3-8:美味しく焼けました~♪
籠に詰め込んだ鶏。不幸な事にこいつらも石化能力持ちだった。
まぁ成功判定があったし、確率も低かったから俺とフィンが一回ずつ石化しただけだ。問題ない。
「で、これどうやって運ぶ?」
「帰還魔法でいいだろ。ただし布か何か被せないと、町の住民が石化するかもしれんぞ」
「じゃー何人かが先に行って、布買ってきて教会で待機しますよ」
カゲロウがそう言ってくれて頼もうとしたが……これはデジャブだろうか?
「前にもこういう事あったニャ」
「あったあった。んでさばきゃんしたんだぜ」
「うわー、不吉な事言わないでよ兄さん」
そんな事で全員で教会までは行く。
司祭には事情を説明して、誰もコカトチキンを見ないようにして貰い……かなり怒られたけど……そして布を買いに行く。
俺とカゲロウで布を買ってきて教会に戻ると、それを籠にすっぽり被せていざ移動。
「なぁ、これプレイヤー村まで運ぶの面倒くさくね?」
コケコケと五月蝿い鶏籠を分担して運びのは意外としんどい。
三つの籠にそれぞれ八羽ぐらい詰め込んだが、それがバタバタ暴れるので重く感じる。まぁ丸太よりは軽いが。
どこかで荷馬車を借りるかと相談していると――
「あ、あんた達、その籠の中は鳥か?」
「え? あー、コカトチキンですけど。見ない方がいいですよ」
恰幅の良いNPCが額に汗を浮かべながら声を駆けて来た。なんか香ばしい匂いのする人だな。
「売ってくれ!」
「「はい?」」
「いやー、助かったよ。最近冒険者が大量に来るようになってねー。食材の在庫も無くなってきて、慌てて肉屋にいったんだけどね――」
「どこも売り切れだったと?」
「そうなんだ」
コカトチキンを十五羽売って、代わりに荷馬車を借りる事ができた――が、食糧難がそこまで進んでいるとは。
「なぁ、物は相談なんだが」
料理人だったこの男の人の相談ってのが、なんとも嬉しい内容でもある。
「食材になるような魔物は捕まえて売ってくれないか?」
「え、食材になる……と言われても具体的に何が食べれるのかわからないし」
「じゃーリストを作ってやるよ」
そこでリストを作成して貰うと、意外と『それっぽい』動物系のモンスターはほとんど食べれる事が解った。
「なぁ、これってさ。捕まえてきて売るのと同時に、何匹かはさばいて持ち替えればいいんじゃね?」
「フィン、お前あたまいいな。食べ物の事に関してのみ」
確かに家畜を作ったところで誰がさばくんだって事になる。生々しい血を見るのは勘弁したいもんな。
「だったら肉屋を紹介しようか?」
料理人の人がそう言ってくれるので、ありがたく紹介してもらおう。
これを村民に広めて、出来れば他の町なんかでも交渉すれば肉類の確保は容易にできそうだな。
俺たちは手元に残った九羽を持って肉屋へと向かい、七羽を格安で売って二羽を無料でさばいて貰う事にした。
更に今後の肉取引の話もとんとん拍子で承諾を貰い、いざ村へと凱旋を果たす。
「――って訳なんだ。どうだろう?」
その辺にいた村民プレイヤーに話を持ちかける。
皆の反応は良好。それならと早速狩りにでるパーティーもいる。
「これでたんぱく質問題も解決だな」
今日はチキンのテリヤキで乾杯でもしよう。もちろんノンアルコールで。
「そんなにたんぱく質不足なのか……いや、そもそもゲーム内で栄養のバランスとか必要な訳?」
「気持ちの問題だろ。――って……なんでレスターがここに居るんだよっ!」
普通に返事したじゃねーか。いや寧ろなんでこいつが普通に話し掛けてくるんんだ?
「なんでって、アデリシアの様子を見に。元気にしているか心配だったからね」
「心配って……今更それを言うのか」
まともじゃないギルドに誘っておいて、しかも縛りプレイを要求されてたアデリシアさんを守ろうともしないで……。何考えてんだ、こいつ?
「ボクだってね、彼女がプレイスタイルを強制させられてた事なんて知らなかったんだ。知ったのは彼女がギルドを抜けるって言いに来た時だよ。知ってたら――」
「知ってたらなんとかしてたのか?」
俺の問いにレスターは間を置いてから頷いた。
今の間が気になるものの、こいつはたぶんアデリシアさんの事が好きなんだろうしな。たぶん、なんとかしようと努力はしただろう。
「あ、レスターだー。どうしたのー?」
で、当のアデリシアさんは呑気な声だしてレスターと普通に会話なんかしちゃってるしい。
おっと、こいつは暁に在籍してるんだよな。他のギルメンとか連れて来てないだろうな……。
「やぁ、アデリシア。鶏捕まえたんだって?」
「うん、そうなのー。レスターは一人なの?」
「うん。暁はね、今ちょっとゴタゴタしてるんだ」
「ゴタゴタ? どういう事なんだよレスター。正直、ここに暁のメンバーとか来てほしくないんだ。悪いが教えて貰えるか?」
「あぁ、いいよ」
こいつ、あっさり言いやがった。
「立ち話もなんだし、中に入るぞ」
フェンリルの呼ぶ声を聞き、俺たちはログハウスの中へと移動した。
「まぁ簡単に言えば、内部分裂だね。ギルマスと取り巻き数人、古参幹部だけど課金ばら撒きだけを目当てに入ってたメンバー。このゲームから加入している人達と、三つぐらいに分かれてしまっているんだ」
レスターは堂々と椅子に座り、当たり前のように出された果汁を飲みながら話しはじめた。
「たぶん、このゲームからの参加者は近いうちに脱退すると思うよ。課金目当ての人たちはどうかなー。一部は抜けるって言ってる。PSの上手い人たちばかりだよ」
「今更かよ」
フィンが悪態を付くが、まさにその通りだよな。
でも今更だからこそ、何で抜けるなんて事になっているのやら。
「レスターはどうするの?」
「うーん。俺はもう少し残るつもりだよ。分裂か解散か、見届けてからにしようと思って」
「見届けてどうするんだ?」
「うーん、途中脱退すると粘着されそうじゃない? だったら最後まで居て美味しい汁だけ吸わせて貰おうとね」
うわ……こいつなかなか性格悪い奴だな。
まぁでも、アデリシアさんみたいに特に何かされてるって事じゃないなら、自然解散の時に抜けるのが一番だろうな。
「あ、そうだ! レスターもご飯食べていくでしょ?」
「うん」
何普通に応えてんだよこいつは。
嬉しそうに厨房へと向うアデリシアさんを見送って、俺とフィン、カゲロウが顔を顰める。
「アデリシアって、天然だけど優しい子だろ?」
「そんな子を暁に入れたお前は、相当馬鹿だよな」
思いっきり嫌味を言ったはずなのに、レスターの野郎は笑いやがった。
「ところでさ、アデリシアって料理、大丈夫なわけ?」
「……帰った方がいい。死ぬほど不味いぞ」
「そうそう。もう状態異常のオンパレードだぜ」
「……え、えっと。匂いだけでも昏倒する凄さですから!」
随分酷いことを俺たちも言う。
だが一致団結してレスターにはお帰り頂きたいのだ。
だがこの作戦は失敗した。
「解った。どれだけ不味いか食わせてもらうよ」
あっさり興味持ちやがった。
こいつ、もしかしてマゾか?
そして香ばしい匂いを漂わせたテリヤキチキンが登場し、それを一口食べたレスターの感想。
「がっかりだよ……」
「え? レスターの口に合わなかった? うーん、次は頑張るね」
「違う。そうじゃないんだアデリシア」
「え?」
「がっかりだよ。不味い不味いってソーマ君たちが言うから期待してたのに、普通に美味しいじゃないか!」
「ちょ、おま、ここでそれ言うか?」
「えー! ソーマ君は私の料理嫌いだったのー?」
「いや、そうじゃなくって……レスターをさ、あ、おいフィン! そっぽ向いて関係ない振りすんな!」
「シラナイナー。シラナイヨナー、カゲロウ」
「ウ、ウン。シラナイヨー」
あとでこの二人絞めてやる。




