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『Second Earth Synchronize Online』  作者: 夢・風魔
第2エリア『予兆』
25/95

2-3:依頼

『素材は二つのパターンから選ぶ事になってる。レアレシピと同じだな。一つは全素材を集めるパターン。もう一つは下位ランクの伝説武器を素材にして、伝説級素材の数を減らすっていうパターン』


 武器がそのまま、素材?

 おっとこれは、俺の伝説武器『鏡彗のライトソード』が火を噴く番か?


 フィンの説明で面々が項垂れ頭を抱えた。素材一覧も発表されたけど、まったく聞いた事の無い素材ばかりだ。全部黄色文字だったから伝説級の素材なんだとか。

 そういえばこの前のレア祭りで拾った伝説素材って、なんだっけか? 全部カゲロウに預けてあるから、名前なんて覚えてないな。


『紅耀石十五個か……二個しか持ってないな。もう一つの黒翼の羽は四枚あるが、必要数が十枚か。なかなか厳しいな』

『武器を素材にすれば、その二つがそれぞれ一個ずつで済むんだけどな……』


 カインさんとフィンが頭を抱え込む中、ミケはずいっと短剣を突き出す。

 まさかそれって、俺と同時に出した伝説の短剣?


『ミケちゃん……まさかそれって』

『伝説ニャ!』


 噴出す面々。そういや知らなかったんだっけか。


『いや、あの、ミケちゃん……。まだ説明しきってないんだけど、武器を素材にする場合、成功率が半減するんだよ。まぁ成功すると鬼武器になる可能性があるけどさ』

『鬼武器? どういう意味だよフィン』


 興味あるぞ。更に強化されるってことなのか?


『あー、伝説武器って能力が二つついてる……んだよな?』


 俺とミケが頷く。他にもカインさんとモグモグ氏が頷いている辺り、持ってるんだな。


『でー、伝説武器を素材にした場合、その能力が三つに増えるんだ』


 ざわ。まさにそんな感じ。


『ただ、製造に成功率があって、更に成功しても武器能力の継承にも成功率があって。ここで失敗すると能力の引継ぎは無しで、全素材集めたのと同じ物になる』

『三つ付くってのは、選べるのか?』


 カインさんの質問に首を振るフィン。ランダムってか。

 けど伝説装備の能力はかなり高性能だと思うし、ランダムでも三つ付くと確かに鬼性能だよな。


『だからミケちゃん、失敗のリスクが高いんだし――』

『どうせもうすぐレベル30ニャ。そしたらこの武器もお古になってしまうの。だから、やって!』


 な、なんて漢なんだ、ミケって。

 よし、こうなったら俺も――


『フィン、俺のもやってくれ!』

『お、お前等……俺を禿げさせる気かぁーっ!』


 俺とミケはニヤっと笑って見せた。






 結果。

 俺とミケの武器は伝説級のレベル25武器になった。


「やったぁ〜♪ 能力三つ付いたニャー」

「……二つ……」

「すまん、マジですまんソーマ」

「いやいや、25にバージョンアップしたし、これも能力凄い良いぜ。一定時間攻撃力二倍とか、鬼性能だろ」


 そう言うと噴出す人がちらほら。


「え、私の短剣にそれ無い! それ欲しいかったニャー」

「二倍って、どのくらいの確率で発生するんだよ。何秒だ? 書いてない?」


 書いてない。ただ「通常攻撃時」ってのだけは書いてあった。もう一つの能力は片手剣スキルのCT半減。こちらは常時発生するタイプらしい。


「うーん。微妙だなー」

「え? なんでですかカインさん!?」

「だってほら、戦士系って攻撃速度はそんなに速くないだろ。まぁお前は片手剣だから、そこそこはあるだろうけど」


 た、確かにミケやカゲロウに比べれば遅い。けどフィンよりは確実に早いぞ。


「通常攻撃時ってことは、スキル使わないでちまちまやってなきゃ発動しないって事だ。CTにしたって、物理職のスキルCTは比較的短い方だぜ? 連続で打てるようになっても、SP持たないだろ」

「……あ……」


 俺は膝を付いて愕然とした。

 伝説武器なのに、俺にとっては微妙な構成……。


「もしかして、能力って武器毎に固定じゃなくって、何種類か用意されてるものから適当にランダムで付くんですかねー?」

「カゲロウの言うとおりだよー。僕もねー、レア武器何本か作ったけど、同じ片手斧でも違う能力ついちゃったからー」


 なら、まだ希望はあるのか。これを素材に次のランクに製造して貰えば、別の能力が付くかも!


「フィン、これをレベル30の武器にしてくれ!」

「ちょ、君。まだレベル28だろ。30にしてからにしなさいっ」


 っは!

 そうだった……フェンリルに言われるまですっかり忘れていたぜ。そうと決まれば――


「今すぐレベル上げにっ!」

「ニャ、私もー!」

「俺も俺も、製造飽きた!」

「同じく飽きましたー。レベル上げに行きましょう」

「おうおう、いってらー。いろいろ世話になってるし、なんか合ったら相談乗るぞー」

「ありがとうございます、カインさん」


 そう言いながら、一つの事が気になって仕方が無い。まったく目線を合わせようとしないカインさんとフェンリルとの関係。

 いや、絶対まずいよな。

 溜息を付いて二人を見ていると、思わぬ人からの囁きが来た。


『from.モグモグ・モグリン:カインとフェンちゃんの事気にしてるでしょー』


 ギクっとして彼を見る。いつおのへらへら顔で見られていた。


『from.モグモグ・モグリン:お面付けるなーとか余計なお世話だーとかで喧嘩しちゃったんだよー』

『to.モグモグ・モグリン:あー、そうなんですかぁ。フェンリルって、男装する事に意固地になってるっぽいですしねー』

『from.モグモグ・モグリン:うんー。まぁそっちはまたいろいろな事情があってねー。フェンちゃん、ゲームで嫌な事された経験あって、あんまり人と深く関わろうとしないんだ』


 え、なんか急に深刻な話に?


『from.モグモグ・モグリン:固定した人と長いこと一緒に居るのって、すっごく久しぶりだと思うー。だから、仲良くしてやってね』


 まるでお父さんかお母さんみたいな事を……。

 嫌な事、か。俺は幸運な事に、出会った人が親切で、こうして仲間にも恵まれた。ある意味、フェンリルのお陰かもしれない。

 楽しんだ者勝ちと教えてくれた、彼女の言葉が脳裏に過ぎる。


『to.モグモグ・モグリン:もちろん、出来る事ならこのままずっと固定パーティーで行きたいぐらいですから』

『from.モグモグ・モグリン:うん。ありがとねー。たぶん振り回されると思うけど』


 それは、もう想像できすぎるほど理解してます……。






「そういや、フェンリルと公平パーティーって、今回初めてか」

「あー、そういえばそうだな。君らは祝福の玉使って高速レベリングしてたから、いつの間にか圏内に入ってたんだね」


【ルイビス】の町で準備を整え、俺たちはあまり遠くも無いエリアで狩りをする事に。というのも、あと2レベルで30になるから。

 30からは装備も変わるが、それ以上に新職業や武器があれこれ出てくる。俺たちの中じゃこれといって新武器に興味ある人は居ない。

 まぁ武器チェンジが目的かな。


 準備を整え門までやってくると、俺が門番に引き止められた。


「失礼。さきほどの冒険者ですね? 御者が目を覚ましまして、医師から見つけたら来てくれるようにと言付かっておりまして」

「あ、はい。解りました。行ってみます」


 皆を振り返って先に行っててくれと頼んだが、全員付いてくる事になった。


 医者の家に到着すると、そこには体を起こして医者と話す御者の姿があった。

 起き上がれるほどの元気はあるみたいで安心する。


「やぁ、来たかい。この人が君にお礼を言いたいそうでね。それと頼みもあるそうだ」

「頼み、ですか?」


 俺はベッドの横に移動して、御者のおじさんと目線を合わせるためにしゃがみ込んだ。よく見ると、まだ顔色のほうは良いとは言えない。

 おじさんは俺を見るなり手を伸ばしてくる。それを掴むが、向こうから伝わる手の力はあまり感じられない。やっぱり出血多量ってのが堪えてるんだろうな。


「助けてくれてありがとう。君のお陰で、今こうして生きていられるよ」

「あっ、いや、その――」


 当然の事をしたまでです。キリッ。

 ゲーム内でNPCを助けて感謝されたら、爽やかな笑顔でそう言う。プレイ前から考えていたセリフだ。

 RPGをやっている時、主人公は大抵無口というかセリフが無いのが多い。アニメちっくなゲームだとそうではないけど。

 だから無口系主人公のゲームをやっている時は、俺が代わりに脳内で返事をしていた。それを今実行するべきだったんだ。

 なのに出来ない。

 なんせ目の前のおじさんが……NPCには見えないからだ。


 表情は細かく変わる。

 笑った顔、怒った顔、困った顔、普通の顔。こんな風にパターン化されただけの表情じゃない。

 実際に存在する、どこかのおじさん。そんな風に思ってしまうから、傷つき、辛そうな人の前で爽やかに笑う事なんて出来なかった。

 ゲームだというのは解っているのに、ゲームじゃないかもしれないと思う自分が居る。


「助けて貰っておいて図々しいのは承知しているんだが、どうか村を――ソドスを助けてくれないか」

「村……襲われたんですか? モンスターにっ」


 俺の問いにおじさんが頷く。

 その顔にノイズが走った。いや、視界全体にだ。

 また不具合なのか? 緊急メンテナンスが来る、のか? そう思った瞬間、ノイズは消えてしまった。


「今朝方、山から降りて来た魔物の群に、村は一瞬にして……けれどまだ生存者がいるはずなんですっ。妻と娘が村長の家に避難したはずなんです」

「周辺の村は、村長宅が万が一の避難所になっているんだ。深い地下室を作っていてね。災害時なんかの避難所として機能しているんだけど、今回も避難先としては役目を果たしているはずだ」


 医者が言葉を添えて教えてくれる。おじさんの方は興奮してしまって、顔色がますます悪くなってしまった。

 安心させる為でもあるけど、俺は自然と言葉が出る。


「心配しないでください。必ず助け出しますから」


 ――と。

 そんな俺を見ておじさんが涙を流して感謝した。


「本当に、本当にですか……。あぁ、やはり貴方は加護ある国の方なのですね」

「加護ある? どういう事――いや、今はそれところじゃないか」


 考えるより先にやるべき事がある。

 振り返って皆を見た。きっと彼らなら付いてきてくれるはず。


「わーかったよ。このまま行かないなんて言ったら男がすたるだろ」

「襲撃イベントかニャー。突然ニャねー」

「ソドスって、歩いていくと結構距離ありますね。間に合いますか?」

「心配するな。転送魔法持ってる。あの村の周辺は薬草の採取場所が多くてね。急ぐならこのまま行くぞ? どうせ狩りの準備はできてるんだ」

「解った。頼むフェンリル」


 フェンリルが魔法の詠唱に入った。転送魔法ではなくパーティー支援魔法だ。


「出たら行き成り戦闘の可能性もあるから、先にバフっとく」


 彼女がいくつもの魔法を使用する間に、俺たちは武器を取り出し、行き成りの戦闘に備えた。

 全てのバフが揃うと、フェンリルはいつもの帰還魔法とは違う、蒼く光る魔法陣を詠唱によって生み出す。

 医者の家の床に出現した魔法陣を、医者もおじさんも驚きの声を上げて見つめた。


「行ってきます。出来れば他のプレ――冒険者にもこの事を伝えてください」


 それだけ言うと、俺は蒼い魔法陣の上に真っ先に飛び乗った。

夜、もう1話更新します。


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