28.仲間との再会
一度、全然違う内容で上げましたが、読んでいてテンションさがったので、書き直しました。
「で・・・王国を襲撃した魔族様が俺達に何の用だ?」
青白い光が収まると、ロイは目の前の白い外套を被った男に剣を向けた。
飛んできた場所は、どうやら最初に連れてこられた丘のようだ。
ガッツ、クリストフも同時に身構える。
「おいおい、助けてやったのに、冷たいなぁ・・・」
俺は、ロイに振り返る。
そして、目深に被っていた外套のフードを脱いだ。
「・・・久しぶりだな?」
「ああ・・・そうだな、ジェフ。」
コロシアムで向き合った事を思い出した。
どうやら今回は、後ろの2人も臨戦態勢だ。
「まだ・・・俺に勝てるつもりか?」
「・・・」
ロイは、答えなかった。
「・・・力の差があっても引けないのね。」
隣にいたチェシーがつぶやいた。
「お前達が、何の目的で俺達を助けるのかわからない・・・」
「・・・俺の為・・・かな?」
ロイの問に俺は、短く答えた。
「お前の為?・・・どうやら、本当に頭でもおかしくなったか?」
「昔のよしみってのもあるが、一番はやはり俺の為だ。」
・・・こいつらと戦う事になったとしても、トドメを刺すのは自分が良い。
それが、俺が決めた生き残るってことだと思うんだ・・・。
「・・・やはり、意味がわからないな・・・おかげで俺達も魔族扱いだ。」
「魔族って何だよ?」
「お前達のことだろ?」
「命を助けた程度では、どうにもならないらしいな・・・」
まだ手に握られていた魔法剣の柄に魔力を纏めた。
・・・後悔はしない。こうなる事もわかっていたさ・・・。
「ただの人間風情が、俺に勝てるなんて思い上がりだ。」
「ハッ!・・・魔族風情が調子に乗るな!お前が今生きているのは、俺達がいたからだ!」
ロイは、体制を整える。
こちらは3人、向こうも3人。
しかし、俺は俺の手で決着を付けなくてはいけない。
「手・・・だすなよ?」
「そうね・・・。君に恨まれるのはごめんだわ。」
チェシーとベールに一応、手は出さないように言っておいた。
向き直り、構える。
自然に、身体の反応に任せる。
すでに、魔眼を使用し景色は黄色味を帯びている。
「・・・お前らと旅した時は、楽しかったさ。」
正直に言っておいた。
もう会う事はないだろうから。
「・・・人間を襲った魔族が!・・・戯言を!」
「まぁ、今の俺にはそれでいいさ・・・」
ロイが盾を前に出し、突っ込んできた。
・・・魔眼使ってると、解りやすい。
彼の動きを完全に予測し、ただ盾が来る場所に剣を置いておく。
「ぐぅ!!・・・」
金色の刀身は、その固さを示すように、盾を貫き持っていたロイの腕をも貫通している。
そのまま、横に薙ぐ。
ドサリと音を立て、ロイの腕が地面に転がった。
「ウウォォォォオオオオオオ!!」
雄たけびと共に、ガッツが突進してきた。
その肩に担いだ大斧を縦に振りぬき、地面を抉る。
サイドステップで避けた俺は、クリストフに注意を払うと、魔眼の予測通り、矢が飛んできた。
コロシアムで見た大きな矢だった。
・・・3本。
その場で、矢を剣で叩き落とす。
隙を見たのか、ガッツが横薙ぎに大斧を振りぬいてきた。
俺は、空いていた手で柄を逆手で抜くと魔力を纏め、大斧を受ける。
スッと魔法剣が大斧の金属部分の中間から先を斬り飛ばし、破片が後方へ吹き飛んでいった。
ガッツは、急に武器の重さがなくなり、振りぬきすぎてくるっと一回転してしまっていた。
「危ない・・・」
「言うのが遅いわ。」
飛んだ破片はどうやらチェシー達の方向へ向かったらしい。
首だけで振り返ると、完全に避けていたようだったので、そのまま正面に向き直った。
「・・・切れ味よすぎでしょ!」
クリストフが、さらに矢を撃ち込んできた。今度は2本。
見えていれば、たいして難しくない。
そのまま、真正面から叩き落した。
「まだっ!」
片腕となったロイが、こちらへ向かってきた。
背負っていた槍はバランスが悪い為か、捨てており、剣で下段から斬りかかる。
1歩だけ左足を引き、間合いを作ると、そのまま剣を持つ腕を狙う。
魔法剣に防具など意味はない。
血と共に、剣を握ったままの腕は、容赦なく宙を舞った。
「ロイ!」
クリストフがそれを見て叫んだ。
ガッツがまたも前進してくる。
「今度は、殴りか・・・無意味だ。」
「けじめは、某がつけるのである!!!」
向かってくる大柄な男に向かい、こちらからも踏み込む。
勢いよく迫る拳を横目で見ながら懐にはいり、そのまま空いた胴に刃を通す。
金色の一閃が、肉厚な胴体を断ち切った。
「ガッァッ・・・」
「ガーーーッツ!!!」
クリストフは、もう弓を構えていられないようだった。
魔族とは、仲間だと思っていても、容赦などしないらしい。
「・・・ジェフ・・・おまえ・・・」
「どうした?・・・けじめを付けに来たんだろ?」
「・・・なんで俺達を助けたんだ・・・。」
クリストフは震えていた。
声はしゃがれて、目の前の出来事がよほど信じられなかったらしい。
「言ったろ?・・・俺の為だ。」
「お前の為?」
「ああ・・・お前たちは、あんなくだらない奴らに殺させない。」
「・・・っ!!」
クリストフは、泣きながら顔を上げ、こっちを見ていた。
「ジェフはもう・・・魔族なんだな・・・」
「魔族か・・・それもどうでもいいことだ。」
最初はゆっくりと踏み出した。
2歩目で一気に加速し距離を詰める。
3歩目で標的の真横を通り過ぎる。
クリストフの首は、音もなく静かに地面に転がっていた。
「アアアアアァアアアァァァアアァァァアアア!!!!!」
両腕をなくした、かつての友人は、天に向かって吠えていた。
「ロイ・・・お前らしくないな・・・冷静さが売りだろ?」
「ジェフ!!!お前はっ!!!」
「・・・いいさ、これは俺の罪だ・・・。仲間を裏切っても、生き残りたい。」
「クソガァァァァァ!!!!」
吠える男にゆっくりと近づき、俺は首筋を一閃した。
「流石です。」
ベールが言った。どうやら、彼には信用されたらしい。
「・・・容赦ないわね・・・以外。」
「こうなる事も、考えていたしな。」
「賭けの内容・・・聞かなくてよかったの?」
「そんなもの、些細なことだ。・・・結局のところ、もう俺の状況は変わらないんだ。」
白い外套の裾は、かつて仲間として旅した人間の血で汚れてしまった。
「・・・帰ろう。・・・俺に付き合わせてすまないな。」
「・・・」
チェシーは何も言わなかった。
その日、晴天だった空は、見事な夕暮れに見えた。




