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姉と弟  作者: 深江 碧
十二章 過去そして現在
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過去そして現在12

 あの女が屋敷に来た時から、私はあの女のことが嫌いだった。

 この屋敷の主人であるアレクセイ様の知り合いだか何だが知らないが、目も見えず、何の役にも立たない無駄飯ぐらいのくせに、アレクセイ様に気に入られているからと言って、態度が大きいのだ。

 私たち使用人に命令をして、自分はふんぞり返っている。

 自分をこの屋敷の女主人とでも思っているのだろうか。

 いつもめそめそと泣いて、同情を引くような態度を取っているあの女は、自分は悲劇のヒロインとでも思い込んでいるのだろうか。

 厚かましいことこの上ない。見てて吐き気がしてくる。

 アレクセイ様はあの女を憐れんで、気にかけているのだろうが、それもすべては計算済みなのだろう。

 少し美人だからって、気に入られているからって、何をやっても許されるとでも思っているのだろうか。

 私たち使用人をこき使って、彼にもわがままの言い放題で、女王様気取りのつもりなのだろうか。

 自分では何一つできない癖に、目が見えず何もできないくせに、自由に出歩けないくせに。

 それこそ図々しい。

 あんな女をそばに置いていては、アレクセイ様のためにならない。

 早く何とかしなければ、彼の身が破滅してしまう。

 彼はあの女の外見の美しさに夢中になっている。

 心の醜さが見えていない。

 私たちが忠告をしても、きっと彼の耳には届かない。

 あの女は嘘泣きでもして、ますます彼の同情を引こうとするだろう。

 そうなれば彼はますますあの女を可愛がるだろう。

 早く何とかしないと。

 彼はあの女を可哀想に思って、あの女の言うがままに、何の罪もない私たち使用人ばかりを責め立てるのだろう。

 彼にはあの女の本性が見えていない。

 いかにも善人の皮をかぶって被害者面しているあの女の醜い本性に、彼はまったく気付かないのだ。

 早く何とかしない。

 私が何とかしないと。

 みんなは頼りにならない。

 みんなあの女に騙されている。

 いい人だと信じ込んでいる。

 頼れるのは自分だけ。

 私が何とかしないといけない。

 アレクセイ様があの女から逃れる方法を早く考えないといけない。

 私だけが、あの女からアレクセイ様を助けてあげることが出来るのだから。

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