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姉と弟  作者: 深江 碧
八章 長男と次男の、はた迷惑な兄弟喧嘩
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長男と次男の、はた迷惑な兄弟喧嘩6

 姉と別れた弟は、一人で通りを歩いていた。

 最初はゆっくりとだったが、徐々に早足になる。

 道の両側に雪が掻き分けられた通りを、ついには走り出してしまう。

 背後から着いてくる足音は五つ。

 それらがすぐ後ろから着いてくる。

 ――さっきより多くなったな。

 弟は走りながらぼんやりとそんなことを考える。

 人通りのある通りを走り抜け、路地に入る角を曲がる。

 少し行った建物の壁際に身をひそめる。

 五人の黒服の男たちが前を通りかかるのを待つ。

 彼らが弟が潜んでいる通りの前を通りかかるのを待って、飛び出す。

 近くにいた男に襲いかかる。

 男が弟に気付いた時には、弟の拳が男の腹にめり込んでいた。

「ぐっ」

 男は小さくうめいて、地面に崩れ落ちる。

 弟は驚いて立ち止まっている他の四人の位置を確認する。

 一瞬で距離を詰め、二人目、三人目も次々に気を失わせる。

 拳銃を向けた四人目の腕をひねり上げ、逃げようとした五人目に背中からぶつける。

 二人はもつれ合って地面に倒れる。

 地面に倒れた二人に弟は拳銃を向ける。

「お前たちの目的は、何だ」

 弟は男たちに銃を向けながら、冷たく尋ねる。

「お前たちは、誰に雇われた? 叔父さんか? それとも、その息子たちか?」

 弟はこれが叔父一人の仕業とはとても思えなかった。

 かつて連絡が途切れる前にワタリガラスから聞いた情報だと、叔父の四人息子も独自に動いていると聞いている。

 逆に叔父を支えているのはその四人息子で、叔父自身はそれほど優秀な経営者ではないことも。

「お前たちの主人は誰だ? 命が惜しいなら答えた方が身のためだぞ」

 弟は拳銃の引き金に指を置く。

 倒れている男たちの体の折り重なっている部分に銃口を向ける。

「だ、誰が教えるか」

 男の一人がうめく。

 弟は男たちから少し離れた石畳に狙いを定め発砲する。

 路地に乾いた銃声が響く。

 石が砕け、砂塵が舞い上がる。

「もう一度聞く。お前たちの雇い主は誰だ」

 弟は低い声で尋ねる。

 鋭い眼差しで男たちに銃口を向ける。

「わ、わかった。教えるから、命だけは助けてくれ」

 別の男が懇願する。

「だ、だから、その銃口を向けるのだけは勘弁してくれ」

 男の訴えに、弟は拳銃を下す。

 しかし男たちが怪しい動きをしたらすぐに発砲できるように身構えておく。

 弟は男の話した雇い主の名前を聞いて険しい顔になった。

 予想はしていたものの、組織の手助けもなしに弟が対峙するには厄介な相手だった。

 弟は石畳の上に倒れている男たちをそのままにして、建物の壁をかけ登る。

 雪の積もった建物の屋根の上を、足を滑らせないように注意して駆ける。

 足元に細心の注意を払いながら、屋根の上を飛び越えながら約束の市場へと向かった。

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