表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キャラクターって?  作者: キョウペイ
56/65

第四章 14 サディとニメと僕と

「……作品って、普通でも……忘れ去られていくのデスよ……? それって、悲しいと、不条理だと、おかしいと、思うデスよね……? 私は、そう思うのデスよ……」

「……そう、だね……」

「だから私は……作品に触れる、全ての人たちに言いたいのデス……。面白いと言われる作品、光を浴びた作品の、その下には――無数の普通と言われる、いつ忘れ去られるかも分からない、可哀想な作品たちと、キャラクターたちがいるということを……。……私は、それを言いたいのデス。それを、伝えたいのデスよ……!」

「……うん」

「でも……きっと理解されないデスよね……。そんなの、つまらない作品を生み出す方が悪いんだ、って……。……だから、これは私の独り言デス……」

 ――叶うなら。

 叶うなら、最後にサディの思いが、一人でも多くの人に届きますように。

 僕には、そう願うことしかできない。……それしか、できない。

「……ジゲン、ニメ。……私の、悪鬼と戦うためのパワーアップが、ゲームの画面のようだったのは……本当に私が、ゲームのキャラクターだったからなのデスよ……」

「……あぁ」

「すごい、デスよね……。何と最初から、決まっていた……意味があったということなのデス……。画面に表示されている謎の文字が読めたのも、そのゲーム内でその文字が使われているからなのデスよ……。だから私には、その文字が読めたのデス。……そのゲームの、キャラクターだったのデスから……」

 これまで謎としてきたところが、徐々に明らかとなっていく。

 今まで分からなかった真実が、目の前に突きつけられていくのを、僕は感じた。

 サディはそこまで話すと、一度息を大きく吐いた。それから切り替わったかのように、サディはあることを訊いてきた。

「……ジゲン。私のことは、好きデスか?」

 彼女の口から出たのは、そんな質問。僕はそれに対し、正直に答えた。

「好き、だよ」

「なら、ニメのことは好きデスか?」

「好きだよ」

「だったら……私とニメ、どちらの方が好きデスか?」

 サディが今になって、突然そんなことを尋ねてきた。あまりにも唐突な、問いだった。

 いや、違う。今になって、じゃない。今だから、なんだ。

 今だから、サディはそれを訊いておきたかったんだ。

「…………」

 けれど、僕はその問いに、すぐには答えられなかった。そして僕がすぐに答えなかったのを確認すると、サディは何かを理解したかのように言ってきた。

「……やっぱり、ジゲンはニメのことが好きなんデスね」

「……え?」

「だって、そうデスよね。こんな危機的状況、今際の際なのに、それを言わないということは、やっぱりそういうことなのデス。そうデスよね?」

「……あ」

 そう、なのかもしれない。いや、違うかもしれない。でも、サディの言うことが、全て間違っているとも言えない。はっきりと、否定することもできない。

 それはつまり、サディよりもニメの方が――。

 ――僕の中では、大事だということ。

 そういうことに、なるのかもしれない。

「……よかったデスね、ニメ。これで、両想いデスよ」

「……えっ?」

 今度はニメが、驚きの声を上げる番だった。

「もう! 私が、気づいていないとでも思っていたのデスかー?」

「……ま、まって。まって」

「バレバレなのデスよ、ニメ。……そしてジゲンも、どうして私の合図に気づいてくれなかったのデスか。何度もそれとなく、『ニメはジゲンのことが好きなのデスよー』と合図を送っていたのデスよー?」

「…………。……もし、かして……」

 ――僕の頭の中に、過去の思い出が、次々とよみがえってくる。

「そうデスよ。ジゲンと初めて出会ったあの日、課室の外でウインクしたのも、そうデス。悪鬼が二体出た日、課室でジゲンに『一人の女として見ちゃうよ』と言われた時に、『ダメ』と言ったのも、そうデス。そして昨日、私の家でニメと愛の語らいをさせたのも、そうデス」

 その全ての光景を、言葉を、表情を、僕は覚えている。

 あの日、あの時、あの場所で。

 サディがそうしていたのは、僕にそれを伝えるため。

「何度もそれとなく伝えていたのに、まったく気づいてくれないのデスから、ジゲンは……」

 ――ニメが僕のことを好きだと、それを伝えるためだったのだ。

「……なん、だよ……。分かりにくすぎるよ……サディ……」

「でも……こうして、最終的には結果オーライ、デスよ」

 そう言うサディの顔は、どこか安心したような、そんな表情をしていて。

 僕たちから離れていくような、そんな気がした。

「……サディ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ