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魔物使い誕生

『アクト=アマギ アナタのジョブは《魔物使い》です』


「…………なッ!!?」


 幾何学模様が光を放つ遺跡的で機械的な部屋。その中心に神々しく鎮座する《天使》が発した言葉に俺は耳を疑った。


 嘘だ……俺が《悪神のジョブ》を授かるなんて……。

 このまま受け入れられるもんかと、抗議しようとする前に、自分の体に違和感を覚える。まるで、自分の中に何かが入り込み、頭の天辺から爪の先にかけて隅々までその何かが染みたり、同化するような感覚。

 あまりにも不快で、膝から崩れ落ち、思わず吐きそうになる。

 

『次の方、ドウゾ』


 気分が悪くなっている間に天使は次の生徒を呼ぶ。

 待ってくれ!

 叫ぶ前に、俺は見えない力に引きずられて部屋から追い出されてしまう。

 

 なんで俺がこんな目に……。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 遥か昔、この世界は善神ぜんしん悪神あくしんが争っていた。

 善神は人間と精霊を味方に、悪神は悪魔や魔物を味方にして、戦いは戦火を強めるばかりだった。

 端から見れば戦況は互角の様に思われたが、悪魔や魔物の強力な生命力と再生力により、時が経つに連れて戦況は悪神側の優位に傾いていった。

 

 この状況を打開すべく善神は人間に力を与えました。

 それが《ジョブ》です。

 ジョブとは、善神が人間にのみ与えることができる加護。善神はそれぞれの人間に最適なジョブを与えます。

 《剣士》のジョブを与えられた者は、剣術の技術が上がり、通常よりも肉体が強靭に育っていきます。

 《魔物使い》のジョブを与えられた者は、魔法を行使できるようになり、魔法学を発展させていきました。

 《神官》のジョブを与えられた者は、善神と対話し知恵を授かったり、祈りを捧げて様々な恩恵を受けることができました。


 様々なジョブの力により、形勢は徐々に逆転していきます。正に善神側の反撃でした。

 しかし、悪神もそれを黙って見過ごす訳がありません。


 悪神は様々な方法を使って対策を立てます。ですが、ジョブの力の前に奴の策は悉く失敗に終わってしまいます。

 そこで悪神は考え付きました。自分達もジョブを使おう、と。

 しかし、ジョブは人間にのみ受けることができる加護の力。悪魔や魔物には与えることができません。

 それならと悪神はこう考えます。

 

 人間を味方に引き入れよう。


 悪神が目をつけたのは、人間の社会の中でも差別を受けていた者や理由もなく除け者にされた者達。虐げられ、弱さ故に立ち向かえない者達。

 彼らに悪神は囁きます。


 奴らに復讐したくはないか?


 彼らは悪神に寝返りました。

 悪神の加護により彼らは悪神のジョブを授かります。

 闇の力を纏いながら敵を凪ぎ払う《魔戦士》

 悪魔の力、魔術を使い、敵を殲滅する《魔王》

 魔物と心を通わせて育てることで、新たな魔物を産ませたり、連携を駆使し、あらゆる場面に対応する《魔物使い》

 

 こうして、ジョブを授かった者達が両陣営に現れたことで、戦いは激化していきます。

 二つの勢力は互いに疲弊していき、いつ終わりがくるのか見えなくなっていきました。

 そんな戦いに終止符をうったのは、善神のジョブ《救世主》です。

 ジョブを極めし者のみが奇跡的に至ることができる《救世主》は悪神側の戦力の大部分を削り、最後には善神と共に悪神を倒すことを成功させます。

 そして、善神は二度と悪神が復活しないよう、その魂を体の中に、肉体は細かく分けて世界に散りばめて封印しました。


 善神は世界の平和と安定のために、これからも生まれ続ける魔物への対抗策として、善神の代わりにジョブを授けることができる《天使》を置いていき、天へと帰っていきました。


 現在。平和な日々は続き、人々の中で神と神の戦いは伝説として語られています。

 《天使》から授けられるジョブは今も魔物討伐やダンジョン探索などでおおいに役立ち、人々の生活を豊かにしています。


 しかし、そんな平和な日々にも不安要素はあります。それが悪神のジョブ。

 善神が悪神を吸収して封印したことにより、悪神の力が少しばかり善神から漏れ出し、ごく稀に悪神のジョブを授かってしまう人が出てくるケースが発生。それをどうするのか……今の社会問題です。

 

「と、言うのが簡単なジョブの歴史です。え~、みなさんわかりましたか?」

『・・・』


 ゴルドー学院本舎3階の北端から2番目教室、通称《3・2教室》。歴史の授業が行われており、担当講師のシーナ先生が最初の授業ということで簡単にジョブの歴史を話していた。

 生徒達が緊張してるだろうと思っての配慮だったのだが……教室内は授業が始まる前と変わらず重々しい空気に支配されていた。


 原因はわかりきっている。俺だ。俺が悪神のジョブである《魔物使い》を授かったからだ。なんでバレてるんですかねぇ?


 過去、悪神のジョブの所有者のほんとんどが何故か歴史に名を残すほどの大犯罪者になることが多いため、悪神のジョブを持つ者は問題を起こしていなくても恐れられ、関わろうとされないのだ。

 現に俺が座っている席の回りだけ人が居らず、孤立している。

 腫れ物って言うより爆弾のような扱いだな。


 最初は絶望していたが、これだけ予想通りの扱いを受けると寧ろ冷静になってくる。今では客観的に自傷するまでに……。

 それにしても、なんでだろうか。俺が《魔物使い》になった要因は。

 

 ジョブはランダムで授与されるわけではない。その人に一番適するジョブを判定しているはずだ。

 悪神のジョブを授かると言うのは、善神や天使の判断ではなく、バグや事故とかで、俺の人間性から判断されたわけではない。はず。

 ……もしかして、善神の中に封印されている悪神の意思が俺を適性者と判断した、とか?

 うわぁ、嬉しくてねぇ。


 俺は授業に全く関係ない憶測を頭の中で浮かべて自問自答しながら時間を使う。因みに、シーナ先生の授業は最初の歴史の話以降、耳に入っていない。



 悪神のジョブを授かっているから、のけ者……か。

 これじゃあ、昔話で裏切り者達を生んだ善神側と変わらないな。


 最後にそんなことを考えついたとき、授業は終了した。

 

ゆっくり更新します。

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