3-14:プレイヤー村襲撃事件
「これネームドモンスターじゃねーぞ。強いて言えばレイドボスだろ」
辺りからそんな言葉が聞こえてきた。
レイドボス。聞きなれない名前だけど、ネームドよりは強そうだ。
言葉の響き通り、見た目も強そうだ。っていうか、明らかにネームドよりでかい。
今まで見てきたネームドモンスターは、大体三から五メートルほどだろうか。
けど、今プレイヤー村に現れたのは小さいものでも五メートル。大きい奴だとその倍近くありそうだ。
「ちょ、折角造った家が速攻で壊されるっ!」
フィンが叫ぶので彼と同じ方向を見たら、確かに家が一軒粉砕されていた。
「俺たちの苦労の結晶がぁーっ!」
「二時間掛けて造った家を、数秒で破壊しやがって!」
「村長の家を死守しつつ、奴等をぶっ倒すぞ!!」
「「おーっ!」」
おぉ……凄い団結力。
「俺たちも行こうぜ、ソーマ」
「あ、あぁ!」
呆然と突撃していく皆を見ていたが、指を咥えて見ているだけじゃ家は守れない。
俺たちのこの家を死守し、モンスターも全て倒せば真のプレイヤー村が完成する。
ここを拠点にして各地へと冒険に繰り出す。
まるで夢のような話じゃないか。
それを実現するために、俺たちは巨大モンスターへと立ち向かった。
襲撃モンスターは巨大タイプと通常の一般モンスターとが入り乱れ、かなりの数が投入されたようだった。
まぁこっちも五〇〇人超えの集落だしな。全員が毎晩戻ってきている訳じゃないが、普通に考えたら千単位で襲撃しなきゃ、瞬殺されるだろう。
とはいえ、村長、つまり俺が寝泊りする家を破壊されたらこちらの負けだ。
そのうえ朝までにボスモンスターを全滅させなきゃいけないし。
西は巨大モンスターの群が、東には一般モンスターの群が。
俺たちは東側に行き、手近なモンスターの群へと斬りかかる。レベルは40前後か。これなら余裕――と言いたいところだが数が多い。
「ソロプレイヤーもレベルの近い者同士でパーティー組んでくれ。特に支援バフが使える人は、パーティーに最低一人入れるんだ」
「ボクは君たちとレベル帯が違うから、ボスの方に行かせて貰うよ」
「あぁ、はなっからお前とパーティー組もうなんて思ってないよ。華やかなボス戦は任せる」
「任せて貰おう。アデリシア、頑張ってね」
「うん。レスターも頑張ってね」
アデリシアさんに応援され、弾むようにレスターは走っていった。
俺も正直、巨大ボスの所に行きたいけど……辛うじて確認できたボスのレベルが52だった。
勝てる勝てない以前に、攻撃が当る気すらしねー。
俺たちのパーティーにもソロプレイヤーを加え、パーティー最大人数の一〇人フルにする。
「おぉ、村長のパーティーじゃん!」
「うはっ、村長よろ」
「お守りします、村長!」
「いや、俺盾職だから。ってか守らなきゃいけないのは家なんで」
紙装甲のアデリシアさんとカゲロウ、今回加わった精霊使いの女の人を中心にみんなが配置に付く。
嬉しいのは殴り神官が居た事だ。回復も出来る彼のお陰でフェンリルの負担も減るし、彼女の持たない攻撃特化バフなんかもあって火力面がアップした。
「おおおぉ、ダメージが一割増になってる!」
「元々高火力だと、その一割が結構な量になるんだよねー。両手斧戦士羨ましいな」
フィンを見てそう言う殴り神官も、まさかの二刀流鈍器でかなりのダメージ出してるんだが……。
俺も負けて入られない。
『挑発』で敵を集め、そこに範囲攻撃を叩き付ける。
当然倒しきれるはずが無いが、後ろから追加で範囲魔法も飛んでくるから問題無い。
初めは意気揚々と戦っていた俺たちだったが、枯れることの無いモンスターの増援に疲れの色が見え始める。
これ、延々と朝まで増援が出続けるんじゃないだろうな……。
そう思って辺りを見回してみる。
あっちでもこっちでも戦闘が行われていた。
いつの間にやら誰かが松明を作ったらしく、そこかしこが明るく照らされていた。
「SPが足りない……この連戦は流石に無理!」
精霊使いの女の子が悲鳴を上げた。けど悲鳴を上げたいのは彼女だけじゃない。
「交替で戦うようにした方が良さそうだよな。後方にソーサラーに待機して貰って、SP付与エリアとかあったらいいんじゃないかな?」
「そうだな。ちょっと走って声掛けてくるか」
「フィン、走る気力はあるのか?」
「まぁ、ギリギリ」
そう言ってフィンは走って行った。
残った俺たちは敵の数を減らしつつ、ゆっくりと後退していく。
村の中心部、俺たちの家まで戻ってくると、意外なほど休憩をする人たちは居た。
「お、村長。そっちはどうだ?」
「あれ、カインさん」
休憩をしている中にカインさんの姿もあった。周りには二〇人ぐらいの高レベルプレイヤーが居る。【終わりなき探求者】ギルドの人たちだろう。
「雑魚なら余裕と思ったんですが……延々と沸きだしてきて、なかなか連戦は辛いですね」
「そっか。こっちもな、一体ボスを倒したら一体沸くっていう寸法さ。なもんで、パーティー単位で交替して戦うことにしたんだ」
考える事は一緒か。
カインさん所はギルド単位で動けるから、ギルドチャットで伝達すればあっという間に指示も出来て行動も早いみたいだ。
こっちは走りながら叫んで伝えるしかない。
「疲れたときは歌でも聴いて元気だしてね」
そんな風に声を掛けられ振り向くと、数人の男女が楽器片手に演奏し、一人が歌っていた。
心地のいい響きの歌だ。
「バードのスキルか」
丸太に腰を下ろしていたフェンリルが言うと、楽器を演奏していた男のひとりが頷いて説明してくれた。
「疲れた体を癒す効果があるっていう曲があるんだ。このイベント前までは効果が実感できなかったんだけど、疲労感を感じるようになってからだと効果が出るようになったんだよ」
「へぇー。まさにこんなイベント向けのスキルだね」
「お陰でここでずっと演奏会さ」
楽器を演奏しつつ、彼らが笑って応えた。
戦闘の方に参加したのでは? レベルだって上げたいだろうしと尋ねたが、どうやら演奏するだけでも経験値が増えているんだとか。
それに、好きで演奏しているから構わない――とも。
程なくしてフィンが戻ってきて、
「ソーサラーを何箇所かに分かれて配置してくれるよう頼んできたぜ。SP回復エリアには大きな松明を立てて解りやすくしてある」
「そっか。サンキュー。フィンが休めたら俺たちも再出撃だ」
「お、演奏かー。なんかこういうの見てるとさ、昔の映画をリメイクした奴を思い出すな」
「なんの映画だ?」
この後聞かなきゃ良かったと後悔した。
「豪華客船が沈没する奴。楽器演奏者が沈み行く舟の上で最後まで演奏するってシーンがあったんだ」
まるでプレイヤー村が撃沈されるようなフラグ建てんなよ、と心の中で呟いた。




