。」


大昔の戦争では、魔力を使った武器は、決まって魔族の武器と言われていた。

特に魔法剣は、その中でも悪名高い。


「・・・王国では見なかったがな・・・。」


キィイイイイイン!


ウィルが呟くのと同時に、またかん高い音を鳴らしながら、矢が迫る。

右腕の痛みで、回避など望めそうにない。


ウィルは、受け入れるかのように、両膝を地面につき、ただ迫る矢を茫然と眺めていた。

彼の目は、すでに光を失い、矢はあっという間に眼前に迫った。


地面を抉り、進む光の矢は、そのまま彼の身体など無かったように、削り取っていった。

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