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『Second Earth Synchronize Online』  作者: 夢・風魔
第5エリア『討伐』
88/95

5-1:南の大地にて

 南側の攻略開始から一ヶ月。

 攻略組のレベルが平均で80ぐらいになった。

 北よりのエリアは、もうほとんどモンスターの姿は無い。

 けど、少し奥に行けばまだうようよしているっていうね。


「こんだけぶっ倒しまくってるのに、なんか数減ってない気がするんだけどよぉ」

「繁殖してるんですかね?」

「カゲロウ、気味の悪い事言うなよ……」


 戦闘中にも関わらず、いつものノリで軽口を叩き合う双子。

 フィンは否定派みたいだけど――


「あながちそれは有なんじゃね? だって、ゴブリンとかって明らかに子供みたいな体格のもいたじゃん? 今までみたネームドとかにもさ、卵から孵化したばっかみたいなのを召喚してたのもいたし」

「おい、ソーマまでホラーな事いうなよ」

「なぁにフィン。ホラー映画苦手ニャかぁ?」

「ちょ! 苦手とかねーし。怖くもねーしっ。だいたい幽霊なんか存在しねーって」


 慌てて戦斧を振り回すフィン。

 その斧に滅多切りされるモンスターが、若干不憫にも思ったり。


「君。幽霊は存在しないというがな、ほら、あそこに見えるのはなんだと思う?」

「え?」


 フェンリルが指差した方角に、ぼぉっと浮かぶ白い塊が――


「えーっと、レイス?」

「ご名答〜! 座布団一枚あげようか?」

「……いや、いいっス。すんません。幽霊は存在してました」

「解ればよろしい」

「って、呑気に構えるなよ! レイスはレベルドレインするんだぞ。あんな大量にいたら、どんだけ経験値持って行かれるかっ」


 レイス――普通はダンジョン内だとか廃墟とかに生息してるタイプのモンスターだってのに、南側には生息場所の常識がまったく通用しない。

 南側全体が、まるでダンジョンみたいな仕様だ。


「あー、はいはい。まとめて全部焼き払いますよ。やればいいんでしょ、やれば。うっうっ、これじゃまるで奴隷だわぁ」

「プリたん。しっかり働きやぁ。鞭でしばくでぇ」

「やかましい!」

「うわぁ〜ん。振ったのはプリたんやのにぃ。ソーマー、仕返ししたってぇ」


 なんで俺が……。

 絶妙な所でフェンリルがしおらしくなったり、それ見て百花さんが悪ノリしたり。


「まったく、緊張感の無いパーティーだよね」

「……あぁ。それに関しては同感なんだが。レスター、お前は何してるんだ?」

「ん? レイスの相手はフェンリルさんだけで十分だろ? だから僕は座ってお茶でもと――」


 お前も十分緊張感ねーよ。

 隣ではアデリシアさんまでクッキーとか取り出して頬張ってるし。

 美味しそうだな。


 少し先では迫り来るレイスの群の前に立ち、長い呪文の詠唱をしているフェンリルの姿が見える。


『天上の星干よ、あまねく精霊たちよ。全ては光となりて、命無きものたちを輪廻の輪に返さん。昇華リザレクト・ソウル


 彼女の詠唱が完成し、辺り一面を物凄い光が包み込む。

 既に彼女の間近まで来ていたレイスの群は、全てが光に包まれて――そして消えた。


「っふ。楽勝だな」

「おつー。でもその魔法でモンスター消すと、ドロップアイテムがゼロっていうのが残念ニャよねー」

「……贅沢言うな」


 聖書でポンと叩かれたミケが舌を出して肩を竦めた。

 確かに残念だが、アンデット系の群に対してはアレが一番安全に敵を倒せる方法なんだよなー。

 レベルが下がるぐらいならまだいいが、下手に大量に囲まれると死ぬ可能性だってあるし。

 少しでも危険が少ない戦い方をしたい。


 無理をしない。

 ソロ活動は絶対にしない。

 少しでもヤバと思ったら『帰還』用魔法陣を展開する。

 全プレイヤーの間で決めた事だ。

 時には魔法陣を出しっぱなしで戦闘する事もあった。

 まぁ、そのお陰で戦死者は今のところまだ出ていない。


 南側にもちょこちょこと拠点が作られたりして、何日もこっちに滞在することもある。

『帰還』すれば、また振り出しに戻ってしまうが、安全性を考えたら止む無しだ。


 俺達の目的は二つ。

 一つはモンスターを少しでも多く殲滅する事。

 もう一つは『迷いの森』を探す事。


 南側に来て解ったけど、草木すらまともに生えていない、どうみても荒野ばかりの景色だ。

 森なんて、どこにあるんだ?

 ってぐらい、ごつごつした岩肌ばかり目に入る。


『っぴぃぃぃ』

「あ、帰ってきた。お疲れ様。森は見つかったかい?」


 カゲロウが腕を伸ばし、その腕に小型の鷹がとまった。

 職業がレンジャーだったカゲロウは、何種類かの動物を操る事もできる。

 俺とフェンリルがこっちに来ている間に、そんな事もできるようになってたんだもんなー。

 ハスキー犬が鷹と会話してる(?)光景って、なんとなく微笑ましい。

 ただ、狼を出して共闘してる姿は、笑える。


「ソーマ! 見つかったよ!! ここから南南西に向った所に、かなり大きな森があるらしいよっ」

「マジか! やった。タっくんに感謝しねーと」

「タっくん偉い偉い」


 鷹のタっくんはご主人に褒められ、満足気に羽を広げている。

 それからカゲロウがカバンから卵を取り出し、タっくんが卵の中へと吸い込まれる。

 あの中、いったいどうなっているのやら。


「じゃ、南南西に向って進もう」


 意気揚々と号令を掛け歩き出す――のに、


「あー、まだお茶飲み終わってないから、待ってくれる?」


 ……なんて緊張感の無いパーティーなんだ……。






 二時間ほど掛けてようやく辿り着いた場所。

 そこには確かに森があった。

 ただ、想像していた森とはまったく違う。


 葉を茂らせた木は少なく、大部分が禿げ上がった巨木だった。

 それでも、元々は大きな森だったんだろうと解るほどの木が立並んでいる。

 更に想像とは違うのが、森の中をモンスターが闊歩していた事。

 確かライラさんの手紙には、魔物も入れない結界が張られてるって書いたあったはず。


「モンスター、いるな」

「あぁ……もしかして違う森、とか?」


 フィンと肩を並べて森を観察する。

 モンスターは気づいているのかいないのか。とにかく森から出てくる気配が無い。


「あれ見るニャ」


 ミケが顔を覗かせ、森の一点を指差す。

 じぃーっと見つめる先に、大小二体のモンスターが見えた。

 外見はほぼ同じ。

 違うのはサイズだけ。


「あれ、親子とかだったら、どうするニャ?」

「いや、どうするって。モンスターなんだからぶっ倒すだけだろ?」

「そうじゃないニャ。親子だったら、やっぱり繁殖してるって事ニャ。繁殖してるって事は増えてるって事で――」


 倒しても倒しても、きりがないって事だな。

 数の暴力で責めれば、増える速度より減らす速度の方が勝るんだけども。

 なんせこっちは1600人程度だし、この世界で戦闘能力持ってる人なんて数百人だ。

 今までの様子だと、増えるほうが早いって訳じゃなさそうだけど、減りもしない感じだな。


「で、どうするかね?」

「うーん。フェンリルはどうする? 入れそうか?」

「何故私に聞く」

「いや、こういう時はヒーラーの意見聞いたほうが良さそうかなと思って」


 危険な場所に行く場合、負担が一番重いのはヒーラーだ。

 ヒーラーが無理と感じたら、突っ込まないのが吉だろう。


「……危険な気はする。でも調べなきゃ何も解らないだろう。危なくなったら直ぐ『帰還』を出す」

「わかった。じゃ、行くぞ」

「うっし。んじゃしんがりは任せろ」

「オっくん出すね」

「カゲロウの、その動物の頭文字だけとったネーミングセンス、どうにかならないかニャ」

「もう名前つけちゃってるから、変更できないんだよ」

「私は覚えやすくていいと思いますぅ。狼のオっくん、可愛いじゃないですか」

「うんうん、可愛いねオっくん」


 本音では「可愛いねアデリシア」って思ってるんだろ?

 常にアデリシアを守るように、傍にいるしな、レスターの奴。

 おかげで後衛の守りを気にしなくて済むのはありがたい。


 先頭は俺。すぐ横にミケ。そしてカゲロウ、アデリシア、レスターが続き、その後ろにフェンリルと百花さんが全体のサポートをする為に控える。最後尾がフィンだ。

 防御力でいうと、俺の次に固いのはフェンリルだったりするんだけどな。


「さて、森の大掃除、開始だっ」

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