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姉と弟  作者: 深江 碧
六章 それぞれの事情
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それぞれの事情12

 勢いよく扉を開け、部屋の外に走り出る。

 扉の外には弟が立っていた。

 泣いている彼女を見て、血相を変える。

「姉さん、どうしたの? あいつに変なことをされたのか? だから言っただろう」

 彼女は泣きながら、何も答えずに弟の隣をすり抜ける。

「あ、姉さん。待ってよ」

 弟はわずかに次男を顧みたが、何も言わなかった。

 慌てて彼女の後を追う。

 次男は彼女にぶたれた頬をさすり、部屋の中で溜息を吐いた。

 次男は女性に優しいと評判の男だった。

 彼にとっては女性にぶたれたことも初めてなら、叱責されたことも初めてだった。

 これをきっかけに次男は彼女に興味を持った。

 以来、次男は夜会で彼女とたびたび顔を合わせることになる。

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