間話3-2
「例えこの世界が現実になったとしても、俺は皆となら魔王とだって戦えるぜ」
彼のその言葉に、私はある思いを抱いた。
本当にこれが現実になればいいのに。
この世界をずっと冒険し続けられればいいのに。
彼と――彼らと共に。
そう思ったからこそ――
そう願ったからこそ――
私は彼の手を取った。
「仕方ない。後ろからこそこそ援護してやるよ」
そう、言いながら。
彼の手を取った瞬間、頭の中で女の声が聞えた。
――その願いを叶えましょう――
初めはイベントの続きなんだろうと思った。
思った途端、足元が消えうせ、それまで無かった穴へと真っ逆さまに落ちた。
彼と、そしてアデリシアも一緒に。
「だ、大丈夫か、二人とも」
「私は大丈夫。ソーマ君こそ、大丈夫?」
「あぁ、なんとか。フェンリル?」
私の手を離すことなく、ソーマはアデリシアも助けたのか……。
まったく、器用な奴だ。
「大丈夫だ。けど、下が見えない……」
――貴女の願いを叶えましょう。彼と共にセカンド・アースへと誘いましょう――
嬉々とした女の声が頭に響く。
運営のアナウンスにしては聴覚ではなく、頭に直接響かせるというのは初めてだな。
――さぁ、セカンド・アースへ――
さぁ――と言われてもね。
この穴の底に異世界でもあるっていうのか。
まさか……ね。
VRMMOは幾つかのタイトルをプレイしてきた。
確かにこの【Second Earth Synchronize Online】は他のタイトルと比べると、無駄にNPCがリアルに作られているさ。
ゲームとは無関係な行動も多々ある。
だがら……時折ゲームだってことを忘れる事があった。そんな時は必ずと言っていいほど視界にノイズが入り、ようやく我に返ってゲームだというのを思い出させられたな。
それで、このイベントの目的はなんだろうな。
――貴女をセカンド・アースへと誘うためのものです――
個人の思考に対して返事をするシステム……ね。
これが私が招いた結果なのだとしたら……
二人を巻き込むわけには行かない。
「糞っ、指が――」
ソーマの手も限界……そうだな、女二人を抱えてるんだ。
本当に、君って男は――騎士だな。
「案外、ただのセル抜けだったりして。ちょっと降りて見ようか」
見下ろす視線の先に明かりらしきものは無い。それどころか、真っ暗で何も見えやしない。
「行くな、フェンリル! 戻って来れなくなるぞ、うぐっ」
君にも聞えているのか、女の声が。
そうか。
思ってはいけないのだろうが、彼と同じである事が嬉しく思う自分が居た。
自然と顔が緩む。
だが――
「私は大丈夫だ。一人でもなんとかやっていく。だから、アデリシアを上に連れて行け!」
これが手の込んだイベントならそれでよし。
後でドヤ顔でかっこつけてやればいい。
だけど、もしそうじゃなかったとしたら。
二人を巻き込むわけには行かない。
「そうじゃない。そうじゃないんだ!!」
彼の手に力がこもったが、それを振りほどいて漆黒の闇の中へと身を投じた。




