上世界の紹介
目を開けると、リーニャが僕を覗いていた。
「おはよ、エリアス」
「わっ!」
驚きのあまり、僕は網の上から転げ落ちる。すぐにリーニャは心配して僕に手を差し伸べてくるが、すぐに笑い始める。
「あははは! エリアスは面白いね! 寝顔も可愛かったよ」
寝顔をあまり人に見られたくない僕は顔が熱くなるのを感じた。
リーニャは僕が眠っている間にこの島で捕れた植物を使って料理をしていたようだ。見たこともない色の植物を焼いたり炒めたり蒸したりしたものが並んでいる。
「さすがに魚はまずいと思って、今回はこの島で捕れた植物だけで作ってみたんだ!」
僕から見ると、見た目は悍ましいものだ。何故こんなにも不気味な緑色に近い色のものばかりなのだろうか。
「エリアスから見ると見た目は悪いかもしれないけど、食べてみてよ! 美味しいから!」
「う、うん……」
言われるがままに一口食べてみると、味は悪くはなかった。
初めて食べたはずなのに、どこか懐かしいような味がする。
「……美味しい」
「そうでしょ! もっと食べてよ!」
その後、リーニャはたくさん食事を提供してきたが、さすがに食べきれなくなった。
食べ終わった後、リーニャと一緒にこの島のことを知ることになった。
「今日はこの島のことを知ってもらおうと思ってね! それじゃ行こうか!」
返事も聞かずに僕の前をずんずんと歩いて行く。
いつもリーニャが木の実を収穫する場所、魚がよく捕れる場所、友達と遊ぶ場所などを紹介してくれた。
一番最後に、この島にそびえ立つ山を登ることになった。
「山登り、大丈夫?」
「大丈夫決まっているじゃないか」
言った直後に斜面を滑り落ちるように転ぶ。
「……大丈夫じゃないかも」
「あははは、そうだよね。ま、山頂はまた今度にしようか。でも、少しだけ頑張って登ってみない? 君にどうしても見せてあげたい光景があるんだ」
また僕の返事を聞かずに緩やかな斜面をズンズンと登っていく。
何度も転びそうになりながらも、リーニャの後ろを着いていくと、彼女は急に立ち止まった。
「頑張って、ここまでくれば良いものが見られるから!」
必死に僕を呼んでいるが、僕と彼女の距離は五十メートルほど離れている。
僕も懸命に上り、ついにリーニャの元へたどり着く。
「ほら、海を見て」
彼女の言う通り、海に背を向けていた僕は、海の方を向くと、橙色に輝く夕日が海に沈もうとしていた。まるで巨大な火球を海が鎮火させようとしているようにも見えた。
「綺麗だ」
「そうでしょ! 良い天気の日は見るようにしているんだ!」
ざっと海を見まわしてみると、海の中から煙が出ている部分がある。あそこが僕のいた場所なのだろうか。
「あの煙の出ている部分は?」
「海底火山が噴火しているんだ。珍しいことでもないよ。さ、日が沈む前にもう戻ろっか」
彼女は周りを見渡し、数本ある木から生えている葉っぱを引き千切り、僕にも渡してくる。
「何これ」
「ま、見てて」
リーニャはそう言うと、葉っぱを地面におろし、生え目を持って甲高い声を上げて滑り降りて行った。
見ていることしか出来なかった。何故あんなに素早く降りれるのだ……? 下は地面だ。葉もボロボロになるはずだ。それなのに……。
葉を触ってみて分かった。この葉は、リーニャや村長の家にあった葉と素材が同じだ。硬く、裏面はやけにヌルヌルとしている。これのおかげで地面を円滑に滑られるのかもしれない。
意を決して僕も滑ってみた。上手くバランスが取れなかったが、無事にリーニャの元へたどり着いた。
「へへへ、どうだった? 楽しかったでしょ!」
「……正直、すごく怖かった」
「そうだろうね、今も汗がすごいよ」
指摘されて気付いたが、汗も涙も出ている。
「さ、帰ろ。今日はさっき教えた場所で捕れた魚を使った料理にしようと思っているんだ!」
リーニャが一人で話しているうちに、自宅へと到着した。
つづく
一ヶ月ぶりの投稿になりました。
次回あたりで上世界の真相に迫ろうと思います。