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姉と弟  作者: 深江 碧
十二章 過去そして現在
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過去そして現在6

 弟は人気のない屋敷の門の前で立ち尽くしていた。

 門の前の大通りは雪が避けてあったが、屋敷の門の前にはそのままになっていた。

 弟の立っている位置から見える範囲、門の中も雪が降って積もったままになっている。

 灰色の空からは音も無く雪が降り続いている。

 屋敷の中には車のわだちの跡どころか、人の足跡さえ見えない。

 ここ数日、人の出入りした気配はまったくないようだ。

(この屋敷は引き払われたようだな。無理もない。目の見えない姉さんを連れていれば、あいつもいつも以上に慎重に行動せざるを得ない)

 もしも弟が同じ立場であっても、きっとそうするだろう。

 目の見えない姉の身を案じるならば、念には念を入れて行動するだろう。

 姉の見舞いのために買った香りのよい花束も毛糸玉も、すべて無駄になってしまった。

(姉さんが無事ならば、僕はそれでいい。それでいいんだ)

 弟はどこにいるかわからない姉のことを思う。

 降った雪がそのままになっている屋敷の門の前できびすを返す。

 道端に積もった雪を避けながら歩いていく。

 そうやって門の前から歩き出した時だった。

 不意に視界の端に人影の姿を捉えた。

 通りを歩く一般人にまじって、異様の気配のする男が視界の隅に映る。

 その男は黒い服を身にまとい、気配もなく門の前に佇んでいた。

(あの男は)

 弟はまとう気配からその男が一般人でないことを敏感に察知する。

 男はしばらくの間門の前に立っていたが、やがて弟とは反対の方向に歩き出す。

 弟は歩いていく男を視界の端に止め、距離を離して歩いていく。

 もしかしたらあの男なら姉と次男の行方を知っているかもしれない。

 弟は黒服の男の後を慎重に追いかけた。

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