第四章 1 ひくわー
第四章 結
翌日の朝。
目が覚めると、ハナちゃんは僕の隣ですやすやと眠っていた。
昨日はあのまま、ハナちゃんと一緒に寝てしまったようだ。眠れるのか不安だったけど、こうして朝の目覚めを迎えられたということは、眠れたということなのだろう。
そう思っていると、ハナちゃんが僕のあとに続いて目覚めた。
「……んうー。じげんおにーさん……」
「おはようハナちゃん。眠れた?」
「うん。じげんおにーさんのおかげだよー」
「それは良かった」
少しばかり、ハナちゃんの声が明るく元気になったような気がする。いつもの無邪気な声とまではいかないけど、昨日の夜のような、すごく不安そうな声ではなかった。
「じゃあハナちゃん、今日は僕と一緒に行動しようか」
「する。そうするー」
「よし。なら行こうか」
今日はハナちゃんと一緒に行動する。顔を洗って、寝癖を直して、身支度を整えて、朝食を取るために一緒に保安局の外へ出た。
いつも朝食を取っている店の前では、昨日と同じようにニメが待っていた。
「おはようニメ」
「あら、今日はハナも一緒なのね」
「にめ! おはよー。ハナもいっしょでいーい?」
「もちろん構わないわ。一緒に食べましょ」
それから三人で一緒に朝食を取った。ハナちゃんも、だいぶいつもの無邪気な声と表情になってきて、時々いつもの可愛い笑顔を見せていた。
朝食を終え、僕たちは保安局に戻る。僕はハナちゃんと手を繋いで戻った。
課室のドア開けて中に入る。そこにはすでに、サディと課長の姿があった。
「みんな、おはようデース!」
「おはー」
「さでぃおねーちゃん、おはよー」
「おはよう、サディ」
サディに朝の挨拶。そしてニメとハナちゃんと僕は、課長にも挨拶。
「課長も、おはー」
「ママ、おはよー」
「課長、おはよう」
「はい、おはようさん」
全員への挨拶が済むと、早速ソファ姉に腰を下ろす。ハナちゃんは僕の隣に座り、ニメはサディの隣に座った。今日もソファ姉は、みんなのお姉さんである。
ソファーに座るとすぐに、ニメがハナちゃんに対して質問を発した。
「ハナ。さっき課長のこと、ママって呼ばなかった?」
ニメが訊いたのは、先ほどの課長に向けての挨拶のこと。
「よんだよー。ママが、ママとよんでって、そういったからー」
「あー、やっぱりね。……課長、幼い子にママなんて呼ばせるとか、犯罪よ?」
「犯罪じゃない! 呼び方だけなら犯罪じゃないだろ!」
珍しく課長がツッコミにまわる。課長、素晴らしいツッコミです!
「さすがにママって、ひくわー。課長がそこまでの変態だったなんて」
「うるさい! いいだろう、ママと呼ばせるくらい!」
課長の変態度に、さらに磨きがかかっていた。これがレイコ課長である。
「男もいなくて子供もいなくて、欲求不満なのデスかー?」
ここぞとばかりに連携して、サディも課長をいじる。
「そ、そんなわけないだろう!」
「今ならピチピチの、若いジゲンを貸してあげるデスよー!」
「……。いやいや! わたしはそんなことしないぞ! 断じて!」
サディ! 勝手に僕を扱うのをやめて! そして課長も、絶対今ちょっと悩んだよね!
課長がいじられていると思ったら、僕にまで流れ弾が飛んでくることに。
そんなやり取りののちに、今日の定例ブリーフィングは開始された。
「そういえばお前たち、昨日リュウの家に行ったんだろう?」
いつもと違うような案件は特になく、ブリーフィングも終わりに差し掛かった頃、ふと課長がそう尋ねてきた。ニメが答えて言う。
「行ったわよ」
「何か分かったことはあったか?」
「そうね、リュウのスマホを見つけて、そこに未送信のメールを見つけたことくらいかしら」
「メールには何と?」
「えーっと……」
ニメはジャージのポケットからスマホを取り出した。たぶんリュウのものだろう。
ニメはそのスマホを見ながら、課長にメールの詳細を伝えた。
「……と、こんな感じね。このスマホは重要な手掛かりだから、課長に渡しておくわ」
そう言うとニメはソファーから立ち上がり、リュウのスマホを課長のデスクに置いた。




