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14  商品を手にとってお確かめください

 マーリンガム家に到着した、その翌朝。


 「……っくしゅんっ」


 相変わらずくしゃみで起きるワタ。そして相変わらず下着姿である。

 ただいつもと違うのは、メイドが起こしに来る前に起きたということ。

 ワタの担当になった三人のメイドは、みんな笑顔の似合う女性である。


 「おはようございます、ワタ様。お召し替えを致しますね」

 「おはおー……お? 着せてくれるって奴?」

 「はい」

 「おー!」


 ちなみにニツバの領主屋敷では、初日だけのサービスだった。

 というのも、ワタが常に寝坊していたせいで、着替えのタイミングが掴めなかったのだ。


 「あれ? すごいピッタリ。測った?」

 「昨日説明にありましたように、マーリンガム家は諜報を主に行いますので、このようなことも事前調査済みなのです」

 「すげー!」


 するとメイドの中の一人がネタばらし。


 「実はニツバ様より情報提供がございました」

 「あー、なーんだ」

 「しかしこのような情報も、時には重要となるのです」

 「……例えば?」

 「例えば、事前情報よりも服が膨れていた場合、服の中に何かしら武器を仕込んでいる可能性があります」

 「スパイ映画でよくある奴! そっかー。さすがスパイの家」


 納得するワタ。


 同時刻、こちらはクーの部屋。


 「おはようございます。えーっと……クー様、でよろしいんですよね?」

 「はい。よろしいです」


 最初は笑顔のクー。しかしメイド三人の胸に目が行くと、真顔に。

 クーに付いたメイドは、ワタよりも小柄な子・クーと同じほどの背丈で腕っ節の強そうな金髪美人・そして黒い毛並みの狐のような種族の獣人。

 その三人ともが、立派なお胸をしているのだ。

 念のため再確認しておくが、クーは胸の脂肪が全て背丈に行ったような錯覚さえ覚えるほどの絶壁である。

 繰り返すが、絶壁である。

 「……くっ」と顔を背けるクーに、その理由を察したメイド三人も苦笑い。


 そして最後に、キースの部屋。


 「おはようございます。キース様」

 「おはよう。俺の担当は三色トリオか。元気にしてた?」

 「はい。おかげさまで充実した日々を過ごさせていただいています」

 「そりゃ良かった」


 キースの担当は、ワタと同い年くらいの女性三人。

 三色トリオとあだ名されているとおり、三人はそれぞれ赤・黄・緑色の髪をしている。


 そしてこの三人――というか、マーリンガム家のメイドは、その半数が孤児だ。

 孤児は、男は労働力として買われるのに対し、女は売春婦や遊女となり、犯罪の犠牲になりやすい。

 そこでマーリンガム家の出番。

 このような孤児を引き取りメイドとして使役、様々な技術や知識を与え、職の斡旋をすることで犯罪の抑止へとつなげている。

 しかしこれはただの慈善事業ではなく、一人前になり旅立った者から、『情報』という名の利益を得ている。

 つまりマーリンガム家に従事した者は、すべからく一人前のスパイなのだ。




 朝食が終わったところで、ルパードから話があるとのこと。


 「そちらの実力を確かめるという意味でもあるんだけど、ひとつ依頼を受けてはもらえないかな?」

 「スパイなのに実力知らないの?」

 「いやいや、聞いただけの話と、実際に見るのとでは違うだろう? より精査された情報こそが信頼に足るんだよ」

 「んー……?」

 「兄さん、まだワタちゃんの扱い分かってないね」

 「……ごめん」


 「でもなんとなく分かったよ。商品を手にとってお確かめくださいってのでしょ?」

 「ははは、そういう表現もあったか。その通りだよ、ワタ君」

 「やった。んで依頼って?」

 「ああ。沖合いに海賊がいてね、普段は軽く相手をするだけで済ませているんだが、今回の事態とバッティングすると邪魔になる。そこでだ、手段は問わないので黙らせてきてほしい。再度言うが、手段は問わない」

 「……海賊退治?」

 「そういうことだ」


 これを聞いて、誰よりも目を輝かせているのがクーだ。


 「海賊退治といえば船を強引につけての殴り合いですよね。そしてマストの上で船長と一対一の対決! 落ちればワニやサメが口をあけて待っているんですよ。まさに命のやり取り真剣勝負! 血湧き肉躍る戦い!」

 「……姉さん随分と入れ込んでますね」

 「えへへー、まだ姫だった頃に読んだ冒険譚にそのような場面があって、ちょっと憧れていたんですよ」

 「あはは、なーるほど」


 「でもここってワニとかサメいるの?」

 「ワタちゃんそこ? まあいいや。ワニはいないけどサメはいるよ。最大でも30センチに届くかどうかの小さい奴」

 「あー血は湧かないっぽいねー」


 水に落ちた人がサメに食いちぎられ、水面が真っ赤に染まる光景を、”血湧き肉躍る”だと勘違いしているワタ。

 一方クーは喜び一転、コクリと首を垂れ意気消沈。


 それを見て、ルパードがワタに話を振った。


 「ワタ君、そちらの世界でも海賊はいるのかい?」

 「うん。ソマリア海賊」

 「そまりや……? 血に染まるのかい?」

 「全然違う。んーっとねー……あ、スマホ充電できないんだった……」


 先ほどのクーを真似するかのように、ワタもコクリと首を垂れた。

 ここでキースが、前々から思っていたことを口に出した。


 「それこそワタちゃんの能力でどうにかすればいいのに」

 「……コンセントある?」

 「あるよ。使えるかは保証しないけど」

 「んじゃ試してみる。えーっと……」

 《こっちの世界のコンセントでも使えるスマホ充電器》


 相変わらず音もなく一瞬でポロッと出てきた。

 見た目はただの充電器。ソケットの形状がこちらのコンセントに合う形になっているだけだ。

 さっそくコンセントにセットし、スマホを充電してみるワタ。


 「……おっ! 充電マーク付いた!! さっすがチート能力!」


 小躍りするワタ。

 それを見て、ルパードは驚き呆気に取られている。


 「目の前で能力を見てしまうと、なんというか、あっさりすぎて凄さがいまいち把握できない。いや、凄いのは分かるんだよ。だけど……」

 「もっと派手な演出がほしい」

 「そう! 眩く光ったり風が渦を巻いたり幻覚が見えたり、そういう演出が……何もないっ!」

 「すげー分かるっ!」


 ルパードは手を大きく広げてオーバーアクション。そして仲良し兄弟なので意思疎通バッチリ。

 ワタも含め、皆笑いつつも頷いている。


 充電はまだ終わっていないが、操作可能になった。

 ワタのスマホには現代用語辞典的なソフトを入れてあるので、ソマリア海賊を検索。


 「んーっとね、ソマリアうみ……とは、南アフリカにある国家、ソマリアの……が原因で――」


 必死に説明するワタだが、読めない漢字を飛ばしているので意味不明な文章になる。

 みんな頭にハテナマークが出てしまい、クーがスマホを覗き込んで自力で読もうとする。

 だが、当然ながら読めません。


 「……えーと、つまり?」

 「海賊、かな?」


 当然の結論にみんな苦笑い。

 その後クーは別の話へ。


 「この文字、ワタは当然読めているのですよね?」

 「当然読めているのですよ」

 「……丸い文字と角ばっている文字と複雑な文字、これは同じ言語なんですよね?」

 「同じ……あ、言いたいこと分かった。んーっとね、これがひらがな。こっちがカタカナ。んでこれが漢字。紙と書くものある?」


 ということで急遽用意。

 ワタはスラスラととある漢字を書いて、みんなに見せた。


 「……なに?」「象形文字?」「全く分からない」

 「これでバラ。花のね」

 「げっ」「うわっ」「書ける気がしない」


 ワタはラノベ好き。

 中学二年生ながら中二病は患っていないが、流れでこのような異様に難しい漢字を覚えていたりする。

 薔薇を書いたその後も、麒麟や憂鬱や葡萄などを披露しつつ、困惑する大人たちをあざ笑っている。


 「一つの言語に三種類の文字、そしてこれほど複雑な造型……」

 「ワタちゃん、実は天才なんじゃ?」

 「ふっふっふーっ! よーやく気付いたかー!」

 「あ、これ違う奴ですね」

 「んですね」

 「ぶーぶー! もーちょっと崇拝してくれてもいいのにー!」


 化けの皮が剥がれるのも早いのでした。




 出発準備中、メイドが一人こちらへ。三人の誰の担当にもなっていない人だ。

 その手には黒い縦長の箱に、二つの筒が付いた物体。

 これに食いついたのはキース。


 「あ、それ映像用のカメラだよね! うわー本物初めて見たー!」

 「僕は同行できないから、彼女がこれで君たちを撮影する。後で資料として見させてもらうよ」

 「おっほぉー!」


 実用性のある珍しいものが大好きなキース。

 手は出さないが、カメラを嘗め回すようにジロジロ。メイドさんも苦笑いである。


 そしてそれを見ていたワタが反応。


 「それって何分録画できるの?」

 「フィルム一本で10分だよ」

 「私のスマホ、1時間くらい録画できる」


 先ほどまではスマホが”移動しても使える電話”程度にしか思っていなかったルパードたちの動きがピタリと止まり、数秒の沈黙。

 最初に言葉が出たのはキース。


 「……えっ!? それ、電話、だよね?」

 「うん。だけど色々できるよ」

 「……ほんと?」


 現代っ子の本領発揮。

 すぐさまムービーモードを起動し、周囲をぐるりと見回し撮影。当然自撮りも完璧である。


 「んで……ほい」


 画面をみんなに向けて再生。

 今撮ったばかりの映像が、とんでもなく鮮明に、かつ音声までも再現される。

 この時代のカメラは音声は録れないので、彼らにとってみれば『この声誰だ?』状態である。


 短いムービーも終わり、スマホをカバンに放り込むワタ。

 周囲は未だ固まったまま。

 それでも一番最初に意識を取り戻したのはキースだった。

 伊達に一番長くワタと一緒にいるわけじゃありません。


 「……魔法……ってことにしておきますか?」

 「ですね」「賛成」


 結論として、思考を放り投げたこちら世界の住人たちでした。


 「発展した科学は魔法と区別が付かないって言うからねー」




 普段着に着替えたメイドさん。四人になった一行は、港へ。


 「船どれ?」

 「それが兄さんから、船も含めて自力で探せって言われてるんだよ」

 「えー」


 心の中では(あのクソ兄貴)と思っているキース。

 そしてこの指示の意味をクーが読み解いた。


 「……それは、船探しも含めて能力を見せろという意味では?」

 「だと思うんですけど、ワタちゃんが頷くとは思えないんですよね」

 「だって能力で全部どうにかなったら面白くないじゃん」

 「ね? ははは……」


 キースのほうが一段上手(うわて)でした。


 とはいえしばらく探しても、海賊を殴りに行こうなんて人はいません。

 そしてワタの機嫌が徐々に悪化。


 「ねーまだ探すの?」

 「仕方ないでしょ。疲れたなら車で待っていてもいいよ」

 「……それはヤだ」

 (また変なのに追いかけられたくないし)


 ソメの町であったトカゲ人間のサラマンドに追いかけられたことが、すっかりトラウマ化しているワタ。

 キースもクーも話には聞いているので察している。


 「……ねぇ、もしかしてだけどさ、ルパードさんわざと私たちに協力させないようにしてる?」

 「あっ、あり得る」


 一斉に目線がメイドさんへ。

 そして静かに目を逸らすメイドさん。


 「はい、確定ですね」

 「むー! 家ごと消すぞ!」

 「俺が困るって」


 理由が判明すれば、後は行動あるのみ。

 マーリンガム家に殴り込み――ではなく、気付いていることを船長に伝える。


 「……悪いとは思ったんですが、なにせルパード様のご命令なので……

 「やっぱり。兄さんは後で俺が怒っておきますんで」

 「しかし……」


 渋る船長。するとクーがワタに耳打ち。


 「能力で好転させられませんかね?」

 「……分かった」


 「ねー船長さん。こーいう話に乗ってくれそうな人知らない?」

 「いやぁ、それも……」

 「言わないとこうなるよ」

 《この船長さんの船が沈む》

 「せ、船長っ!!」「なんだぁ!?」「うあああ……」


 突然船体が真っ二つに割れ、阿鼻叫喚。そして――。

 《っていうことはなかったよ》

 で元通り。

 驚かないのは三人だけで、他はメイドさんも含め全員が驚愕し、言葉が出なくなっている。


 「今のは嘘で終わるけど、言わないと本当にするよ」

 「わ、分かったっ……だから、後生だから船には手を出さないでくれっ……」

 「うん」


 涙目の船長さん。

 さすがにワタもやりすぎたかなーと反省しております。


 先ほどの船長が紹介してくれた船へ。

 黒の船体を持つ立派な帆船である。が、かなりボロい。

 ここはワタが声を掛けた。


 「すーみまっせーん」

 「……あ?」


 出てきた船長は意外なほど若い、キースと同年代の男性。

 交渉は何故かそのままワタが担当することに――。


 「ってことなんですけど、どう?」

 「海賊狩りねぇ。まー船を出すだけでいいってなら考えないこともないが、しかし見返りがなくちゃ」

 「んじゃ、手伝ってくれたら新しい船あげる」

 「……あんた船の値段分かって言ってる?」

 「値段は知らないけど、用意はすぐ出来るよ。あ、それとこの人マーリンガムの人」

 「どうも。キース・マーリンガムです」


 ワタはキースを出しに使い、キースも挨拶。

 相手もさすがにマーリンガム家は知っており、ワタの言葉に納得した。


 「分かった。だけど船員が戻るまで待っててくれ。あいつらを説得しなきゃいけないし」

 「はーい。で、どれくらい?」

 「そうだな……一時間後に来てくれ」

 「おっけー」




 ということで三人とメイドさんはお散歩。

 一応の目的地は、マーリンガム家専用の埠頭だ。


 「港持ってるって、ニツバの領主さんがかわいそうになるんだけど」

 「いやいや、ニツバは街の土地すべてが領主の所有物なんだよ。一方我が家の土地はあの敷地と埠頭だけ。見た目では我が家が御三家で一番だけど、力という意味では三番目なんだよ」

 「ほぇー。じゃーキースさんの家のほうがいいご飯出たのはなんで?」

 「見栄だよ。御三家はお互い知る仲だからこそ、意地の張り合いってのがある」

 「……面倒なんだねー」

 「ははは、まーね」


 「クーさんはお姫様だけど、そーいうのあった?」

 「んー……わたしには一歳差の弟がいるんですが、現役当時は後継者として持てはやされる弟にライバル心を抱いたこともあります。今はもうお互い自由に生きているので、見栄や意地は持っていませんよ」

 「へぇー。ってか弟さんいるんだ。何してる人?」

 「今は別の国で画家をやっています。中々好評のようですよ」

 「やっぱり王様の血ってすごいんだ」

 「ふふっ。ですね」


 クーは権力争いには興味がない人です。


 マーリンガム家の埠頭に到着。

 そこには白い船体を持つ外輪船が一隻。車輪が船体の中央にあるタイプだ。

 個人所有の埠頭なので人はいない。


 「これキースさん()の持ち物ってこと?」

 「そういうこと。でも細かいことは俺は知らないよ。次男だから最初からそういうことには興味なくて、全部兄さん任せだから」

 「それはそれでどうなんですか?」

 「ねー。能天気なんだから」

 「ワタちゃんにだけは言われたくないわ!」


 きょとんとするワタに、ため息の出るキース。クーは腹を抱えて大笑い。メイドさんも思わず背中を向けて体が震えている。

 しかしワタの興味はすぐに船に移った。


 「乗っていい?」

 「んー……ダメ。だよね?」


 キースがメイドに確認。メイドが頷いたので、ワタもあきらめた。




 時間が来たので先ほどの船へと戻る四人。

 丁度会議中だった様子で、20人ほどが集まっている。そのほとんどが船長と同じく若者である。


 「ってもよ、海賊だろ?」

 「まーそうなんだけど……っと、来た」


 「どうですか?」

 「6:4で反対。やっぱり命あってのものだねだからね」

 「……あ、この人スキル使えますよー」


 次はクーで釣るワタ。

 船員の中には顔色が変わったのもいるが、それでも覆らない。


 「クーさん、海に向かって風飛ばすのできる?」

 「実演ですか。いいですよーやってやりましょー」


 海上に何か目標物がないかと探すと、ティッシュ箱ほどのサイズの木片を発見。

 運搬用の木箱が壊れたものだろうだから、遠慮せずぶっ飛ばしてもいいということに。

 ついでに野次馬も集まり、準備は万端。


 「行きますよ。……ふぅ」

 あの時と同じく、クーの周囲に静かな風が舞う。

 《エアブラスト!》

 大きく振り上げられた剣が、目にもとまらない速さで振り下ろされた。

 海上を一直線に衝撃波が走り、まるで海が割れたかのように分断。

 その衝撃波は木片に直撃し、跡形もなく吹き飛んだ!


 驚きから来る静寂を、分断された海の轟音がかき消し、次にはその轟音以上の歓声が海を揺らした。

 満足げに振り返るクーに、ワタにキースにメイドさんも拍手を送る。


 「ふっふっふっ、どうですか!」

 「すげーよ! 正直言ってスキルのことナメてた!」

 「オレも! ここまでとは思ってなかった! すげー!」


 先ほどまで渋っていた船員たちも、これで心変わり。


 「んじゃねーキースさん、あそこに浮いてるカケラに命中できる?」

 「俺も実力を見せろってことね。やってやりましょう!」


 普段のとは違う小型の携帯用弓矢を持っているので、それで射撃を試みるキース。

 狙うは先ほどよりも小さい、15センチあるかどうかの木片。それが波に漂い上下左右に揺れ動く。

 (どうせ当たらないんだー)と高を括っているワタ。


 よく狙い、しっかり引き絞られた弓。

 射出された矢は海風に少々揺られたが、それも計算の内と言わんばかりに、見事小さな木片に刺さった!


 「うえええっ!?」

 「キースすごーい!」


 目を丸くして驚く二人。

 対して周囲の反応は少々違う。


 「さすがキース様だわ。お見事っ」

 「腕上げましたねー。これなら弓兵部隊の隊長も近いんじゃないですか?」

 「むしろ引く手数多でしょう?」

 「あはは。いやぁ実は不正行為がバレて下っ端に落とされて、今は……ほら」


 キースは船乗りに、あの変化したシンボルマークを見せた。


 「あっ! だからなんですね」

 「だったら話は別だぁ。海賊退治オレたちも手伝いますよ!」

 「いえいえ、それとこれとはまた別なので」


 周囲と自分たちとの空気の違いに、疎外感を感じる二人。

 それをキースが見逃すことはなく、周囲を落ち着かせ普段の仕事に戻させると、苦笑い。


 「いやぁごめんごめん。マーリンガム家は弓が得意で、俺はその素質を強く持っているってことで、昔からこういうことをやってたんだよ」

 「得意分野だったということですね」

 「そうです」


 あくまでもさらりと言い放ち、自慢顔はしないキース。


 「……ということで船長さんに船員さん方。これでご納得いただけましたか?」


 キースから振られた船乗りたちはまた軽く会議。

 しかし答えはすぐにまとまった。


 「こんだけのものを見せられたら、納得するしかないでしょ。でもあくまでも人命優先。少しでも危険だと感じれば、こっちの判断で打ち切る。そのつもりでお願いします」


 こうして足を手に入れたワタたちは、海賊退治へと出発するのでした。



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