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姉と弟  作者: 深江 碧
十二章 過去そして現在
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過去そして現在31

 雪の中から助け出された姉は、ベッドの中でまどろんでいた。

 部屋の中では勢いよく暖炉が焚かれ、その熱と温かさがベッドにまで届くほどだ。

 姉は寒さと疲労からベッドの中でまどろんでいたが、寝返りを打って枕の上を長い黒髪が流れるわずかな音で目が覚めた。

「ここは」

 姉の口から微かな息が漏れる。

 すると人の気配が近づき、声を掛けられる。

「オリガ様、お目覚めですか?」

 固い男性の声。

 姉はベッドから身を起こしながら尋ねる。

「ここは、どこでしょう。わたしはどうしてこんな場所に?」

 体を起こそうとすると、体のあちこちが痛む。

 特に足首に鈍い痛みが走り、姉の顔に苦痛の表情が浮かぶ。

 上半身を起こしたまま痛みのために動けないでいる。

 男性の気遣うような声が聞こえる。

「オリガ様、無理をなさってはなりません。あなたは雪の降り積もった庭で発見されたのです。その時にあちこち怪我をされているようでした。どうかご無理をなされないで下さい」

「申し訳ございません」

 姉は痛みが治まるのを待って、声のした方に顔を向ける。

 物問いたげな視線に、声の主は穏やかな声で応じる。

「紹介が遅れました。わたくしはアレクセイ様の護衛を務めております、イーゴリと申します」

「イーゴリ様、ですか」

 姉はようやく相手の素性がわかり、表情を緩める。

 次男の部下であることに多少の安心感を覚える。

「イーゴリ様、わたしはどのくらい気を失っていたのでしょうか。今は何時頃でしょうか」

 姉は中年の部下に問い掛ける。

「どうかイーゴリと気安くお呼び下さい、オリガ様。オリガ様が庭の雪の中にいるのが発見されたのが夕方の六時頃。その後、お部屋にお運びして今は七時頃でしょうか」

 中年の部下の話すことを、姉は黙って聞いていた。

「では、イーゴリ、さん。アレクセイ兄さまはわたしがいなくなったことはご存知なのでしょうか。 庭で見つかったことも、もう知っておられるのですか?」

 中年の部下は姉の言葉に頷く。

「アレクセイ様はオリガ様がいなくなったことも、見つかったことも知っておられます。オリガ様は覚えておいでではないかもしれませんが、我々が保護した時に事の一部始終を話して下さいました。オリガ様は案内のメイドに地下室に閉じ込められ、壁の裂け目から庭に出たことを話しておられました」

 姉はベッドの上で上半身を起こしたまま、わずかにうつむく。

 両手を握りしめる。

「では、アレクセイ兄さまはすべてをご存知なのですね」

 姉は擦れた声でつぶやく。

 この屋敷の主人である次男に話がいっているのなら、これ以上自分が悩む必要は無い。

 次男の判断でこの屋敷の問題として処理してくれるはずだ。

 姉はあのメイドの行動の理由がわからなかったが、次男であればその原因がわかるかもしれない。

 理由を突き止めることが出来るかもしれない。

(でも、やっぱりわたしから直接兄さまに話しをした方がいいのかしら? それにまだ婚約を受け入れるかどうかのお返事もしていない訳だし、結論が出てからお会いした方がいいのかしら)

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