5-4:リベンジ隊結成
プレイヤー村に戻ってきて10日が経った。
その間に村に残っていた主だった攻略組のプレイヤーと作戦を練り、少数の前衛と大勢の後衛職を集めて討伐隊を結成する事にした。
「ニャ〜。お留守番なんて詰まんないニャ〜」
「仕方ないだろ。ミケとフィンは魔法耐性装備持ってないし、持ってたとしてもミケのHPじゃ即死の危険性が高いんだ」
「俺はHPでかいし耐えれるぞっ」
っとミケとフィンは今回の討伐隊には参加できず、プルプリ文句を言ってくる。
だからって二人を連れて行けば、ヒーラーの負担が重くなるんだから仕方が無いじゃないか。
それでも食い下がろうとする二人は、直後にフェンリルから説教されることになった。
集まったのは完全盾職が三人。全員が魔法防御特化装備を持っている。
弓職十人。ウィザード十人、ソーザラー五人、シャーマン五人。そしてヒーラー十人だ。
総勢四十三人……こんな大規模戦はプレイヤー村襲撃以来だな。しかも今回打つべきはたった一匹だし。
「とはいえ、キメラが大量に徘徊している訳だからね。ビーム攻撃中は正直、後衛火力の攻撃も半減するだろうし。長期戦になるのは必須だよ」
「そう、だよな……特に今回はソーサラーのMP付与に頼れないから、MP回復用に交替で休憩しなきゃならないだろう」
準備を整えたレスターと肩を並べて遠い南の、見えない地を望む。
「全員準備できたよー」
今回同行することになったモグモグ氏が叫ぶ。
「よしっ、移動開始しようっ」
「「おうっ!」」
一斉にヒーラー達が都市国家サームへ向う『帰還』用魔法陣を作り出す。
続々と人々が魔法陣に飛び込み、その姿を消した。
「行きましょう、ソーマくん」
「あぁ。アデリシアさんの火力には期待してるからね」
「えへへ。うんっ」
「さ、行くよアデリシア」
「は〜い」
レスター必死だな。
サームからは徒歩での移動になる。ここを拠点にしているプレイヤーに声を掛け、道中少しでも早く目的地に迎えるよう雑魚狩りを頼んだ。
追加で六パーティーが加わるが、彼らは途中で北側に引き返す事になる。
最初の二日は雑魚狩りパーティーにモンスターを任せていたので、比較的移動は早かった。
だがここからは俺達だけで行軍する事に。
「といっても、昼過ぎには目的の森に到着するね」
「あぁ。そのまま森に突っ込むかどうか……」
「森の入り口にいたキメラの群れは村長たちが掃除したんだろ?」
っと、今回の盾職の一人が尋ねてくる。
頷いて応えて見せたが、あの様子じゃ新しいキメラが産み落とされて森の入り口も元通りなんじゃないかとも話した。
「キメラってどのくらいの速度で成長するんだ?」
「んなの解る訳ねーじゃん。キメラの子供自体見た事ないんだからさ」
「村長たちが見たのって、どのくらいのサイズのキメラだったん?」
歩きながらあちこちから質問が飛んでくる。その都度、俺の仲間達がいろいろ答えたりしていた。
まぁ、確かにどのくらいで成長するかってのが一番重要だよな。
人間基準で考えれば十数年は必要だし、動物基準なら一年でも十分戦闘が出来るぐらいに成長するか。
けど――いくら動物同士の組み合わせによって生まれたモンスターだからって、動物基準でも考えられないよなー。
そうこうする間に例の森が見えてきた。
カゲロウが偵察にだした鷹のタっくんが戻ってくると、タっくんが見てきた内容をカゲロウが代弁する。
「キメラが多数集まってるって。前回よりも数が多いかも」
「っち。キメラの成長が早かったか、一度襲撃されたから各地に散らばってるキメラを呼び戻したかしたんだな」
レスターの言うどちらかなんだろうが、だからって今から増援を呼びに戻る訳にも行かない。
キメラの成長が早いのか、仲間を呼び戻したのか、そのどちらにしても時間を掛ければ更に自体が悪化する事に変わりは無い。
「とにかく、あの肉塊本体を倒さなきゃいつまで経ってもキメラとスライム種が減らない事になるからな」
俺は全員を振り返り、このまま進む事を進言する。
「意義無し。キメラのボスを倒せれば、この先の戦闘が楽になるだろうし、皆の心にも余裕が生まれるだろ」
「そうそう。減らせるって解っただけでも飛び上がるほど嬉しいし」
「行こう」
「行きましょうっ」
高揚する気持ちを抑え、号令を掛ける。
「よし、行こうっ」
森の入り口には数百匹にも及ぶキメラと、そしてスライムが群がっていた。
早くも飛行タイプのキメラがこちらに向ってくる。
が、こいつらは弓職に任せた。
攻撃射程という点では、魔法職よりも圧倒的に長い。
もちろん『挑発』の射程なんてとうてい届かないので、近づかれる前に撃沈して貰う必要があった。
接近してくるキメラ達に向って一斉に放たれる無数の矢。
キメラ達が途切れる事無く放たれる矢によってぼろぼろになる頃、攻撃射程となったウィザード達が一斉に大魔法を詠唱した。
「来るぞぉー!」
「爆風に備えろぉー」
皆状況が解っているようで、前衛以外は口を閉じ、手で目元を隠したりゴーグルをはめる者もいた。
――ッカ、と光ったかと思うと、辺りを物凄い爆風が襲う。
ダメージが来ないからと言っても、あの爆風の中心地には居たく無いな。
風が止むと、瀕死状態で辛うじて生き残っているキメラが数体いた。
盾三人と何人かが駆け寄って止めを刺す。
これで飛行タイプの殲滅が完了した。
乱戦中に上空から狙われると被害が出やすくなる。先に突っ込んできてくれたのは有り難い。
前方の森を改めて見るが、こちらに向ってこようとするキメラの姿は無かった。
残りは待ち構えてるって訳か。
「ギリギリまで近づいたら支援スキルの掛けなおしで。盾持ちパーティーが先頭に、火力パーティーは後ろから援護で」
「オッケー」
「俺は左を受け持つ。村長は真ん中な」
「真ん中のほうが難易度高そうなんですけど?」
「村長はセンターって決まってるんだよっ」
そんなぁー、と情け無い声で抗議。もちろん本気ではない。
みんながひとしきり笑ったところで、前進を再開した。
予定通り、弓職の射程ギリギリまで着てから支援の掛けなおしをする。
準備が整い、レスターが『ロングリーチ・ショット』という、射程150メートルもあるスキルで一匹を釣る。
釣られたのは、なんと群れの三分の一ほどの数。
「ごめん。釣り過ぎた」
「いや、いいよ。待ち構えてたぐらいだし、こうなるだろうなーとは思ってたから」
慌てて後ろに下がったレスターを見送り、剣と盾を構えて前を見据える。
キメラ衝突まで100メートル。
後ろから防御シールドの魔法が飛んできた。
衝突まで50メートル。
前方に巨大な穴が出現する。
モグモグさんが召喚した、土の精霊が作った落とし穴だろう。
その穴に落ちて悲鳴を上げるキメラが多数。跳躍して難を逃れるキメラはそれ以上だった。
衝突まで10メートル。
「さぁ来い、出来損ないどもめ!」
「うぉりゃああぁぁぁっ」
「盾の錆にしてくれるわぁっ!!」
剣と盾を打ち鳴らしてヘイトを貯める。
衝突まで、3……2……1……
「シールドスタンッ!」
先頭のキメラに向って盾を真正面からぶつける。吹っ飛んだキメラの背後から飛び出してきた牛顔のキメラは、その額に矢が突き刺さった。




