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姉と弟  作者: 深江 碧
十四章 悪夢
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悪夢19

 二日酔いになった弟は痛む頭を押さえ、屋敷の廊下を歩いていた。

(昨夜、少し飲み過ぎたか)

 昨夜はワタリガラスが持ってきた強い酒で早々に酔いつぶれ、弟もついつい飲み過ぎてしまった。

 朝起きたらワタリガラスの姿は無く、弟は昨夜の酒盛りの片付けをする羽目になった。

 起きた直後は気持ち悪かったが、今では頭痛以外はだいぶましになっている。

 廊下を歩いていると、数日後に控えた叔父の誕生パーティーの準備に忙しい使用人たちが足早にすれ違っていく。

 かく言う弟もパーティーの警備に駆り出されている。今更ながらそれを思い出す。

(そう言えば、もうすぐか)

 叔父の誕生パーティーには財閥の親族だけでなく、重鎮たちも呼ばれている。その中にはもちろん叔父の四人の息子たち、次男も出席する予定だ。

(姉さんと、会えるかな)

 命を狙われている姉がそういった表立った場に出席するとは考えにくかったが、次男が出席するならば姉の安否を尋ねることが出来る。次男に尋ねて姉の現在の状況を知ることが出来る。

(姉さん)

 弟は胸元に手を置く。いつも懐に入れている姉からもらったハンカチに手をやる。

(僕は姉さんが生きていてくれれば、それでいいんだ)

 たとえ何があっても、姉と家族であった事実は変わらない。一緒に暮らした事実は変わらない。

 どんな辛いことがあっても、弟はその思いを胸に生きていける。

 家族としての絆が今の弟を支えている。

 この先姉がどんな選択をしても、家族として弟として出来る限り協力していくつもりだ。

(それだけで、いいんだ。それ以上のことを望んではいけない)

 弟は昨夜の気持ちを胸の奥にしまい込む。胸元を押さえ、姉の姿を思い浮かべる。

(たとえ姉さんがどんな道を選んだとしても、僕はそれに従うだけだ)

 この先も自分のやるべきことは変わらない。そして立場も変わることは無いだろう。

 弟は窓の外に見える雪空に目をやる。

 鈍色の空から白い雪が舞っていた。

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