姉に事情を話し、二人で逃げる5
次男は革張りの椅子にゆったりと座っていた。
目を閉じ、天井を見上げ、足を組んでいる。
しばらくして部屋の扉をノックする音がする。
「開いてるよ」
次男は目を閉じたまま答える。
「失礼いたします」
扉を開けて一礼し、大きな箱を持った黒服の男が入ってくる。
男は次男のそばで立ち止まり、箱を開ける。
「頼まれた品をお持ちいたしました」
「うん」
次男は目を開け、椅子から起き上がる。
黒服の男が持ってきた箱の中身を見下す。
それを手に取る。
「結構重いね。これは撃った時の反動が大きそうだね。銃の扱いに慣れていない者には辛いんじゃないかな?」
黒服の男はうやうやしく答える。
「反動を最小限に抑えるように設計されています。何と言っても、女子供にも撃てる拳銃だと銘打っている品物ですから」
「これは可憐な女性には似合わない品物だよ? 特に彼女には、とても扱えないと思うのだけれど」
次男は拳銃を握りしめ、笑う。
それを新調したホルスターにしまう。
拳銃ごとホルスターを机の上に置き、すっくと立ち上がる。
「さてと、可憐なお姫様を兄貴の手から助けるために、準備をしないとね」
手をひらひらと振り、隣の部屋へと向かう。
「やっぱりここは少し悪いイメージで、黒のスーツがいいかな? 久しぶりに彼女に会うんだから、ここは男らしく頼りがいがあるところを見せなきゃね」
隣の部屋は次男の服が置いてある部屋だった。
部屋一つ分がすべてクローゼットとなっている。
次男はうきうきとした軽い足取りで向かう。
「そうすれば、きっと彼女もおれに惚れ直すだろう。そのためにも、ばっちり服を決めて、彼女と会う準備を万端にしておかないとね」
そう言って、部屋へ入っていく。
拳銃の箱を持つ部下は、ぽつりとつぶやく。
「あの方は、今は目が見えないのですから、服装も何も気にされないような気がいたしますが」
部下は呆れつつ、部屋の中で小さな溜息を吐いた。