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それぞれの事情12
勢いよく扉を開け、部屋の外に走り出る。
扉の外には弟が立っていた。
泣いている彼女を見て、血相を変える。
「姉さん、どうしたの? あいつに変なことをされたのか? だから言っただろう」
彼女は泣きながら、何も答えずに弟の隣をすり抜ける。
「あ、姉さん。待ってよ」
弟はわずかに次男を顧みたが、何も言わなかった。
慌てて彼女の後を追う。
次男は彼女にぶたれた頬をさすり、部屋の中で溜息を吐いた。
次男は女性に優しいと評判の男だった。
彼にとっては女性にぶたれたことも初めてなら、叱責されたことも初めてだった。
これをきっかけに次男は彼女に興味を持った。
以来、次男は夜会で彼女とたびたび顔を合わせることになる。