『剣と弓の世界に転生して公爵家三男坊になったんだけど、明日の朝日を拝める気がまったくしない』シリーズ
いつか、どこかで(『剣と弓とちょこっと魔法の世界に転生して男爵家の次期当主になったんだけど、とりあえず生きるために頑張ろう』2017エイプリルフールネタ)
本作は、『剣と弓とちょこっと魔法の世界に転生して男爵家の次期当主になったんだけど、とりあえず生きるために頑張ろう』第六章第二話の後に投稿された、2017年のエイプリルフールネタです。
ノリと勢いでできています。シリアス風味はお亡くなりになられました。
本編を読んでない?
カール:主人公。帝国の人。
アラン:王国の人。強い(小並感)。
エレーナ:帝国の皇女様。強い(ry
これだけ知ってりゃ何とかなる。へーきへーき。
「皇帝陛下が、崩御なされた?」
エレーナ様が涙ながらに伝えてくれた、その知らせが、すべての始まりだったのだろう。
王国の侵攻に合わせた最悪のタイミング。
中央からの援軍なんてもちろんない。
それどころか、まともな迎撃が出来る状況じゃない。
「だからって、たったの三日だぞ、三日。いくらなんでも、これはないと思わないか? ――アラン・オブ・アルベマール」
「事実は小説より奇なり、ってよくもまあ言ったものだと思わないかい、お兄さん? 難攻不落の要塞マイセン城が、籠城戦三日目にして、まさかの一騎駆けで落城なんてね」
「たった一人で侵入して、城門を開け放ってみせた張本人がよく言うな」
無数の死体が転がる中、燃え落ちようとする城の中で、かつてフーニィでお茶会をした王国貴族の少年と剣を構えて相対する。
「一つ聞いておきたいんだけど、お兄さんは、僕に勝てると思ってる?」
「無いな。万に一つもない。たった一人で城中の指揮官クラスを狙って首狩りやってたバケモノ相手に、勝てるなんて言えるかよ」
本当に、このガキは人間なんだろうか。
エレーナ様ならばあるいは……いや、もう死んだ人間のことを言っても仕方ない。
エレーナ様も、ギュンターも、俺の私兵団も、エレーナ様の親衛隊も、みんな先に逝ってしまった。俺一人だけが生き残ってしまった。
だからここは、俺の……俺一人の力で何とか切り抜けるんだ!
「うんうん。なら、話が早いや。お兄さん、僕と一緒に来ないかい?」
「……降伏しろ、とは違いそうだな」
「ああ! ちょっとばかりの身代金と引き換えに帝国に身柄を返すなんて、そんなもったいないことをさせるものか! あの日、フーニィでのお茶会で確信したんだよ! お兄さんは、僕の理解者足りうるって!」
「理解者?」
「そう! 良くも悪くも身分なんて気にしない、当然のように貴人も貧民も同列に扱うその精神! 世界の異端とも呼べるその精神性! だからこそ、分かってくれるよね? ――この世界は、間違っている」
「この世界が、ね」
アランが、剣を下ろす。
その目は、受け入れられないことなんて考えてない。
ただ無造作にこっちに近付き、握手を求めるように右手を差し出した。
「持つ者として見下すでもない。持たざる者として妬むでもない。ただ、人が人であり、人でしかないことを『そうである』と『知っている』。だからこそ、人が人を格付けし、生まれでもって差別するこの世界が間違ってるって言っても、受け入れてくれる。――でしょ?」
「……そうだな」
人は平等である。
天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。
前世において俺に染みついた価値観。
妥協は出来ても、拭うことは出来なかった人格の基礎。
「やっぱり! だからこそ、お兄さんは僕の同志に相応しい! 人々を絶望から救い上げ、等しく希望を与える、人類救済のこの計画に!」
「人類救済、だと……!?」
「そうさ。この『人類総ちっぱい化計画』にね!」
……こいつは、何を言っているんだ?
「おい、何のつもりだ?」
「簡単さ。持つ者も持たざる者も、すべて等しく救うべき人類! そこに貧富の差は必要ない。だからこそ、みんなの持つ財産を等しくすればいい。ちっぱいの持つ無限の希望を、みんなで愛するんだ! 絶望なんていらない! 希望を持って、みんなで進むんだ!」
こいつは、何を言ってるんだ?
「お前は、馬鹿か?」
「……お兄さん。それは、どういう意味かな?」
「お前は馬鹿かって意味だよ、バーカ!」
本当に、話にならん!
「お前に一つ教えてやる――おおきいことは、いいことなんだ」
アランが大きく間合いを取り、剣を構える。
「おっぱいにはな、夢が詰まってるんだ。それを捨てるなんてとんでもない! 夢無き希望など、何の意味もない! ただの幻想だ!」
「ただの幻想で何が悪い! 身の丈に合わぬ夢など見るから、人は奪い合う! 叶わぬからこそ夢なのに! そんな悲劇を、これからも続けろと言うのか!?」
「バカやろう! 夢ってのは、つかみ取るもの! 見果てぬその先があるからこそ、人は前に進んできた! 人を人足らしめる『未来』だ! それを失えば、そんなものは人とは呼ばねぇ!」
「そんなあやふやなもののために、『今日』の悲しみを見過ごせと言うのか! ――残念だよ。お兄さんとなら、分かり合えると思ったのに」
二人同時に、一気に間合いを詰める。
俺は今日、ここで死ぬだろう。
だがそれでも、折れる訳にはいかない!
人類の未来のために。
そして――
「おっぱいバンザァァァアアアアアアイ!」
「ジィィィイイイイイク! ちっぱぁぁぁああああああい!」
おっぱいの明日を守るために!
うっそ☆ピョ~ン!!(重低音)
カール君「ハッ!? ――夢か……。いやしかし、なんで今、アランの夢?」
※本作はフィクションです。本編とは何の関係もありません。おそらく、きっと、めいびー。