それぞれの事情15
額に手を当てる。
何も今言わなくてもいい。
いずれ言うべき時が来る。
弟は目を細め、寂しげに笑う。
姉は少なくとも前を見て、進もうとしている。
ならば自分も前を見なくてはならない。
自分も変わらなくてはならない。
遅かれ早かれ、いつかは別れる時が来る。
別れる日のために、自分たちは準備をしなくてはならない。
それにこの先があるかわからない状況は、いまの姉も同じだ。
生きるか死ぬかは自分たちの行動にかかっている。
二人で生き残るのが最善だが、もしどちらかが生き残るとして、その時はどちらかが片方を見捨てなくてはならない。
果たしてその時に、一方を見捨てることが出来るのか。
それは弟自身にも、わからないことだった。
姉は興奮した様子で語る。
「ねえ、――。二人で叔父さんから逃げ切って、きっと夢を叶えましょうね」
弟は目を細め、静かに微笑む。
「うん」
出来ることならば、二人で生き残る道を選びたい。
弟は姉の言葉に、気持ちが解きほぐされるのを感じた。
ポストカードに書かれた約束の場所に、
①行く→→→バッドエンド2へ
②姉に事情を話し、二人で逃げる→→→姉と弟 七章へ
③行かない→→→その日の午後、アパートごと爆破されます。