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『Second Earth Synchronize Online』  作者: 夢・風魔
第4エリア『真実』
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4-18:消臭

「おぉ マジで教会が出来てる」

「これでプレイヤー村を拠点に動けるな」

「なんか埃っぽくなったなー、俺の家。っつーか、なんかほんのり臭くねー?」


 いつまでも崖の上でたむろってるのもなんだし、カンダさんの話だとプレイヤー村への『帰還』魔法が有効になってるって事で全員で移動してきた。

 一度メルシュタットに行き、そこから徒歩でプレイヤー村へと向い、今到着したばかりだ。

 明日にでもロブスさんの所にいって、無事皆と合流できたって話しに行こう。

 まぁ、できればこっちの世界じゃないところで再会したかったんだけどな。


 それにしても、確かに臭い。


「おかしいな……食べ物とかが腐って臭わないように、穴掘って埋めたんだけどなぁ」

「は? 君、そんな事やってたのか?」

「いや、ここに落ちてたらしいからさ、俺。ロブスさんに拾われて、フェンリル探す前にここに来たんだよ。そしたら、食べ掛けの食料とか、保存用のとか、いろいろあったからさー」


 もし戻ってくるような事があったら――と思って、その時に腐った食べ物が散乱してたら嫌だし。

 穴を掘って埋めたはずなんだが、やっぱり臭う。


「村長、そりゃー穴掘って埋めたぐらいじゃ、臭いは残るぜ」

「むしろ土と混ざって良い肥料になってるかも?」

「うへっ。マジで?」


 腐った食べ物の肥料とか、嫌過ぎる。

 寧ろ肥料って家畜の糞とかじゃなかったか?

 そんな突っ込みは他所に置いて、とにかくこの匂いをどうにかしよう。

 掘った穴は確か――


「この辺りに穴を掘って埋めたんだけど……どうする? 掘り返してもっと深い穴でも掘るか?」


 俺たちの話しを聞いていたカンダさん、が徐に手を上げて発言権を求めてきた。


「あのー、いいですか?」

「あ、どうぞ」

「生ゴミというか、ゴミは基本的に焼却するもんだと思うんですが」

「それってリアルではだろ。あ、ここもリアルなのか、一応」

「確かに燃やせば匂いを消せるだろうけど……。地球じゃ機械使って高温焼却してるしなー。そんな技術、こっちの世界にあると思う?」


 あちこちからカンダさんの意見を否定する声が上がった。

 ガソリンでもあれば、ゴミにそれをぶっかけて燃やせるだろうけど……。

 ただ燃やすだけじゃ、綺麗に焼却するのは難しいだろうなぁ。


「あのー、機械は無くても魔法があるじゃないですか」

「「え?」」


 にっこり微笑むカンダさんが、ぼそぼそっと詠唱すると……

 生ゴミを埋めた辺りの地面が盛り上がり、そして爆発した。


「あ、まだ土を被ったままでしたね。これは失礼」

「ってあんた! 行き成り爆発させるって、俺たちが巻き添えくらったらどうすんだよ!」

「いや〜、大丈夫ですよ〜。ちゃーんとコントロールしてますから。あはははははは」


 笑って言うなぁっ。






 数人の魔導師で炎の上位攻撃魔法をぶっぱなし、見事『元生ゴミ』は消し炭と化した。

 ただ、土そのものに臭いがこびりついてしまってて、根本的な解決には至らず。

 次の作戦では、精霊使いが土の精霊を呼び出し、臭いの浄化を頼む事になった。


「ってか、最初からこうしてればよかったんだな」

「カンダさん、GMなのに案外役に立たないな」

「……すみません」


 肩を落とすカンダさんの隣で、フィンが笑ってみている。

 精霊のお陰でようやく臭いの件が解消。


 プレイヤー村の村民プレイヤーは自分の家を使うとして、村民ではないプレイヤーにも、この際ここを拠点に使って貰うことにしよう。

 空いている家を使うもよし、誰かの家に泊めて貰うもよし、新しく家を建てるのもよし。


「ここに居るのって何人ぐらいなんだろうな?」

「えーっと、お待ちください。GMコマンドがまだ使えるようなら――あ、使えた。こちら側には約二〇〇〇人ほどが居ます。アズマ社長のところには倍の人数が居る筈です」

「倍、か……」


 六〇〇〇人がこの世界に転移させられたのか。


「GMコマンドがまだ使えるうちに、こちらに有利な条件を――これはダメか、ならこれなら――よし。……うーん……じゃーこれは?」

「カンダさん、何やってるんだろうな?」

「フィン、それを俺に聞いても解る訳ないだろ」

「だよな」


 だったら聞くなっ!


 辺りを見渡してみると、肩を落として茫然自失なプレイヤーの姿も見えるが、意外とそうでもないプレイヤーのほうが多い事に気づく。

 早速家の掃除に取り掛かっている人、初めてプレイヤー村に来て興奮している人、そういう人が空き部屋が無いかと探す様子も見てとれる。

 俺も掃除しに行くかな――


「っと思ったら、もうやってたのか」

「はい。ソーマ君が生ゴミを出してくれてたから、お家のほうは埃を掃く程度で済みました」

「うちの部屋はどこなん?」

「部屋数見て理解しろ。男女で分けてるだけだぞ」

「じゃー、うち、どっちの部屋なん?」

「……キッチンで一人で寝ていろっ!」

「いやぁ〜ん。プリたんが虐めるぅ」


 あー、なんて緊張感が無い連中だろう。

 異世界にやって来たってのに、なんでこう、いつもと変わらないんだろう。

 俺はかなり焦ってたってのに。


『えーっと、こほん。皆さん聞えますか? カンダです。極小規模エリアにのみ聞えるGMコマンド専用チャットでお話しております。

 このチャットもいつまで使えるか解りません。どうやら私のGM権限が少しずつ奪われていっているようでして、恐らくアズマ社長の仕業かと思われますが。

 えーっと、要件をお伝えします。

 まず、この世界は本物のセカンド・アースです。

 ゲームではありませんが、この世界と月面の裏側にある時空の歪によってゲームのシステムと繋がっております。

 ただし、まったく全てが同じとはいきません。

 モンスターの反応速度などはこちらの方が上ですし、行動パターンも一定とは限りません。

 ですので、十分お気をつけください。

 このような事になってしまい、申し訳ないとしか言えないのですが……それでも、私は皆さんにこの世界を救ってほしいのです。

 その為に私が出来る事を幾つか行わせて頂きました』


 カンダさんの話しを皆、黙って聞いていた。

 少なくとも、ここに居る仲間達は不平を口にする事無く、真剣な面持ちで耳を傾けている。


『まず、モンスターから得られる獲得経験値を三倍にしました。

 本当は一〇倍ぐらいにしたかったのですが、三倍以上はコマンドが受け付けてくれませんでしたので、申し訳ありません』


 十分じゃね? とフィンが笑う。

 経験値が戻ってきたのか……俺とフェンリルだけの頃は経験値が消えてたんだけどな。


『戦闘時にHPがゼロになった場合、どうなるか解りません。本来の計画であれば、戦闘不能イコール、ログアウトという処理にしておりましたが……アズマ社長やこの世界の神によって、いろいろと当初の計画がずれてしまったので……。

 ですので、戦闘不能を回避する為の手段を幾つかご用意いたしました。

 まず一つは、ヒーラー系職業に《リザレクションリバース》というスキルを用意しました。

 このスキルを事前に受けていれば、戦闘不能時にも一度だけ即復活が可能となる効果を持っています。

 二つ目、《リターン》というスキルをご用意しました。こちらは誰でも使えるスキルで、唱える事で即このプレイヤー村へと戻ってこれます。

 ただし戦闘中限定のスキルでして、またプレイヤー村以外には移動できません。

 三つ目は、戦闘不能を回避するアクセサリーを、全員に配布させて頂きました。既にインベントリに入っているはずですので、ご確認ください。

 まだ届いてないという方は、申し訳ありませんが私のところまで取りに来て頂けますでしょうか。

 えーっと、アイテムの内容はご覧になって頂ければ解ると思います。

 装備していなければ効果がでませんし、使用できる回数も一〇回と限度がありますのでご注意ください。

 一つ目、二つ目がどうしても間に合わない時――の保険のつもりをお使いください』


 カンダさんの長い説明が終わってすぐにインベントリを確認。

 見慣れない十字架のアクセサリーが入っていた。




------------------------------------------


【守護のクルス】

 戦闘不能状態を10回だけ回避できる。

 残り回数:10


------------------------------------------


 ステータスボーナスとかは無さそうだな。


「リターン!」

「え?」


 突然フィンが叫んだ。

 だが何も起きない。


「兄さん……説明ちゃんと聞いてた? カンダさんは戦闘中限定って言ってただろ?」

「え? 言ってたっけ?」


 助けを求めるような目でこっちを見るが、俺の答えは「言ってた」の一言だ。

 皆が冷めた目でフィンを見つめる。


「そ、そうだったっけ? ははは。あ、フェンリルはちゃんと新しいスキルの確認とかしたか?」

「話題を逸らしたな。そういや、ヒーラー系って話だけどさ、これって武器を持ち替えてクラスチェンジしたら、誰でも使えるんじゃね?」

「君は使えないだろ。レベル1の初期武器を捨てた君には」

「っぐ。昔の事を持ち出さないでくれよ」

「そんな昔の話だったかな? まぁ新スキルは出てるよ。効果時間は三十分。常に効果を切らさないようにしておかなきゃね」

「あれ? おかしいニャ」


 小さな本を手にしたミケが、宙を見つめながら首を傾げていた。

 空いている手でなんども宙をなぞり、タップしているような仕草をしている。


「どうしたんだよ、ミケちゃん」

「ミケ、何かあったのか?」


 俺とフィンが同時に声を掛け、ミケが困惑した顔でこちらを見た。


「武器を持ち替えても、職業が変わらないニャ」

「「え?」」

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