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キャラクターって?  作者: キョウペイ
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第一章 6 変身

 僕は内なる声に従って、その言葉を心の内で、魂で叫んだ。

 一瞬のめまいのような感覚のあと、僕は驚くべき光景を目の当たりにした。

 目の前に、一人の人物が立っている。僕との距離は二メートルほどで、どうやら僕がいつの間にか二メートルほど後ろに下がっているようだった。その人物は、セミショートカットの艶やかな黒い髪に、同じく黒のロングコートを身に纏い、悠然とそこに立っていた。

 そして、さらにその人物の背中には、鈍色に光る剣のようなものがある。けれど剣というには少し機械っぽく、しかも剣先が不自然な形をしていた。中ほどから折れてしまったかのように、剣先がないのである。

 その人物の前には、怪物の姿もちゃんとある。しかし、怪物は何かを感じ取ったのか、何もしようとはしていなかった。

「……あれ?」

 不意に僕自身の体に視線を落とすと、また驚くべきことに、僕の体が白く半透明な状態になっていた。まるで霊体、もしくは魂だけの存在になってしまったかのようだ。

 わけの分からないまま、そこに呆然と立っていると、再び内なる声が聞こえてくる。

 ――『戦う力を、愛しいあなたへ』

 すると突然、前にいる黒い人物が、機敏な動きでバックステップをした。

 そのまま止まることなく、僕へ近づいてくる。ぶつかりそうになっても止まることなく、そしてついに僕の魂のような体へと衝突し――。

 再びの一瞬のめまいのあと、僕はその黒い人物へと姿を変えていた。

 変身、した。

「……って、あれ? あれぇ!?」

 変身したのはまだいい。この際もう受け入れよう。その覚悟はもうできた。

 けれど、一つ気になるところがあった。それはもう、とんでもないところだ。

「……お、おおお――」

 それは。それは、ある意味でラッキーなのかもしれないが。

「――女の子になってるううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ――――――――っ!?」

 さっきはこの人物の後姿しか見えなくて、しかもロングコートで隠れていたからまったく気がつかなかった! いや、でも確かに、ちょっと背が小さめのような感じもしたけど! でもそれは判断材料にならないっていうか! ああ、もう何でもいいけど!

 とりあえず、僕は女の子になった。男の時よりも身長が小さくなっている。

 そしてもちろん、股間にあった大事な角もなくなっていた。

 さらに問題なことに、よく自分の姿を見てみると、下半身はかなり太股が見える、際どいショートパンツという格好だった。太股を、屋上に吹く風がひやりと撫でている。

 これは、これはかなり恥ずかしい。もちろん体は女の子だから問題ないんだけど、心が、魂が男だから慣れなくて恥ずかしい気持ちになる。

 …………………………。

 ……あれ? 意外ともう慣れたかも。なんだ、気にすることなかったじゃん!

 改めて今の自分の姿を確認してみよう。

 顔立ちは分からないからスルーして、髪は首筋まで伸びる黒のセミショートカット。服装は黒のロングコートに、柄のない黒のTシャツ、黒のショートパンツに、黒のショートブーツ、そして黒のニーハイソックスという格好である。ここまで黒で統一すると、いっそ清々しい。統一感ってのは好きですよ、僕。

 そして背中には、例の剣っぽくない剣がある。背中についているというのは、感覚的に分かるのだけど、でも重さが感じられない。背負っているというよりは、背中にくっついているといった感じかもしれない。言うなれば、ゲームの武器のように背中にくっついている、そう、あの感じだ。剣を固定する道具が見当たらないので、たぶんそうなのだろう。

 これが僕の、今の姿だ。

「……おまたせ」

 一つ呟き、僕はようやく怪物を見据えた。距離はおそらく三メートルほど。

 怪物は、僕の変身に驚いているのか、それともただの気まぐれなのか、じっと僕を凝視したままだった。獰猛そうな赤い瞳が、僕をじっと見下している。

 もしこれが、変身中は攻撃しない的な、ある意味お約束なものだとしたら、僕は怪物を称賛しなくてはならないかもしれない。

 右手を背中にまわし、そっと剣の柄を握る。初めて剣を握るはずなのに、どこか初めてではないような、そんな奇妙な感じもする。この感じは一体何だろうか?

 僕が剣の柄を握ると、怪物もスイッチが入ったように一気に臨戦態勢になった。

 初撃。踏み込みとともに、怪物の右腕が風を切ってこちらに迫ってくる。僕はそれを腕の外側へ避けつつ、避けると同時に剣でその右腕を斬りつけた。

 反撃がヒットしたのを確認すると、僕は一度怪物から距離を取った。

「今の……、僕が……?」

 自分がやったとは思えないほど、その動きは完璧だった。

 戦闘は初めてのはずなのに、体が無意識に動く。なぜかは分からないけど、体が反応する。体が羽のように軽く、まるで別人のようだった。……いや、女の子になってるし、別人になってはいるんだけど。でも、それでも。

 ――これなら、戦える!

 ――ニメや、サディのように!

 ………………。

 ……そういえば。ニメとサディは、どうしたんだろう?

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