上世界での出会い
この世界は、世界規模の大戦争で、文明が崩壊した。
地上には草木が生えることはありえないとされていたが、海は枯れることはなかった。
一部の人間は海の中で生活する術を身に着けた。
そうして何年も生活していく内に、地上と海の二つで生活できる両生人へと独自に進化を遂げた。
それが、あの海から来た男だ。やつは同じ地球で生まれた同じ人間だが、別の進化を遂げた。
地上の生き残りは、地下で細々と生活していたのに対して、この惑星の七割を占める海で悠々と生活していたのだろう。
あの男に地上世界の真実を話すわけにはいかない。
「村長!」
「お、おお。リーニャか。どうかしたのか?」
「エリアスが地上のことをさ!」
僕は小さく村長に会釈する。村長は不機嫌そうな顔をしている。
「お前、海の人間だろう。それならこの子のことを知っておるか?」
いきなりこの子と言われても、周りには誰もいない。
「……誰ですか?」
「着いてこい。リーニャはここで待ってろ」
村長の後ろを着いて行く。会話などもちろんない。奥の部屋に連行された僕は目を疑った。
「ウロ子……!」
そこにいたのは、紛れもなく僕の幼なじみの佐奏ウロ子がいた。
「……知り合いか?」
「知り合いも何も、僕の近所にいた幼なじみです! おい! しっかりしろよ!」
僕はウロ子の肩を揺らすが、目を覚まさない。
「安心しろ。死んでるわけじゃない。長い間、あの海底火山の噴火の力に流されていただけだ」
よく聞いているとウロ子はスヤスヤ寝息を立てている。気を使ったのか、村長はいなくなった。
僕はただひたすら、ウロ子を見つめていた。
しばらく見ていると、背後からリーニャの声がする。
「おお、エリアスの友達? 可愛いねえ~。もしかしてそう言う関係?」
ニヤニヤしながら僕たちを見ていたが、僕は彼女の声が聞こえていなかった。
僕はウロ子が目を覚ますまでしばらく横にいたが、その日は目を覚ますことはなかった。
「この子が目を覚ましたら、お前に一番最初に教えてやる。今日はもう帰れ」
「……はい」
村長の言葉を聞き、僕はリーニャのいる場所へと向かった。
気分が晴れない。折角、同じ海の世界の仲間を見つけたと思ったのにこのありさまだ。
「大丈夫だよ。きっと彼女は目を覚ますよ。安心しな」
「……何でそう言い切れるんだ。目を覚まさなかったら、ただのぬか喜びになってしまうだろ! 期待させるだけだなんて、やめてくれよ!」
自暴自棄になっている僕は彼女に八つ当たりをしてしまう。気がついたときには、リーニャの目が点になっていた。
「ご、ごめん。ちょっと、頭を冷やしてくるよ……」
僕はリーニャの言葉も聞かず、村長の家から出て、海へと向かった。
一ヶ月ぶりの投稿になります。
他作品はかなりの不定期連載になっていますが、ちゃんと構想を練っているので、更新頻度はかなり低いですが投稿はしていきます。