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姉と弟  作者: 深江 碧
十章 あなたの本当の気持ちを教えて下さい
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あなたの本当の気持ちを教えて下さい3

 外からの物音を聞いて、姉はぼんやりと目を覚ました。

(今の音は?)

 姉はベッドの上で痛む頭を動かして、音の出所を探ろうとする。

 続いて聞こえてきた二発目の銃声に、姉は今度こそ聞き間違いでなかったことを悟る。

(今の音は、銃の発砲音?)

 姉は頭を持ち上げ、ベッドの上に起き上がろうとする。

 体は重く、思うように動かない。

 それでもベッドの上に這いつくばるようにして体を起こし、周囲の物音に耳を澄ませる。

 部屋の中からは燃え盛る暖炉の音が聞こえてくるばかりだ。

 他は何の音も聞こえない。

(何が起こっているの? 今の音はどこから聞こえてきたの?)

 目の見えない姉は不自由な体を動かし、ベッドから降りようとする。

「あっ」

 足を滑らせて、絨毯の上に転げ落ちる。

 体を床に打ち付ける。

「うっ」

 床に敷いてあった絨毯は厚く、床に落ちてもほとんど痛みは感じない。

 わずかに衝撃を受けただけだ。

 姉は熱のため上手く動かない体を動かし、這うようにして部屋の扉を目指す。

(いったい、何がどうなってるの? あの銃声はどうして? 誰かが撃たれたの? まさか、またわたしのせい?)

 姉は絨毯の上をじりじりと進んでいく。

 見えない両目に涙がにじむ。

(もう、わたしのせいで誰かが傷付くのは嫌なのに。わたしがここにいるせいで、誰かに迷惑がかかるのは嫌なのに)

 寝間着姿で必死に絨毯の上を這って進む。

 体が重く、手足がうまく動かない。

 両目から涙がこぼれる。

(わたしを助けてくれたフェリックスさんは、わたしを彼に引き渡すと言っていたけれど、そうじゃなかったの? どうしてこのお屋敷で銃の音が聞こえて来るの? この屋敷で今何が起こっているの?)

 四つん這いになって進んでいると、指先に何かが当たる。

 壁だと思われるそこに添って、姉は手探りで扉を探す。

 ようやく扉らしきものを見つけ、立ち上がり取っ手を手でひねる。

 扉が開き、姉は扉が開くのと一緒に外に倒れ込む。

 膝を付き、かろうじて転ぶのだけはまぬがれる。

 廊下にも厚い絨毯が敷かれている。

(どちらに進めばいいの?)

 姉は左右を見回す。

 目の見えない姉には廊下の景色はわからなかったが、物音を頼りに壁にもたれながら右側に向かって歩き出す。

 熱がまた上がってきたのだろうか。

 手足にうまく力が入らない。

(でも、わたしが行かないと。誰かに迷惑が掛かる前に、わたしが行かないといけない。これ以上、誰かが傷付く前に)

 姉はおぼつかない足取りで少しずつ前に進み、玄関へと向かった。

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