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『Second Earth Synchronize Online』  作者: 夢・風魔
第3エリア『混乱』
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3-5:テスト第二段階

 朝になって被害状況を確認。

 幸い小さな穴一つで済んでいたので、綺麗にノコギリで切って丸太を継ぎ足せばいいか……。

 買出しに行った女子が戻って来るまでにその作業を終わらせてしまう。


「けどこれ、見張りたてないとまずい状況だな」

「だな。いくら敵が弱くたって、家そのものには関係ないもんな」

「それに、あの数ですからね。見張り一人じゃ厳しいかも」


 とはいえ、俺たち六人じゃなー。

 腕を組んで項垂れる俺達の所に、朝食の買出しに行ってた女子軍団が戻ってきた。


「ただいまです〜」

「ただいまニャー」

「行きはよいよい帰りはってアレだな」

「ん? モンスターにでも襲われたのか」

「いや。行きは帰還魔法で一瞬だが、帰りは徒歩ってのがね……」


 あーなるほど。それにしては早かった気がするけど。速度アップの魔法で走ってきたのか。

 ログハウスの軒先で少し遅めの朝食を取りつつ、今後の話し合いをする事に。


「家の周りをさ、明かりで囲えばモンスターが沸かなくなったりしないかな?」

「君、それ別のゲームだから。そもそも日中にもやってきてたんだぞ」

「やっぱり見張りですかねー。男女に分かれて二交替制とか」

「二交替制だと見張りの時間長くて、寝る時間が少なくなってしまうニャね」

「寝不足だと野宿の時と同じです〜」


 うーん……良いアイデアが浮かばないな。見張りが現実的なんだろうけど、ミケの言うように睡眠時間も短くなってしまう。

 出来れば安心して寝たい。

 あのアモンたち、レベルは低いが数に物を言わせてるからなー。とはいえ、こちらが圧倒的に強いと解ると逃げていったし。

 こっちも数揃えればはなっから襲ってこないかも?


 そんな事を考えていたら電子音が鳴った。


「ん? なんだこの音」

「あ、兄さんも聞えたの? ってことは――」


 俺にも聞えた音をオリベ兄弟だけじゃなく、その場に居た全員が聞いた。


『皆様こんにちは。【Second Earth Synchronize Online】運営チームです。――


「お、なんだなんだ」


 運営チームからのアナウンスだ。音声ではなく文字だけでのアナウンスだな。


『イベントをお楽しみの所、皆様へご報告がございます。ただいまよりテストの第二段階へと進めさせていただきます――


 え?

 第二段階って、どういう事だ?

 皆に視線を送ると、全員が俺と同じように困惑したような顔をしている。


『これより、現実とゲーム内での時間経過設定を更に変更させて頂きます。――

『当初お知らでは現実の一時間でゲーム内の一日とさせて頂いておりましたが、更に短い時間で一日とさせて頂きます。――


 マジか。合宿延長って事だな。嬉しいような、不安なような?


『尚、詳しい時間については伏せさせていただきます。どうぞ、残りのイベントをお楽しみください。』


 アナウンスはここで終わってしまった。

 時間の事を詳しく教えないって、どういう事だよ……。


「うーん、本格的に家の重要性が出てきたな」

「フィン、今それなのか……」

「運営の意図がよく解らないが、フィンの言う事も一理あると思うぞ。今のまま残り時間をここで過ごすとしても、睡眠不足が加速するだけだと思うし、折角のイベントもまともに遊べなくなる」

「まぁそうだけど」


 うーん、だったら――


「なぁ。こっちの人数を増やさないか?」


 俺は皆に提案してみる。


「同じようにさ、宿無しで困ってるプレイヤーは相当数いると思うんだ。だからさ、そういうプレイヤーに声掛けて、ここでログハウス作ってもらって見張りの人数確保とか出来ないかな?」


 作り方はロブスさんに教えて貰いながら、あとはプレイヤーの偉大な生産能力でなんとでもなると思う。人数いれば一軒作るのに丸一日あれば出来るんじゃないだろうか。


「私、賛成です。沢山人がいたほうが楽しいですし」

「あのちっこいの以外は森の中にはいないし、あれさへ対策できれば安全な場所だよな、ここ」

「面白そうですね。賛同してくれるプレイヤーがいればですけど」


 そこなんだよなー。

 でもやる価値はある。






「宿無しプレイヤーのみなさぁ〜ん。野宿で寝不足のみなさぁ〜ん」


 宿無しのみなさんってのも、かなり酷い表現だな。まぁ当ってるんだけど。

【ルイビス】でまずログハウス計画の話をもち掛ける事にした。さっきの運営からのアナウンスでテントや野宿生活のプレイヤーはかなり焦っている様子だな。

 アデリシアさんの話を興味深そうに聞いてるのが、今ここにいるだけでも一〇〇人以上はいるよな。まぁ後ろの方に立ってる人たちには彼女の声も聞えてないけど。

 そこでフォローするのが俺とフィンとフェンリルって訳だ。


「何の話してるのかさっぱり聞えねーぞ」


 そういうプレイヤーの近くに行って別口で説明していく。


「生産仕様になってるから、木を切り倒すのも斧で数回叩けば倒れるし、加工も一瞬で終わる。作り方はNPCの専門職の人に教えて貰えるから大丈夫だ」


 ロブスさんも快く引き受けてくれたし、他にも職人仲間を連れてきてくれるらしい。もちろん雇い賃払うんだけども。

 人数さへ集まればちびっこアモンなんて怖くない。

 話を聞いていたプレイヤーもかなり興味を持ってくれたみたいだ。「どんな家作るか?」なんて身内同士で話し合っている。


「そこはまぁ、凝ると時間かかるだろうから四角い普通の形がいいと思うぜ」


 フィンがアドバイスすると――


「あー、じゃ俺、設計しようか? 単純でも機能性のありそうなログハウスとか」

「え? どちら様?」


 まったく知らないハーフエルフの男が名乗り出てきた。


「リアルで建築士なんだ。まぁ二級だけどね。一応設計経験はそこそこあるよ」


 おぉ!

 なんてナイスな人なんだ。そんな会話をしていたら――


「私、ドールハウス作るのが趣味なんだ。こういうのも役に立つかな?」

「俺は大工だよ。見習いだけどね。普通の一般住宅とか作ってる」

「俺も俺も。働き出してまだ一年だけどな」


 おぉぉ。これは思ったよりも効率よくログハウスが立てられるかも?


「人数揃ってくれたらモンスターの妨害工作も無くなるだろうし、安泰だな」

「だなっ」


 フィンと揃って喜んだ――のも束の間。


「おい、モンスターって何だよ」

「妨害してくるのがいるのか? まさかモンスターの生息地帯に家建てようとしてんのかよ」


 一気に不安が広まってしまう。

 必死に「モンスターは弱いんだ」とか「攻撃したら即効で逃げるんだ」って説明しても、もはや聞いては貰えない。


「お前等……そういうのは先に出しとけよ」


 別の場所で説明していたフェンリルが戻ってきて説教を食らった。

 うん、順番間違えたと思うよ……トホホ。


「なんか面白そうな事計画してるじゃねーか。俺らも混ぜてくれよ」

「え?」


 背後から声を掛けられ振り向くと、カインさんとモグさん、他数人の【終わりなき探求者】ギルドの面々が居た。


「なんだ、お前等宿持ちだろ?」

「二部屋借りて――っぶ、なんだその格好っ! お、おま、まるっきり変態じゃねーっ痛」


 あ、カインさんがど突かれた。しかも聖書の角がモロにヒットしてるな。

 素肌の露出すら少ないものの、まぁ、この手のデザインって微妙にエロいのは定番なんだよな。そこに加えて鬼の面なんて付けてるから、エロさは半変するが、変態度は増している気がする。


「あははー。お面治ったんだー。やっとだねー」

「さき……じゃなくってフェンちゃん、可愛い。それお姉さんもほしい」

「ドロップだ。同じ物は無い。ざまーっ」


 ん?

 モグ氏の横に居る女の人、お姉さんもってもしかして?


「おい、あの人まさか」


 小声で隣に立つフェンリルに言うと、「従姉妹」と短く答えた。

 やっぱり。

 

「宿無しだけの集合住宅なんだ。ブルジョアが他所に行け」

「おいおい、こっちだって宿無し同然だぞ。二部屋確保できたけどなー、二〇〇人以上いるんだぜうちのメンバー。全員入れると思うか?」


 フェンリルの嫌味にげんなりした顔で答えるカインさんは、なんとなく眠そうに見える。


「僕たちねー、今徹夜で狩りしてたんだー」

「うわっ、マジですか?」

「うんー。だってねー、テントで野宿しようとしたらモンスターが五月蝿いし、蟲が入ってくるしで……もうね、もうね……」


 俺たちと一緒か……。


「宿で寝ないんですか? だってギルマスなんだし、使えるでしょ?」

「あ? お前馬鹿か? ギルマスとか幹部特権使って部屋独占したら、皆ギルド抜けていくだろ。第一女子もいるんだぞ。そいつら優先に使わせなきゃ、男としてダメだろ」


 ……。

 す、すげーかっこいい。寝不足でイラついてるっぽいけど、でもすげーことをサラっと言えるんだなー。

 俺も見習わないとな。

 そう思ってたら俺の肩を誰かが突く。さっきの二級建築士の人だ。


「あ、あんたって探求者と知り合い?」

「え、あ、あぁ。パーティー仲間の友達がカインさんやモグ氏なんだ」


 周辺がわざつく。

 なんなんだ……大手ギルドのギルマスと知り合いってだけで、こんなにざわつくものなのか?


「ねーねー、寝れるの? 寝れないの? 僕そこが知りたい」

「あー、寝れるとは思います。ただ――」

「レベル20の雑魚がわらわら来るんだ。でも攻撃始めたら即効で逃げる辺り、叶わない敵には向ってこないタイプかもしれない。こいつらが一発範囲撃った所で逃げていったが、その後は一度も来なかったんだ」


 フェンリルがさっさと話を進めていく。

 それを聞いていたカインさんが即答で、


「よし、協力する。任せろ、俺の睡眠を妨害するヤツはたとえレベル1でも全力でぶっ潰す」


 なんて言うから、一気に他のプレイヤーも協力を申し出てくれた。


 まじ大手ギルド、はんぱねー。

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