第四章 16 確信
「何か、何か……。課長から聞き出せる、何か……」
ニメが何かないかと思考を回転させている中、僕は今朝のブリーフィングのことを思い出していた。あの時の課長は、妙に何かを探っているかのようだった。
もしかしてあれは、記憶の戻ったサディの様子を探っていたのではないか。
サディと、僕とニメの様子を探っていたのではないか。
今になって、そんな気がする。
もしサディが記憶の戻ったことを僕たちに話して、それで何か変なことを起こされては、課長も思い通りに事が進まなくなる。それを警戒して、今朝のブリーフィングで僕たちのことを探っていたのだとしたら……。
「ニメ。今朝のブリーフィングのこ――」
「今日のブリーフィングの時! もしかして!」
僕が声を掛けるのと同時に、ニメが気づいたように大きな声を上げた。
「え? ジゲン、何か言った?」
「……いや、たぶん、ニメの気づいたことは、僕の言いたいことと同じだと思う」
「そう。なら言わなくていいわね」
ニメはそう言うと、それから僕の胸に拳を当ててきた。
そして、ニメは誓うように、決意するように言った。
「ジゲン。あたしは何があっても、この世界の謎を、今まであった謎を、全て解き明かしてみせるわ。それがサディと、リュウと、ハナのためでもあるから」
「うん。そうだね」
「だからジゲン。何があっても、目を逸らさないこと。何があっても、後悔しないこと。何があっても、躊躇しないこと。分かった?」
「その覚悟は、もうできてるよ。ニメ」
そう言って、僕はニメの頭をくしゃくしゃと撫でた。ニメが嬉しそうに、微笑む。
「じゃあ行きましょうか。これが最後よ!」
ニメとともに、僕は保安局の悪鬼対策課、その課室へと向かった。
保安局に戻り、僕とニメはいつものように変身を解くと、課室に足を運んだ。
ドアを勢いよく開けて、僕たちは課室へと足を踏み入れる。
何も言わず課長のデスクの前まで行き、僕らは課長の前に堂々と立った。
「おかえり諸君。……どうした、二人とも」
「課長。聞きたいことがあるの」
ニメが語気を強めてそう言う。しかし課長はいつもと変わらず、余裕を持って対応してきた。
「何だ、言ってみろ」
「サディと、リュウと、ハナのこと。ねぇ、課長。課長は、何か知っているんでしょ?」
「……どういうことだ?」
「リュウがいなくなって、ハナが仲間になって、ハナが悪鬼になって……それで今日、サディも悪鬼になったのよ。まるで、決まってたみたいに」
「……サディが?」
「そうよ。リュウも、ハナも、サディも、あたしたちの周りばかり悪鬼になっていく。こんなの、偶然で起きるわけがない。ねぇ課長、何か知っているんでしょ?」
「…………」
「何か知っているんでしょ!? あたしたちの、何か知らないことがあるんでしょ!?」
「……いや、何も」
「それは嘘よ! 今日のブリーフィングだって、あたしたちのことを探ってたんでしょ!? 心配そうなフリをして、実はあたしたちのことを探ってたんでしょ!? 計画に、決められたことに、不都合なことがないように!」
「…………」
ニメにまくし立てられ、課長は黙り込んだ。だが、その表情はやはりいつもと変わらない。内心が表情に出るほど、そんな甘い人ではないことを改めて思い知らされる。
黙り込んでいた課長だったが、やがて口を開いた。
「……仮にそれがあったとして、お前たちはそれを聞いてどうする?」
課長の口から出たのは、そのような質問だった。
「どうもしないわよ。あたしたちは、真実が知りたいだけ。サディのために、リュウのために、ハナのために。そして、あたしたち自身のために」
「…………」
「あたしたちは、人間じゃない。あたしたちは、物語のキャラクターだから」
「……そうか」
課長は初めて観念した表情で、ぽつりとそう呟いた。
課長のこの反応。ニメの予想通り、やはり課長は何かを知っている。
「やっぱり、知っているのね」
「……確かに、わたしは真実を知っている。お前たちの身の回りで起きた真実も、そして、この世界の隠された真実も」
「ぜひ、聞かせてもらおうじゃない」




